《ニゲナイデクダサイ》不良

(あいつらが持ってるカバン……久志のじゃないか ?)

 不良たちが弄んでいるカバン。りきれて塗裝が剝がれかけている茶のショルダーバッグに見覚えがあった。

アニメキャラの缶バッジがついているのを見て確信する。まさしく田中久志のだと。

聖二は不良たちの會話に耳を澄ます。

「さっきのヤツ雑魚過ぎね ?」

 金髪の男が笑いながら言う。

「『餞別がってるから止めてくれー !』だって。ウケる」

 金髪の腕に抱かれたが、大袈裟に両手を挙げた。金髪が笑する。

「しかもアイツ腕から出てたよな ?どこにひっかけたのか知らんけどさ、ますますボコボコにしてごめんなさいってじ」

 茶髪のロン男が、謝意など微塵もじられぬ仕草で手を合わせてみせた。

殘りの一番大柄な男は、フードを目深に被っており顔は見えなかった。ロンの言葉に肩を震わせている。笑っているらしい。

「……おい」

 気が付くと聖二は低い聲で語りかけていた。

自分でもしまったと思ったが、後戻りするわけにはいかない。

「あ ?なんだよこのモヤシ。へし折るぞ」

 金髪が恫喝してくる。一瞬怯みそうになるが、聖二も負けじと聲を張り上げた。

「そのカバンは友人のだ。返してもらおうか」

「『ぼくちゃんの友達のカバン返してくだちゃい』」

 ロンがおちょぼ口になり、オーバーに泣きそうな顔をつくる。不良たちは下品に手を叩き、大笑した。頭にひしひしとが上るのを自覚しながらも、聖二は努めて冷靜に語りかける。

「もう警察には連絡してある。カバンを返して逃げないと捕まるだろうな。こうしてガッツリおれに見られているんだから。それともおれを殺すか ?お前らにそんな勇気があるかは甚だ疑問だが」

 冷靜さが功を奏したのか、不良たちの揺をうのに功したようだ。連中の目が一気に酷しくなる。

更に、ちょうどいいタイミングで駅員がやって來た。こちらの異変を察したらしく早足で近付いてくる。

「逃げようぜ」

 不良たちがカバンを放り出し、走り出した。

「ちょっと、待ちなさい君達」

 駅員が呼びかける。金髪がちらりと振り返り、一番大柄な男に足をひっかける。警察が來るまでの囮にするらしい。

不良たちの絆の弱さに呆れたが、久志のカバンは返してもらえた。

駅員に丁重に禮を述べ、その場から去ってもらう。

問題はもうひとつあるのだ。

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