６ ―月―日　平森隆寛

中學の頃。

彼は誰よりも優しくて、臆病で、ゆえに人の顔ばかりを窺う年だった。

友達はいなかった。

他人に対して、友達という領域まで踏み込むことができなかった。

高校學の頃。

彼は決心した。

高校では変わろう。

こんな自分を捨てて、新しい自分へと変わろう。

勉強も、部活も、友人関係も、もして、自分は生まれ変わる。

彼はそう思っていた。

學式の日。

校門で彼はある年とぶつかった。

年は彼に謝ってきた。

「わりい！　大丈夫か？」

「う、うん。大丈夫、です」

年は彼に尋ねた。

「あれ？　キミもこの高校に學した人？」

「そう……です」

年は彼に微笑んだ。

「そっか。俺もなんだ。キミ名前は？」

「僕は、ひ、平森隆寛、です」

年は彼に名を名乗った。

「俺は五十嵐アキラ。よろしくな」

彼は中學の頃に比べ、友達もできた。

休み時間になると、彼のまわりに集まってきてくれる友人もいた。

彼は臆病で優しい格のため、いつも笑って丁寧に友人たちとの時間を過ごしていた。

友人たちは、『伊瀬友昭』『東佐紀』と名乗っていた。

友人たちのなかに『五十嵐アキラ』はいなかった。

學校のなかで『胡桃沢桜』という可い子も見つけたが、その子の傍にはいつも『神谷太』という男子がいた。

そいつの存在を彼は鬱陶しいとじていた。

それでも彼にとって、友人たちとの時間は楽しかったはずだった。

しかし、いつの日からか、彼は心の奧底ではいつもこう思い始めていた。

「どうして僕のまわりにいる奴らは、こんなクズばかりなんだ」