《終わった世界の復讐者 ―僕はゾンビをってクラスメイト達に復讐する―》第50話 夜の探索
その夜。
トバリたちは、大學病院の三階に足を運んでいた。
懐中電燈と金屬バットを手に、月明かりに照らされた薄暗い廊下を進んでいく。
三田が前、ユリが真ん中で、トバリが一番後ろだ。
電気はまだ通っているが、強いはゾンビを引き寄せてしまう。
避難民たちの安全も考慮した結果、廊下の電気は付けない方針で進むことにしている。
「しっかし、不気味だな……」
無數の気配が、病院の中を彷徨うろついているのがわかる。
それら全てが普通のゾンビであることを祈りつつ、トバリは辺りを注意深く見回す。
まだ夏だというのに、廊下の空気がひんやりとしているようにじられるのは、トバリの気のせいなのだろうか。
割れた窓ガラスや、類の切れ端のようなものがそこらじゅうに転がっている。
大きな痕もあるが、小學校や高校より見かける頻度はない。
また、ここにいるゾンビは、生前は醫療関係者や患者だったであろうものがほとんどだ。
場所を考えれば當然のことではあるが。
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「……んー。なにもないな」
「そうですね」
しばらく散策してみたが、めぼしいものは特にない。
ゾンビの數も、一階や二階と比べると大したことはなかった。
三階以上になると、さまよってきたゾンビがってくることもほとんどないのだろう。
適當にゾンビから栄養を補給させてもらい、ゾンビを処理してから、トバリたちは四階へと向かった。
四階も大した収穫はなく、トバリたちは五階、六階と順調に進んでいった。
「出てこい」とトバリがさりげなく命令しても、たいした量のゾンビは現れない。
上に行けば行くほど、ゾンビの數はなくなっていく。
初めは夜の病院に不気味さをじていたトバリも、し張が抜けてきていた。
三田の言う通り、トバリは疲れている。
『知恵コクマー』との戦いの後、十分な休養を取れたとはとても言えないからだ。
しかし、そんなことを言い出したら三田も疲れているはずなのだ。
瀕死の重傷から回復し、しけるようになったからといって、すぐに夜の探索をしようなどと考える三田の力はトバリの比ではない。
「――止まれ」
そんなことを考えていたせいか、三田のそんな聲に対する反応がし遅れてしまった。
見ると、三田が深刻な顔で廊下の天井を見上げている。
「どうかしたんですか?」
「……人の、気配がする」
「お前も気付いたか。そうだ。上の階に誰かいる」
ユリと三田の言葉に、トバリはギョッとした。
「生存者ということですか?」
「おそらくは。……だが、この先にいるのが『セフィロトの樹』の人間である可能も考慮したほうがいいだろう」
それは今、トバリも考えていたことだ。
あまり心配はしていなかったが、『知恵コクマー』のような手のゾンビを使役できる敵が潛んでいる可能もある。
こんな場所で油斷していたら、足元をすくわれるのがオチだ。
「……行きましょう。僕も周囲への警戒を怠らないように気をつけます」
「ああ」
トバリと三田がそんな話をしている間、ユリはずっと天井を睨みつけていた。
覚悟を決めて、七階へと足を踏みれた。
この病院は七階建てなので、このフロアで最後になる。
月明かりすら差し込まない廊下を、懐中電燈のだけを頼りに進んでいく。
しばらく進んだところで、トバリたちは明確な違和を覚えた。
「ゾンビが見當たりませんね」
「そうだな」
この階には、ゾンビの気配がじられない。
生き殘りの人間が、すべて処理したのだろうか。
トバリと三田はその結論に達しかけていたが、
「――いや。いる」
しかし、ユリだけは、ゾンビの気配をじ取っていたらしい。
「こっち」
そう言って、ユリが先頭になって歩き始めた。
何が出てきてもすぐに対処できるように、トバリは意識を張り巡らせる。
ユリの後についてしばらく進むと、それはすぐに見つかった。
ゾンビたちが、病室の前に群がっていた。
彼らはドア向かって、何度となく爪を立て続けている。
まるで、その中にいるものを渇するかのように。
「あれは……」
「ああ。間違いないだろう」
ゾンビたちをあそこまで惹きつけるものなど、一つしかない。
生存者だ。
とにかく、ドアの前に群がっているゾンビを処理することにした。
三人がかりで、ゾンビの頭に金屬バットの一撃を叩き込んでいく。
こちらが危害を加えても、ゾンビがこちらを襲ってくることはない。
特に苦戦することもなく、その場にいたゾンビを全滅させることができた。
しかし、この階にいるゾンビがこれだけとも限らない。
「いるなら出てこいよ」
トバリは暗闇に向けてそう言い放ったが、返ってきたのは痛いほどの靜寂だけだった。
命令しても出てこないということは、もうゾンビはいないのだろう。
それから、処理したものを適當な部屋に運び込む。
かなりの重労働だが、これをやらなければ廊下を歩くことすらままならない。
床がひどいことになっているが、仕方ない。
他の避難民たちがこの階に來ることはないだろうということで、放っておくことにした。
「さて……」
これで、この中にいるであろう生き殘りと安全に接できる狀況が整ったわけだが、
「夜月。生存者との接はお前に任せたい」
「え、どうしてです?」
「いや、し服を汚しすぎた」
見ると、三田の服はこの暗闇の中でわかるほどにで汚れていた。
べったりと付著したどす黒い赤は、たしかに生き殘りの人間を警戒させてしまうかもしれない。
「わかりました。そういうことなら僕がいきます。三田さんとユリは何かあった時のために待機しておいてください」
「ああ」
「……わかった」
三田とユリが了承したのを確認してから、トバリはドアの向こうにいるであろう生存者に向かって話しかける。
「誰かいますかー? 助けに來ましたよー!」
すると、すぐに反応があった。
「……た、助けてくれるんですか……?」
の聲がした。
この真っ暗な闇の中でなおき通るような、そんなしい聲が。
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