《Duty》chapter 8 推察 -2
2 7月5日 推察①
學校の通學ルートからし逸れた裏通り。
クラシックな雰囲気が漂うおしゃれで小さなカフェがある。店にはアンティークな小が丁寧に並べられている。おそらくだが高校生が學校帰りにやってくるようなカフェではないはずだ。
いつもなのか、この時間だからなのかはわからないが、店はかなり空いていた。
そんなカフェの窓際を外した角のテーブル席に太と桜は並んで座った。
ここへは初めて來たのにも関わらず、かなり落ち著ける雰囲気であることに太も桜も驚いた。
太と桜に向かい合って霧島が座る。
そして霧島は注文したコーヒーが屆くと、角砂糖を7個放り込んで、一口飲んだ。
太と桜にもそれぞれコーヒーと紅茶が屆いた。太はそのままブラックで、コーヒーを啜った。
「ふーん。神谷君は砂糖れない派か」
「霧島は砂糖多すぎだと思うけどな」
「糖分は沢山取りたくてね。ブラックも嫌いではないよ」
また霧島は一口啜った。
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橫で桜がスプーンを使いカラカラと角砂糖を溶かしていた。
「そんなことより、さっきの話どういう意味だ」
太は強めの口調で、しかし聲を荒げずに発した。
「ん? さっきって?」
霧島はとぼけたように返した。
「第1週目なのに罪人が出ていないって話だ。今月? それもわからない」
桜も同意するように頷いた。
「あれ? キミたちならもう既に気付いていると思ったんだけど」
太も桜も目の前のカップに一切口を付けず、頭を振った。
スッと霧島が真剣な表に切り替わる。だが、らかな、笑みを含ませた口調で話し始めた。
「僕たちのクラス、3年1組に現在起きている出來事。それに関してはわかってるよね」
「罪人が選ばれて、審判で裁かれる」
桜が霧島に聞こえるように呟いた。
「そう。おそらくだけど、誰かを不快にしたり、迷を掛けたり、つまり人として駄目なことをした人間が罪人として選ばれ、審判によって裁かれている」
太も桜も頷いた。
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「もしこれが誰かの悪趣味な悪戯にしても非現実的すぎるし。もう偶然じゃ済まないことにも気付いてるよね」
「……ああ。これからも審判は続く、と思っている」
太は憂げな眼差しで答えた。その隣で、桜は悲しげに俯く。
「事態は深刻だ。明日は我がかもしれないからね」
霧島はコーヒーを飲み干した。
そして話を続けた。
「まだ前例が二つしかなくて確定には程遠いけど、これが僕の考察」
そう言って霧島はスマホのカレンダーアプリを起させ太と桜に見せた。
表示は5月のカレンダーである。
「まずは最初の罪人・五十嵐アキラが選ばれた日付は5月の1日。そして審判が行われ斷罪された日は5月の20日だ」
「……ああ」
表示は6月のカレンダーへと変わる。
「そして次の罪人・東佐紀と山田秋彥が選ばれた日付はどちらも6月3日。そして第2の審判が行われた日が6月20日」
「……」
「どちらにも共通することは、罪人に選定される日は、その月の第1週目。そして審判の日が20日であることに気付く。つまりは第3週目だね」
「っていうことは、今月はもう今日で第1週目が終わるから、もう安心ってこと?」
桜が眉間に薄い皺を寄せながら尋ねた。
「そうとも言えない。前例はそうであるだけで第2週目と第4週目に何が起こるかはわからないからね。もしかしたら第2週目まで選定期間があるのかもしれないだろ?」
未だ納得していない様子で桜は霧島に問いかけた。
「なんで? だったら第3週目までに選定されることだってあるかもよ? もっと言えば、そんな制約ないかもしれない」
「いや。それは有り得ないよ」
霧島は澄ました表を浮かべて答えた。
「どうして?」
「先月に行われた第2の審判のときさ。つまりは6月の第3週目、20日。A軍・金城蓮が山田の判決に逆上して、審判者であるC軍・平森隆寛に毆りかかったことがあった」
太は思い出したくも無いあの先月の出來事を遡ってみた。
確かに金城は平森に暴行を加えていたことを思い出した。
「ああ。確かにあった」
「もしも胡桃沢さんが言うように第3週目までが罪人の選定期間なんだとしたら、金城君のあの行為だって罪人確定になってしまうと思わない?」
「まあ……確かに、な」
「金城君が犯人じゃなかったら、ね」
太は目を見開き意味がわからないとでも言いたそうな表を浮かべた。
霧島は不敵に微笑む。
「犯人って……」
「はは。まあ、とりあえず僕の推測としては罪人選定期間は月の第1、2週目。そして審判が行われるのは月の第3、4週目だと思っている」
太も桜も真剣に霧島の話に耳を傾ける。
テーブルに置かれたコーヒーは既に溫くなってしまっていた。
「霧島、お前凄いな」
「別に凄くないよ。普通に気付くでしょ」
「霧島君は私たちにそれを忠告してくれるために呼んだの?」
霧島はにこっと笑って話を続けた。
「こんなこと教えるためじゃないよ。というか僕はキミたちならとっくに気付いていると思っていたから」
「じゃあ、なんだよ」
「もっと本的な問題さ」
「本的……?」
「こんなくだらない審判とやらを起こしている犯人は誰か」
太と桜は揺し、驚愕した。
「はん……にん……?」
霧島は構わずに続ける。
「そう。そして僕は3年1組の中にその犯人がいると考えている」
「そんな……」
桜が口を塞いで驚愕する。
「どうして……?」
「完全なる証拠は無い。ただひとつとして、思い當たるのはあの奇妙な放送は審判の結果を聞き分けているってこと。審判者が無罪の判決を下すかもしれないからね」
「……」
「ふたつめは、第1の審判にて、あの奇怪放送が鳴り響いた途端に、生徒たちが騒ぎ始めた。そのとき、あの放送は言った。『靜粛に』とね。まるでクラスの騒ぎが聞こえているかのように」
太は審判を思い返す。
確かに生徒たちが騒ぎ立てるなか、スピーカーは靜粛に、と告げていた。
「だから、か?」
「ただねえ~教室に監視小型カメラや、盜聴マイクでも仕掛けてられていた可能もゼロじゃないから。でも僕がこの3ヶ月間、捜索しても全く見つからなかったからー」
「そんなこともしてたのか、お前」
「うーん。まあ僕の知らないような超最新型小型マイクとかなら探せないけどね」
「それで、なの?」
桜が聲を発した。
その聲がし苛立ちを含んでいる聲であることに太は気付いた。
「うん?」
「それでクラスの中に犯人がいるって言ってるの?」
「犯人はクラスに混じって審判を楽しんでいる、って可能も示唆してるってだけ。可能の域をしてはいないよ」
「……」
桜は俯き考え込むようにした後、紅茶を啜った。
「そして、何故月の中に罪人選定期間と審判の期間のルールを作ったのか……っとこれはまだ推測の域だけどね」
霧島は軽い咳払いをして続ける。
「だけど別の考察として、遠隔的もしくは自殺に見せかけて人を殺してるんだから、犯人は普通の人間ではない可能もあるとは思ってるけどね」
「普通、じゃないってなんだよ?」
「霊の呪い、とか」
「の、呪いって……噓、でしょ?」
「本當に噓だと思ってる?」
太の表が険しくなる。そして、これまでの審判を思い返した。
「なくとも俺たちのクラスに起こっている事態は異常だとは思う」
「……だよね」
霧島は爽やかな笑みを見せ、自らのコーヒーを飲もうとしたが、全て飲み干していることを思い出し、照れ笑いを浮かべた。
「そして何故僕たち宵崎高校3年1組のクラスが狙われてしまったのか」
「霧島、お前はなんでだと思うんだよ?」
「それがわかったら苦労しないよ。ただ原因によっては対策ができるかもしれない。被害を減らせるかもしれないでしょ?」
「あ、ああ」
「だから、その原因を探すのと対策を練るのを神谷君と胡桃沢さんに手伝ってもらおうと思ってね」
首を傾げ、桜が聞いた。
「手伝うって、何を?」
「そ、れ、は。これから考えよう」
「なんだそれ」
「よし」と言って霧島は、財布を取り出しテーブルから立ち上がった。
そして「奢るよ」と言った後、話を結論付けた。
「僕が言いたいことをまとめる。現実的な問題としては、あの3年1組に犯人がいるのかもしれないってこと。また、非現実的問題としては、僕たちのクラスに何か恨みを持つ霊の呪いってところかな」
慌てて太は殘ったコーヒーを一気に飲み干した。隣で桜も帰り支度を始める。
「まあ、僕は後者である可能のほうが高いと思ってるけどね。今、は」
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