《ニゲナイデクダサイ》
だ。
「……久志」
 聲がしぼみ、掠れた。
その時、初めてダンボールから何かが覗いているのに気付いた。
見覚えのあるスニーカー。
久志のものだ。
聖二はダンボールをどかした。
中にあるものが目にる。だが、それを景としてけれることができなかった。
ひとつひとつのに、ゆっくりとピントを當てていく。
久志は顔を埋め、なにかを貪り喰っていた。がとどめなく溢れ、弾けて飛び、聖二の服を染めていく。
久志の下敷きになっているのは、髭が長くびた中年の男だった。ダンボールに住んでいるホームレスだろう。彼はかっと目を見開き、口を大きく開いている。今にも斷末魔の悲鳴をあげそうだった。 
腹は裂かれ、久志の頭がすっぽりとはまっている。
「久志……何してるんだよ、お前」
 が痙攣し、半笑いの形になる。喪心した聖二は、まだ目の前の景をけれられなかった。
あとからやって來た大柄が腰を抜かし、えずく。そのまま嘔吐した。
頭に來た聖二は、大柄を引っ張って立たせ、ぐらを摑んだ。
「なにをしたんだ……久志になにをした !」
 大柄は魚のように口をかしながら首を橫に振る。
聖二も分かっていた。久志がおかしくなったのは、彼らのせいではない。分かってはいても、大柄に當たらずにはいられなかった。
突然、何かがぶつかってくる。
目を見開いた若いだった。
「逃げて」
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