《ニゲナイデクダサイ》

長い髪のが大口を開け、首筋に噛みつこうとを乗り出している。

の聲が、今度こそはっきりと聞こえた。

「危ない」

うつぶせの勢を立て直し、手足をばたつかせる。だが、男である聖二の力をもってしても、をどけることはできなかった。

パニックになって暴れるほどに、自分との手足がもつれあい、くことすら困難になってくる。

「助けてくれ!」

必死にぶ。

視界の端に大柄がり込む。彼は腰を抜かし、地面に餅をつき、怯えきった表でこちらを見ている。助ける気力はじられなかった。

聖二は両手での肩を摑み、上に押し上げた。極限まで開かれたの口から、涎が糸を引いた。聖二の頬に何かが落ちる。生ぬるく、嫌なニオイの

の涎だった。

恐怖と嫌悪のあまり、聖二の力が緩んだ。

が再びのし掛かってくる。その口から洩れる熱気が、臭気を帯び、聖二の首筋にかかる。

すぐそばで息絶えているホームレスの姿が、生々しさを保ったまま脳裏をよぎった。

死を覚悟して、聖二は目を閉じる。

家族、友人、真。近しい人間に別れを告げる。

鈍い音がした。

    人が読んでいる<ニゲナイデクダサイ>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください