《VRゲームでもかしたくない。》第6章31幕 決定<decision>

「ジュンヤを連れてきた」

私がそう言いながらリビングのドアを開けます。

「チェリーさん。丁度良かった。お久しぶりです」

リビングのドアを開けると纏花がソファに座り、紅茶を飲んでいました。

「纏花じゃねぇか」

私の後ろからひょこっと顔を出したジュンヤにし驚いた表を見せる纏花でしたが、私の裝備とエルマの裝備を見て合點が言ったようで「なるほど」と一言呟きました。

「ではもう一度お話いたします」

纏花がコホンと咳払いをし、一度ステイシー達にしたであろう話をし始めます。

「事の発端は『無法地帯 ヴァンディーガルム』の調査に失敗した、と認定されたことにあります」

「その辺は大方ハリリンから聞いてる」

私が言うと、纏花は頷き、話を進めます。

「そこで私達『虎の子』には反逆罪と諜報罪、つまりは裏切りとみなされたわけです」

「なんで?」

さすがにこれは理不盡が過ぎる容ですね。

「正確に言うと、『本來得られるはずの報を匿し、他國へ加擔し、國を陥れた』だそうです」

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しばし、みんなが無言になり、纏花が紅茶を啜ります。

「そして私達には國外退去命令と指名手配が付きました。まりりすさんとレーナンさんはレベルが低かったこともあり、現在デスペナルティー中です」

ギリッ。

私の奧歯が不吉な音を立てます。

その音に気付いたのか、エルマが私の肘をり、聲に出さず「大丈夫?」と聞いてきます。

それで一応の落ち著きを取り戻したので、私は纏花の話の続きを聞きます。

「チェリーさんの時ど同様、あることないことを言われ、全員が指名手配です。そしてその私達をれてくれたのが……」

「『ブラルタ』ってわけか」

「はい。そのせいで『海上都市 ブラルタ』と完全に國が斷絶され、あわや戦爭という事態になりました」

なりました? 過去形で言うということは……。

「『叡智會』の副長が渉の場へと出向き、事を説明し戦爭は回避されました。しかし、ハリリンが得た報は裡に戦爭の準備をしている、ということでした」

でしょうね。ハリリンのあの言い方だと戦爭がこれから起こる、と言ってもおかしくないでした。

「おそらく戦爭とはいっても総力戦にはならない、とは思います。総力戦では『花の都 ヴァンヘイデン』に勝ち目がありません」

「というと?」

「傭兵を雇っての奇襲、および、侵略です」

やりかねない。

私の心の中ではその一言が浮かんできます。

「恐らくはジュンヤと同等レベルのプレイヤーをやとってくるでしょう。中にはNPCの殺戮を何とも思っていない人間が多くいますから」

再び無言の時間が流れます。

その無言の時間を破ったのは纏花ではなく、ジュンヤでした。

「つまり俺たちは『ブラルタ』の新勢力として、攻め込んでくるであろう『ヴァンヘイデン』の戦力から『ブラルタ』を守らなきゃいけないってことだ」

「その通りです」

ジュンヤが言った言葉を全面的に肯定した纏花が立ち上がります。

「詳しい話はもこちねるさんが副長さんに聞けば分かりますよ」

「よくしってるね」

「ハリリンは諜報に関して言えば、優秀ですから」

そう言い殘し、纏花がリビングを出て行きます。

その見送りにサツキが行きました。

「ここからは、個人的な話だ」

ジュンヤが真面目な聲を出したので私もし気を引き締めます。

「恐らく『ヴァンヘイデン』と戦闘になったら間違いなく『ブラルタ』が勝つ。そこで俺はソレに乗じて國王を暗殺することにした」

「さすがにそれは……」

「あぁ。チェリーならそう言うだろうな。でもこれは國の長が変わらない限り治らない。だから俺は【國王殺し】を背負う」

ジュンヤは決意を固めた聲で私達に宣言します。

「それを私に言うってことは」

「邪魔をするな。ということだ」

「それでも國のトップだよ。簡単に殺していいわけない。それに、それは『自らの利益を優先し、殺戮を行う』奴らと変わらないんじゃない?」

「あぁ。だからこの件が片付いたら俺は『虎の子』を解散する」

「解散しても罪は消えない」

そう言ったのはステイシーでした。

「お前らも俺を止めるか?」

私達を見渡したジュンヤがそう聞きます。

それに対して私達は、無言で頷きます。

「そうか。もしそうなったら、お前らと戦う可能もあるんだな。そうならない様に願うか」

天井を見上げ、本當に悩んだ末に出した結論が正しいかを味しているようにも見えました。

「だめだ。俺には結論が出せねぇ」

そう言ってぼりぼりと頭を掻きます。

「悪りぃな。変な話をしちまって。忘れてくれ」

そう言ってジュンヤがリビングを出て行こうとしました。

「ジュンヤ」

私はジュンヤを呼び止めます。

「なんだ?」

「他人に結論を委ねないで。自分で決めて」

私がそう伝えると、ふっ、とわらったジュンヤが扉を開け出て行きました。

「≪聴覚強化≫、≪聞き耳≫」

私はスキルを発し、合流したであろう纏花とジュンヤの會話を聞きます。

『言ったじゃないですか。チェリーさんに決めさせるのは無理ですと』

『あいつも恨みがあんだろ。だからよ』

それを聞いた私の顔から笑みがこぼれます。

恨みがあるのは、その通りなんだよ。

でも、それをこの力でねじ伏せるのは、やはり間違っている。

私はそう思っているのです。

こぼれた笑みは、自らを顧みて出た嘲笑でした。

「まだ早いけど今日は落ちようかな。明日にはもこちねるもログインしてくるだろうし」

私は一言皆に告げ、自室へと帰りました。

現実世界に戻ってきた私は、専用端末を剝ぎ取り、ベッドの隅に投げます。

そして心の中の毒を吐き出します。

「正直、私だって、殺したいほど憎んでるよ。でもそれで殺したら、もう戻れないよ」

普通にゲームすることができなくなるという意味だけではなく、それをしてしまったら現実の自分がおかしくなるような気がしてきて、私はしの吐き気を催します。

キッチンまで著た私は冷蔵庫から牛を取り出し、一気にあおると、先ほど吐いた毒と気持ち悪さが流れていくような気がしてし落ち著きます。

まだ先の話だし、とあまりよくありませんが先延ばしにする形で心に折り合いを付けます。

沈んだ気分はなかなか戻らないので、晝寢という現実逃避にも近い行を釣ることにした私は、もう一度ベッドにり、目を閉じました。

to be continued...

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