《終わった世界の復讐者 ―僕はゾンビをってクラスメイト達に復讐する―》第51話 大學病院の生存者

「本當に、本當にありがとうございます!」

が、トバリたちに向かって深く頭を下げる。

そこからは、たしかな謝の気持ちが伝わってきた。

「いや、いいんだ。それにしても、二人とも・・・・今まで無事でよかった」

トバリがそう言うと、は顔を上げて、しだけ寂しそうに笑った。

は、久我山くがやま 琴羽ことはと名乗った。

年齢は十五歳の中學三年生。トバリより一つ下らしい。

その年齢の割には、どこか落ち著いて見える。

敬語を使っているせいだろうか。

長い黒髪はれているものの、容姿は整っており、と言って差し支えない。

その幸薄そうな印象と相まって、保護を掻き立てるだった。

「日向ひなたくんも、ずっとここにいたの?」

トバリはその場にしゃがんで、先ほどから琴羽の手を握りしめ続けている年にそう問いかける。

「……うん」

年――日向ひなたは琴羽の後ろに隠れるようにしながらも、トバリの質問にそう答えた。

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こちらの年は桐生きりゅう 日向ひなた。

年齢は九歳の小學三年生。短い黒髪に、利発そうな顔立ちの年だ。

二人ともこの病院の院患者で、パンデミック以前からの知り合いらしい。

二人でこの病室に閉じこもったのはいいものの、外にゾンビに張り付かれてきが取れなくなっていたそうだ。

「日向くん、いつまでもわたしの後ろに隠れてちゃダメだよ? この人たちは、わたしたちを助けてくれたんだから」

琴羽がそう諭しても、日向は琴羽の後ろに隠れたままだ。

「まあまあ、別にいいじゃないか」

まあ、それも仕方のないことだろう。

こんな環境の中で、こんな小さな年に、目の前にいた琴羽に依存するなというほうが無理な話だ。

「まあ、こんなところで立ち話もなんだし、僕たちの拠點に案するよ」

「わたしたちがお邪魔してもいいんですか……?」

「問題ない。俺たちも含めて、皆歓迎してくれるはずだ」

三田の言葉に、琴羽は安心した様子で息を吐いた。

「それで、あの……他に、生き殘っている方はいませんでしたか?」

「……うん。君たちだけだね」

「――そう、ですか」

琴羽は一瞬だけ痛ましげに目を伏せたが、すぐに顔を上げた。

覚悟はしていたのだろう。

琴羽たちが荷を纏めたいとのことなので、トバリたちは明日また出直すことにした。

琴羽と日向に一旦の別れを告げ、部屋から出ようとしたが、

「……? どうした、ユリ」

「……いま……いや、なんでもない」

「? そうか?」

「うん」

ユリが、病室の壁をじっと見つめていた。

し気になったが、ユリがなんでもないというのならそれ以上言及する気にもなれない。

こうして、新しい仲間が二人増えることになった。

「夜月。あの子たちのこと、どう思う?」

その帰り道。

三田にそう聲をかけられたトバリは、その場で立ち止まる。

「……どういう意味です?」

「あいつらが、『セフィロトの樹』の関係者だと思うか?」

「――――」

それは、トバリができるだけ考えないようにしていた可能だった。

「……可能は、ないとは言い切れませんね」

『知恵コクマー』は一目で危険だとわかる姿だったし、そういう態度を取っていたが、『セフィロトの樹』の構員が必ずしも正面から仕掛けてくるとは限らない。

生存者を裝ってトバリたちに近づくという悪辣な手段をとる可能も、十分にある。

「だから、警戒はしておきましょう。……正直、助ける義理もないので放っておいてもいいとは思うんですが、三田さんはそうは思わないんでしょう?」

「ああ。生存者は助ける。その方針を変えるつもりはない」

「ですよね」

まあ、それはいい。

トバリ自は生存者を助ける義理などないと考えているが、それが間違った行為だとまでは思わない。

三田が助けたいと思っているのなら、トバリとユリがその手助けをするのは必要なことだと割り切ることができる。

「ユリは、あの人たち、悪い人じゃ、ないと思う」

「なんでそう思うんだ?」

「カン」

「勘かよ……」

ビシッと人差し指を立てて言っている割には、なんの説得力もないユリの言葉に、トバリが力する。

「そういえばユリ。さっきあの部屋でじっと壁を見てたけど、気になることでもあったのか?」

「うん。なんか、あの壁の向こうに、なにかがいたような、気がしたんだけど、たぶん、ねずみとかだと、思う」

「ネズミ、ねぇ……」

し気になるところだ。

明日、琴羽と日向を拠點まで連れて行ったあとに、軽く調べてみたほうがいいだろう。

ゾンビだった場合、シャレにならない。

こうして、夜の探索は幕を下ろした。

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