染めの館》第2話 友達

「あの…お願いがあってきました。」

「あ、梨乃さん。」

この人は山 梨乃(やまね りの)さん。私と同じクラスの、唯一の友達と言える存在だ。

「ん?なんだ?そのおねがいとは。」

部長が尋ねると、しためらってから聲をあげた。

「…中で、話してもいいですか?」

梨乃さんが椅子に座り、話を始める。

「実はこの子、1週間前からずっと行方不明になっているんです。」

そう言って差し出された寫真には、梨乃さんとの子がもう一人寫っていた。

「彩虹(あやこ)って言うんですけど、最後に変なメールが送られて以來、返信がなくて…家を訪ねても、しばらく帰ってないから行方不明屆を出したっていうから、帰ってないみたいなんです。」

「ほう、それで我々に捜査を依頼したいと。でもなんでオカ研部なんかに?」

部長がそういうと、私は思わず口を挾んだ。

「え、あの、その、も、もしかしていなくなる前に送られてきたメールって、これですか?」

そう言って私はケータイの畫面を見せた。

「あ、そう!それです!」

メールの容は『ユルサナイ』と何度も書いてあるものだった。

「にも、何でお前のケータイにそんなのが屆いたんだ。一送り主は誰なんだ?」

「…私の弟のカイトです。」

そう。私の弟もこのメールが送られてきてから姿を見ていない。すなわち行方不明だ。

「お前弟いたのかよ、てか、何ですぐ教えてくれなかったんだよ。」

かなめさんが、叱るかのような、心配するような目でこちらを見てきた。

「す、すみませんっ。」

「かなめ、落ち著け。取り敢えずこの彩虹さんの服裝とか分かる範囲で教えてくれないかな。」

「はい…。」

どうやら彩虹さんは、梨乃さんと遊びに行った後、行方不明になったらしい。服裝も、きっとその時と同じものだ。

「…來週から夏休みか。よし。夏休み初日の深夜0時、染めの館前に集合だ。懐中電燈を忘れるなよ。」

「あ、ありがとうございます!この恩は必ずお返しします。」

深夜0時に、染めの館の前に。カイト…そこにいるの?

夏休みが始まった。ある人は遊びに、ある人は家に閉じこもり、またある人は夜の準備をしていた。

「はぁ…」

私は大きなため息をついた。それが暑さのためなのか、行きたくないという気持ちからなのかはわからなかった。

…ちゃん、ねえ…ん

カイト?カイトなの?

…えちゃん…たす…け…て

「カイトっ!!」

思わずんだ。どうやらいつの間にか眠っていたようだ。

「11時20分か…」

父も母も仕事で何日か家を空けている。鍵をかけ、足早に家を遠ざけた。この先何が起こるかも知らずに。

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