《ニゲナイデクダサイ》人
時間帯もあってか、喫茶店に客の姿はほとんどなかった。悠々と窓際の席を確保し、ホットの抹茶ラテを口にする。
再びポケットのスマートフォンが振する。
また久志だろうか ?スマートフォンを取り出す。
表示されている名前は「真」だ。
「もしもし」
『……もしもし』
 真の聲はどことなく暗かった。くぐもっているような気もする。
「どうしたの」と聞く前に、真は早口で喋りだした。だが、いつもの明るさは鳴りを潛めたままだ。
明るい彼に似つかわしくない。
『どうしてるのか気になっちゃって。明後日だよね、聖二が山形行っちゃうの』
「ああ」
 聖二が學する大學は山形県にある。明後日の今頃にはもう大學の寮にいるはずだ。
『急に寂しくなっちゃって』
 真の聲が暗い理由が分かった。急に彼のことがしくなり、応える聲が甘くなる。
「おれも寂しいよ」
『ありがとう。でも、聖二は夢を葉えに行くんだよね。寂しいけど、我慢しなきゃ』
「大丈夫。たまには會いに行くから。約束するよ」
『約束といえば、覚えてる ?』
 わずかながら、彼の聲が弾む。
『私たち二人の家を設計するって約束』
「もちろん、覚えているよ」
 真との約束。
高校二年生の夏。公園のベンチに腰掛け、指切りげんまんをした。
「夢を葉えて建築士になったら、最初に真と二人だけの家を建てる」と。
あの時の真の笑顔は、何ものにも代えがたいほど眩しかった。ふっくらとした白い頬にえくぼが刻まれ、薄い紅のがしかった。
「真」
 また彼の笑顔が見たい。聖二は決意を込めて話しかける。
「大學で勉強して、真との家を建ててみせるよ」
『待ってる。待ってるからね』
 話の向こうから嬉しそうな笑い聲が聞こえてきた。
『でも、無理しないでよ。あんた、一度熱中すると寢食を忘れるタイプなんだから』
 今度はからかうような聲だ。すっかりいつもの真に戻ったようだ。
「分かった。気を付ける」
 真も大學頑張れよ、と告げて電話を切った。
抹茶ラテを手にしたまま、自然と頬が緩む。
思えば真とは人らしい會話をほとんどしてこなかった。菓子を取り合って喧嘩をしたり、漫畫を一緒に読んだりと、そのやり取りは人のそれよりも親友に近かったのだ。
「『急に寂しくなっちゃって』か……」
 思い出すとやはりにやついてしまう。今のやり取りをリフレインしながら久志を待った。
二十分が経過する。
久志はまだ來ない。電話もかかってこない。
いくらなんでも遅すぎる。苛立ちよりも不安が先行する。
聖二は久志に電話をかけた。
虛しくコールが響き、お決まりのメッセージが流れた。
『ただいま電話にでることができません。ピーッという発信音のあとにお名前とご用件をお話しください』
「久志、どうしたんだ ?これを聞いたら折り返し電話をくれ」
 電話を切った後も、不安は収まらなかった。
たまたま見ていないだけならまだましだが、ここまでくると久志のに起きたことを勘繰ってしまう。
車にでもはねられたのか、不良に捕まったのか、はたまた突然調を崩して倒れたのか。
いてもたってもいられなくなり、聖二は會計を済ませて店を出た。
久志が乗るはずの電車は分かっている。
エレベーターを下り、駆け足でホームに向かう。駅構にたむろしている四人の不良が目にった。
下手に走って絡まれるのも嫌だが、ここはさっさと通過したいところだ。
駆け足のまま一本道を通り越そうとする。が、視界の片隅に何かが引っ掛かり、自然と足が止まった。
【二章開始】騎士好き聖女は今日も幸せ【書籍化・コミカライズ決定】
【第二章開始!】 ※タイトル変更しました。舊タイトル「真の聖女らしい義妹をいじめたという罪で婚約破棄されて辺境の地に追放された騎士好き聖女は、憧れだった騎士団の寮で働けて今日も幸せ。」 私ではなく、義理の妹が真の聖女であるらしい。 そんな妹をいじめたとして、私は王子に婚約破棄され、魔物が猛威を振るう辺境の地を守る第一騎士団の寮で働くことになった。 ……なんて素晴らしいのかしら! 今まで誰にも言えなかったのだけど、実は私、男らしく鍛えられた騎士が大好きなの! 王子はひょろひょろで全然魅力的じゃなかったし、継母にも虐げられているし、この地に未練はまったくない! 喜んで行きます、辺境の地!第一騎士団の寮! 今日もご飯が美味しいし、騎士様は優しくて格好よくて素敵だし、私は幸せ。 だけど不思議。私が來てから、魔物が大人しくなったらしい。 それに私が作った料理を食べたら皆元気になるみたい。 ……復讐ですか?必要ありませんよ。 だって私は今とっても幸せなのだから! 騎士が大好きなのに騎士団長からの好意になかなか気づかない幸せなのほほん聖女と、勘違いしながらも一途にヒロインを想う騎士団長のラブコメ。 ※設定ゆるめ。軽い気持ちでお読みください。 ※ヒロインは騎士が好きすぎて興奮しすぎたりちょっと変態ちっくなところがあります。苦手な方はご注意ください!あたたかい目で見守ってくれると嬉しいです。 ◆5/6日間総合、5/9~12週間総合、6/1~4月間ジャンル別1位になれました!ありがとうございます!(*´˘`*) ◆皆様の応援のおかげで書籍化・コミカライズが決定しました!本當にありがとうございます!
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