染めの館》りこ編 第1話

確かに見た。あれは兄貴だった。一昨日行方不明になった兄貴だ。お願いだ兄貴、置いていかないでくれ。

あの時、私も言い出すべきだった。にもの弟が行方不明になったって言った時。私のケータイにも「ユルサナイ」と何度も書かれたメールが屆いた。でも、にも達とはし違った。メールの一番したの行に「りこたすけて」と、書いてあったのだ。兄貴は今、私を必要としている。私に助けを求めているんだ。助けに行かないと。

でも、この染めの館に來ても手がかりが見つからない。ここにいないのか?そう思った時、鍵のかかっていたはずの部屋から誰かが顔を出したんだ。間違いなく兄貴だった。だが、違うかもしれない。大事な後輩達を危険な目に曬すわけには行かない。今は待っていてくれ。

部屋のノブを回す。鍵はやはりかかっていなかった。中にると、いままで以上にすごいホコリの量だった。

「ぐっ、ゴホッ」

思わずむせてしまった。その音が奧までこだましている。自分の聲とは言えど、なんとなく不気味だった。

「兄貴?いるのか?」

なんとなく小聲で聲をかけてみる。返事はなかった。

改めて中を凝視する。目が慣れてくると、どうやら長い廊下だということがわかった。の割には扉がない。

「ひと部屋が広いのか…?」

とりあえず、最初の扉に手をかける。鍵はかかっていなかったが、瓦礫で道を塞がれていた。おまけに…なんだこの匂いは。

「死臭か?さすがに人ではないと思いたいが…貓かなにかだろうな。」

その時、廊下の突き當りから音が聴こえた。黙っていて集中していないと聞こえないような小さな音だった。

「兄貴?」

返事はなかった。でも、小さな小さな音だったけど、確かに聞こえたんだ。

私は走って突き當りに來た。目の前にはほかの扉よりも小さめの扉がある。

「子供部屋か?」

手をかけると、鍵はかかっていなかった。思い切って部屋にる。

「うおっ?!」

驚いた。今までとは確実に雰囲気が違っていた。まるで、この部屋だけ50年前のまま時が止まっているような。

「ねえ、おねえちゃん」

「?!」

突如後から聲を掛けられた。振り返るとそこに居たのは。

「な…なんで…」

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