《終わった世界の復讐者 ―僕はゾンビをってクラスメイト達に復讐する―》第62話 仲間割れ
「……え?」
琴羽が何を言っているのか、ユリには理解することができなかった。
「…………お前は何を言っているんだ?」
三田は頭を押さえながら、訝しげに琴羽のことを見やる。
それはまさに、この場にいる人間たちの心を代弁する言葉だった。
當の琴羽は不機嫌そうに三田を見據えながら、その口を開く。
「だいたい、ユリちゃんを三田さんに引き渡すだなんて聞いてないんですよ。『ティファレト』が、あなたにそう指示したって言うんですか?」
「そうだ。お前はそう聞いていないのか?」
「聞いてませんよそんなの……」
そう言いながら、琴羽はため息をらした。
詳しいことはわからないが、どうやら『セフィロトの樹』の構員たちの間で、報の齟齬そごが発生しているらしい。
「……よく分からないが、そんなにユリがしいならセフィラを抜き取った後でユリを渡してもらえるよう、あとで『ティファレト』に頼んでみたらどうだ?」
「それこそだいぶ怪しいんですよねぇ……。ユリちゃんを大人しく渡してもらえるかどうか。だいたいあの人、本気でセフィラを集める気があるのかもよくわかりませんし」
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そう言って、琴羽は肩をすくめる。
三田や琴羽が言う、ティファレトという言葉に、ユリは心當たりがない。
だが話の流れからして、そのティファレトという人が三田たちよりも立場が上の『セフィロトの樹』側の人間であるということは、なんとなく察しがついた。
「……琴羽ねぇは、ユリのことがスキなの?」
突然そう尋たずねたのは、『セフィロトの樹』、勝利の『勝利ネツァク』を名乗った日向だ。
日向は、今のこの狀況があまりよくわかっていなさそうな顔で琴羽たちのことを見ている。
「……そうだね。わたしはユリちゃんのことが好きなの」
僅かに頬を赤らめながら、琴羽は日向の質問にそう答える。
ユリは、琴羽がそんな態度をとる意味がわからない。
たしかにこの一ヶ月ほどの間、ユリと琴羽は仲が良かった。
好きか嫌いかと問われれば、ユリも琴羽のことは好きだった。
だが目の前にいる琴羽の態度は、ユリにとっての『好き』からはし外れているように思われた。
それはまるで、男間におけるのように、もっと深く激しいのような――。
「それで、日向くんたちはどうするの?」
「……ぼくたちは、『ティファレト』のいうことをきくよ」
日向は全くの篭っていない聲で、そう言った。
それはまるで、それ以外の選択肢など最初から用意されていないかのような、完璧な答えだ。
「琴羽ねぇは、『ティファレト』のいうこときかないの?」
「……そうだね。『ティファレト』よりユリちゃんのほうが大事だから」
琴羽の言葉に、日向は目を丸くする。
しかしすぐにその目を細めると、しだけ首を傾げて、
「じゃあ、琴羽ねぇもテキ?」
「……日向くんたちは、わたしと『ティファレト』、どっちの味方する?」
「『ティファレト』」
即答だった。
彼の目に迷いなどなく、それが彼の中に存在する唯一の回答なのだと、ユリは直してしまった。
そしてそれは、琴羽にとっても同じだったようで、
「じゃあ、敵かもしれないね」
しだけ悲しそうな顔をした琴羽は、ゆっくりとユリのほうへと歩いていき、その前に立った。
「大丈夫だよ、ユリちゃん。ユリちゃんは、わたしが守るから」
「……どうして?」
「ん?」
琴羽は不思議そうな顔をして、ユリの顔を見つめる。
だが、そんな顔をしたいのはユリのほうだった。
「どうして、ユリたちの味方をしてくれるの……?」
琴羽にしてみれば、三田や日向と共にこの拠點を制圧し、そのティファレトという人に掛け合ってユリの柄を渡してもらえるようにしたほうが確実で、かつ簡単に違いない。
しかもユリの味方をするということは、『セフィロトの樹』に反逆するということに他ならない。
仮にここで三田と日向を打倒することができたとしても、その後の未來は決して明るいものとは思えなかった。
セフィラを持つ琴羽が、『セフィロトの樹』に狙われ続けることは間違いないからだ。
「ユリちゃんのことが好きだからだよ。でも、そうだね……」
しだけ考えるようなそぶりを見せてから、
「……ここでの暮らしは、悪くなかったから」
琴羽はそう言って、ユリに微笑みかけた。
「……わかった。いっしょに戦って、コトハ」
「うん! ありがとねユリちゃん!」
特に、確信があったわけではない。
ただその表を見て、彼なら信じていいんじゃないかと、ユリには思えたのだ。
「……さて」
そんな優しげな顔から一転し、琴羽は三田たちに向けて好戦的な表を見せる。
「わたしからユリちゃんを奪うって言うのなら、三田さんと日向くんたちでも容赦しませんよ?」
「……本當に『ティファレト』の指示に従わなくてもいいのか?」
「ユリちゃんのほうがかわいいので」
會話がり立っていないのをじたのか、三田が嘆息する。
「話にならんな」
それが合図だった。
「な、なんだ!?」
異変を察知した男たちがぶ。
斷続的にガラスが割れる音が響き、おぞましいものが大量に近づいてくる気配があった。
「――食い盡くせ。一人殘らずだ」
三田の口から、恐ろしい言葉が紡がれる。
それは紛れもなく、手のゾンビ達へと向けて発せられた絶対の命令だ。
そして、戦いが始まった。
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