《VRゲームでもかしたくない。》第6章17幕 事<circumstances>

「こんなもんでどうだい?」

サツキがステイシーの顔に手を加え、ゲームと同じくらいの長さのウィッグを被せます。

「もう嫌だー」

「泣きごといってられないね。だってばれたくないんだろう?」

「そうだけどさー」

「皆様、あと數分で伊戸明琴音様との待ち合わせ場所に著きます」

思ったよりも現実ステイシーのキャラメイクに手間取った様で、もうすぐ著くくらいになってしまいました。

「さぁ、ステイシー。腹をくくるんだ」

サツキがそう言ってステイシーの方をポンポンと叩きます。

「やだー」

私達5人の中で最年ということもあり、その様子がし微笑ましく見えてきました。

「みんな、マオと合流したらキャラ名呼びは止めよう。リアルばれを防ぐなら、本名呼びが一番いいとおもう。それかあだ名呼び」

エルマがそう言ったので、私達は呼び名を決めることにします。

「あたしのことは瑠麻でいいよ」

「私も智恵理で大丈夫」

「些か恥ずかしいけどワタシも月見、鷺宮どちらでも構わないよ」

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「僕はー……。乙葉でー」

全員の呼び方を改めて確認していると、永谷の運転する車が減速を始めます。

「到著いたしました。本日、懇親會が終わる頃、お迎えに上がります」

そう言った永谷にエルマが「よろしく」と返すと、永谷が扉を開け、見送ってくれました。

「あっ! あれマオじゃない?」

降りてすぐ、エルマがマオらしき人を指さします。

するとこちらに気付いたようで、首を斜めに傾げ、その後二コリと笑いました。

エルマがたたたっと速足になり、マオの元へと行きます。

「マオ?」

「初めまして、ね。伊戸明琴音よ。マオでも、あるわ」

「本當に向こうとほとんど変わらないんだね」

私もし速度をあげ、追いついたのでそう聲を掛けます。

「そう、ね。初めまして、というのも、変ね。チェリー」

おっふぁ! 現実マオのチェリー呼びはダメージ大きいですね!

「懇親會に行く前に軽めの自己紹介といこう。ワタシはサツキだ。こちらでは鷺宮月見という」

「月見ちゃん、ね」

そうマオが言うと、し顔を赤らめて、サツキが黙り込みます。

「あたしは遠藤瑠麻」

「瑠麻ちゃん」

「私は智恵理」

「智恵理ちゃん。なら……あなたが、ステイシー、なのね?」

そう言ってマオがステイシーの顔を覗き込もうとしますが、ステイシーはサツキのから出てきません。

「どう、したの? お腹、痛いの?」

そう言ってマオがさらに見ようとしますが、一向に顔をだしません。

しびれを切らしたサツキがステイシーの肩を摑み、ぐるんと立ち位置をれ替えました。

「ちょ、ちょっとー」

「あら?」

目の前に現れたステイシーに対して疑問の聲をあげたマオがステイシーの頭へと手をばします。

そしてシュルっとステイシーのウィッグを外し、息を飲みました。

「真琴なのね」

そう一言、呟くマオは強く強く、ステイシーを抱きしめました。

「もうばれちゃったし、しかたないかー。実は僕たちは數年前に両親が離婚してねー。僕は父親にー。姉は母親に引き取られたー」

「すまない。思い出したくないことを思い出させてしまったな」

「気にしないでー。じゃぁ會場にいこうよー。すぐそこなんだから」

そう言って歩き出すステイシーの背中にマオが「おねぇちゃんって、呼んで、くれない、のね」とし寂しそうな聲で言葉を飛ばしていたのを私はしっかりと聞いていました。

懇親會の會場である[Multi Game Corporation]本社へと歩き始めます。

マオとの待ち合わせ場所から目の鼻の先というじですが、信號を渡らなければならないのでそこでマオにエルマが話しかけます。

「マオ、部では私達を本名で読んでね」

「わかった、わ。バレ対策、ね」

「そうそう」

そう話していると信號が変わったので私達は信號をわたります。

他にも[Multi Game Corporation]本社 に向かっているのか何人かのグループが見えました。

「あれもみんな懇親會の參加者なのかなー?」

ステイシーが[Multi Game Corporation]本社の前に並ぶ人を指さしながら言います。

「概ねそうだろう。社員などは別の口が用意してあるだろうしね」

サツキがそう返し、ポケットからICカードを取り出します。

「ICカードを読み込むみたいだ」

「月見さん視力いいね」

私がそう言うとサツキはすこし驚いた顔でこちらを見ます。

「驚いた。チェリーがさん付けでワタシのことを呼ぶとは」

「ゲームでは結構あってるけどリアルでは初対面だしね」

「それもそうだな。チェ……智恵理」

頬を人差し指で掻きながらサツキが言ってきました。

「こちら最後尾です。順番に通ししていますのでお並びの上お待ちください」

社員でしょうか。そう聲を張り上げ、看板を掲げています。

「さ、並ぶぞ」

そう言ったサツキが一番に並び、エルマ、ステイシー、私、マオの順で並びます。

「そう言えば琴音さん」

「なに? 智恵理ちゃん」

破壊力!

「そうして[Multi Game Corporation]の本社からあんなに近いところに住んでいたの?」

「當時、あのマンションが、出來たばっかりで、職場も、近かった、から、かしら」

「なるほどね」

私とマオがそう話していると、背後から聲がかかります。

「どこかで見た顔なんよ。たぶんゲームで」

「えっ?」

私がそう言ってマオの頭越しにその人を見ると私にも見覚えがありました。見覚えというと誤解があるかもしれませんね。雰囲気に覚えがありました。

「琴音さん。ちょっと場所変わってもらっていいかな?」

「ん? いい、わ」

そう言ってマオと場所を変わった私が彼に話しかけます。

そして他の人には聞こえない様に小聲で聞きます。

「人違いだったらごめんなさい。もしかして……」

「その通りやで。うちは柏木かしわぎ瑠琉るる、瑠琉って呼んでくれてええよ」

「私は智恵理」

「了解。智恵理。前にいるのはお仲間さんよな?」

「うん」

し事を説明したいんやけどいいやろか?」

「わかった」

そう言った柏木瑠琉こと、もこちねるはログイン出來なかった事を話し始めました。

「まずな、うちがログアウトした後や。うちに電子データのパックが屆いたんや。話にはきいとったんやけどそれがこれかー、いうて開けてびっくりや。何せ場所が遠いんやからな。んで連絡取ろうにもすぐ準備しーひんとうちからは間に合わない距離でな。チケットもとらなあかんし」

「家はどこに?」

「モナコ公國や」

「え?」

「うちこう見えてハーフなんやで。本名は柏木・アルシェラ・瑠琉や」

「えっ!」

「せやろ。日本人にしか見えんやろ? うちもそう思うわ。そんなことは置いておいて、それで急ぎやって來て、著いたのが今朝5時だったわけや。死ぬほど眠いわ」

「おつかれ……」

「おおきに。あー。関西弁は長く関西に住んどったからやね。一昨年までうち日本におったし」

「そうだったんだ」

「というわけですまんかった。心配かけたやろ」

「うん。心配だったけど、何事も無くて良かった」

「他のお仲間さんにも説明させてもろてもええか?」

「うん」

「恩にきるで」

そういってもこちねるは一人一人に事を説明するべく話に行きました。

to be continued...

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