《地獄屋語》第8話

山野ミナキ、榊葉尚人

…を忘れてはいないだろうか

これは盛岡恵が田沼エリカと戦っている時の話だ

朝、ミナキが登校してくると毎日のように田沼エリカ率いる子軍団が何やら押し付けにくる。

そしてそれをミナキが完全無視して田沼エリカを怒らせる

これが恒例行事になっていたのだが…

この日は田沼エリカ達はミナキの元には來なかった

代わりにわざとらしく盛岡恵を見てクスクスと笑っている

ミナキはその様子を見てため息をついた

「今日はあのうるさい奴ら來ないんだな」

2日前に登校を始めた榊葉尚人が聲をかけて來た

まだ3日目だが尚人とミナキは仲が良い

「ターゲット変えたのか?」

「…超絶どうでもいい」

が、ミナキは素っ気ない

ずっと窓の方を見ている

「お前…そればっかだな」

「ねえ…君何中學?」

珍しくミナキの方から話しかけてきた。

「え、えっと西中」

「盛岡恵と一緒?」

ミナキが

「いや、俺同中いないんだよ」

「そう…か」

ミナキは再び窓の外を向いてしまった

Advertisement

「盛岡恵、なんかあんの?」

「…別に」

晝休み

ミナキは弁當箱を持って教室を出て行く

尚人は子に囲まれていたがミナキが出て行くのを見つけるとうまいこと巻いて追いかけてきた

「何?」

「何だよ、いいじゃないか一緒に食っても」

ミナキは眼鏡の奧から尚人を見つめると

「好きにすれば」

スタスタと行ってしまった

尚人はクスッと笑うと追いかけて行った

「お前ダチいねーの?」

「上部だけの繋がりに意味なんてあるの?」

ドライすぎる答えに呆れる尚人

「意味とかじゃなくてさ…その、しいとか思わないわけ?友達に上部も下部も関係ないだろ?」

「…よく…わからない」

そう言ったミナキはどこか悲しそうだった

「じゃあ…俺がなってやろーか?この先友達が1人もいないようじゃ不便だろ?」

「そうなの?」

ミナキが首をかしげる

「ああ、まあいらないならいらないでいいけど分からないなら試してみるのもいいんじゃねーの?」

「…」

ミナキは黙っている

そして眼鏡を外した

鼻筋を抑える

このきは眼鏡をつけ慣れていない人のきだ

「俺をダチにしてよ」

ミナキが前髪をどかして尚人を見る

吸い込まれるような瞳と目が合う

「…ん。よろしく」

ボソッとミナキが呟いた

尚人が目を丸くした後、笑った

「お前、相変わらずだな」

放課後

ミナキはいつも一目散に帰って行く

この日は尚人もそれを追った

ミナキがありえないスピードの早歩きで校門を出る

尚人は駆け足でやっと追いつきミナキに聲をかけようとした。

しかし

「山野…?」

ミナキが角を曲がったところで黒い服を著た同い年くらいの人と何やら會話しているのを見たのだ

かすかだが聲が聞こえる

「…から…の依頼」

「1人で…持って…ろ?」

聲からして男のようだ

「わる…君…ないから」

「勝ち…ない…ら」

よく聞き取ることができないので尚人はさらに近づいた

「この…ごくは私が売る。ごう…の當主としてね」

「さすが…あくま…」

それ以上の會話を聞き取ることはできなかった

盛岡恵は1人で帰り道を歩いていた

「ロズ…さん」

そしてふと足を止める

「私は今…」

考え込むようにして顔を歪ませた

すると

「呼んだ?」

「へ?」

フードを被ったロズが立っていた

「ロズさん!」

「悩み事?」

恵は目を見開いたがしばらくしてロズを見た

「あの…私は今、ロズさんのおかげですごく楽になりました。だけど私が地獄屋さんに依頼したせいで私の代わりに誰かが…エリカさんが苦しんでるのなら…」

恵は目を伏せた

しの間を置きロズが口を開く

「あんたみたいないい奴はさ『復讐』っていう概念がないんだよね。運良く地獄屋に頼ることができればいいんだけどね、それができない人は抱える負擔が大きくなっていくばかりなんだ。でも実際『復讐』を果たすと罪悪にみまれる。

そりゃいい事じゃないけどね。復讐なんて何も生まないよ。だけど私はこのまま終わらせるなんて納得がいかないんだ」

「…今…エリカさんは苦しんでるのかな」

「それなら心配いらないよ。地獄屋は期間だからね。復讐を果たしたらそれで終わりさ、もちろん依頼主と話をつけてね」

ロズが恵の前に立つ

「今日はその話を?」

「ああ、田沼エリカしぶとすぎてあんたの苦しみと同様ってわけにはいかなかったかもしれないけど…あんたはこれで満足か?」

恵はコクコクと頷いた

「誰かに頼ってこんなこと…いいこととは思わない。だけどロズさんがいなかったらきっと今の私もなかったです。ありがとうございました」

深々と頭を下げる

「私はあんたの依頼を完璧にはこなせなかった。この埋め合わせは必ずする。

それでは

地獄一丁毎度ありがとうございました…」

恵が顔を上げた時にはもうすでに黒い服を著たフードのはいなかった。

「依頼…果たせなかったんじゃないだろ?」

「…ミキト當主」

「果たさなかったんだろ?」

「…さあ、どうでしょうね」

「禮を言う。」

「目の屆くところである限りお守りします。

…クラスメートとしても…」

つゞく

      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください