《Duty》chapter 9 調査 -2

2 7月6日 呼び出し②

「お。來たね」

駅から出たらすぐの広場に霧島はいた。

いつも通りの作り笑顔に眼鏡と黒っぽい服。

なんというか制服を著ているときとあまり印象が変わらないな、というのが太の第一印象であった。

「お待たせ。で? 今日何するんだよ」

「まずはかしての調査だ。『審判』に関する有効な手掛かりが見つかるかどうかはわからないけど。とりあえず僕たちの宵崎高校の歴史でも調べてみようかと思ってね」

「……はあ。歴史って何か関係あるのか?」

「もしかしたら今、僕たちが置かれている狀況と同じようなケースが過去にあったかもしれないだろ?」

「……霧島君、もしそうだったらもっと問題になっていると思うんだけど」

「まあ。カンマ1%にでも縋っていたほうが理由無く行するより意が湧くのではないかい?」

そんなふうに通常運転で怪しく微笑む霧島を橫目で見て、太は大きく息を吐いた。

「うん! やっぱり人手が必要だった。キミたちに聲をかけて本當に良かったよ」

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呆気羅漢とした霧島の真意を聞き、太は目をパチパチと瞬かせる。

「で……どこで調べる気なんだ、図書館?」

* * * * *

目の前には大きな自ドア。

両端の柱には紺の制服をに纏った警察

見上げるとそこには大きな建

「霧島……ここって?」

「警察署」

「霧島君、ここで調べるの?」

「うん、そうだよ。警察署だったら何か事件とかあったら資料殘ってるかなって思って」

依然、眼鏡の奧でニコニコと笑みを浮かべ続ける霧島を太と桜は困の表で見続ける。

「い、いや、あるだろうけどよ。俺たち普通の高校生なわけで。そんなもん見せてもらえないと思うぞ」

「まあまあ。心配は要らないよ。たぶん」

を張って霧島はドシドシと歩みを進めた。

「お、おい!」

太も桜もその後ろを付いていくことしかできなかった。

廊下を勝手に突き進んで歩いていくと道行く刑事に歩みを止められた。

「キミたち? いったい何のようかな? 何か相談事なら下の付のところを通して案してもらってほしいんだけど?」

霧島は一切悪びれることなく言った。

「過去の殺人事件や、人が亡くなった事件が纏まってある資料室なんかがあると思うんですけど、どこですか?」

太も桜もそんな霧島を呆れ半分で見ていた。

刑事が困った目線を送りながら告げる。

「い、いやあ。だからねキミ。一般人に公開しているような場所じゃないんだよ、ここは。すぐに出て行ってくれないかな?」

霧島の背後から太が聲をかけた。

「當たり前だろ霧島。何を勘違いしてるのか。黙って図書館にでも変更しようぜ」

「神谷君。ここのほうが絶対捗るよ」

「い、いや……そういう問題じゃなくてさ」

そのとき霧島の前を塞いでいた刑事の顔つきが変わった。

「ん? 霧島……? 霧島って」

にこっと刑事に向かって霧島が微笑んだ。

「はい。僕は霧島といいます」

「まさか……」

「あーキミ、すまない」

背後から風格のある男が刑事に向かって聲をかけてきた。

50代前半といった年頃で、気だるそうにしている。

服裝なども適當に見繕っているようで、

手前の刑事のほうがよっぽどキチンとしているように窺えた。

そのとき手前の刑事が敬禮をした。

「霧島警部。お勤めご苦労様です!」

「あー。事件の調査してたら、もう晝だったぜ~。結局徹夜だ~。はあ~あ」

呆然に太と桜は佇んでいた。そして顔を見合わせた。

「え? 今、霧島警部って言った?」

「うん。今、霧島警部って言った!」

大きなあくびをして、霧島警部と呼ばれたおじさんは太と桜の前に立つ年に指を指した。

「悪い。ウチの息子だ。通してくれ」

「し、失禮しました!」

刑事は霧島の前を譲り、去っていった。

霧島はただただ微笑んでいた。

「ええ! 霧島のお父さんかよ!」

「ああ、そうだよ。僕の父だ」

霧島は奧に立つ霧島警部を睨むように見つめた。

二人は見つめ合った後、霧島父のほうから口を開いた。

「……その胡散臭え笑顔、そろそろ止めたらどうだ。友達も離れてくぞ。響哉」

「父さんこそ。だらしない格を直したほうがいい。部下が離れていくよ」

霧島親子はお互いを品定めするように睨み合った。

太も桜もその異様な空間に佇むことが億劫になるほど。

「え? えっと? き、霧島君?」

「ふっ」

霧島は父から視線を外し、一呼吸置いた後、口を開いた。

「約束通り、資料室見せてくれない? 父さん?」

霧島はいつものようにニコッと微笑んだ。

「……ああ、どうぞ。立派な息子よ」

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