１ ９月１６日　母と子⑥

朝、重い瞼をり開け目を覚まし、窓の外を眺めた。

空は黒かった。

まるで世界全が闇に覆われているかのように。

テレビでは作り笑顔のキャスターが今日の天気を伝えていた。

降水確率２０パーセント。

晝からは快晴となるらしい。

噓をつかれている気がした。

洗面臺に行き、水飛沫が跳ねるのを気にしながら顔を洗う。

最近、自分自のことを見つめなおす機會が増えた。

それに伴う何かの劣化。

それは初めからあった自らの『欠落』に気付き始めたことか？

でも、そんなことはどうでもいい。

まだだ。

これは人類史に殘る偉業となるのだから。

×　×　×　×　×

いつもより通學用の鞄が重くじた。

心痛な面持ちで神谷太は自室から階段を下りてきた。

つい先日に霧島響哉からの連絡をけて以來、ずっと心の中に大きな鉛を埋め込まれたかのような気分だった。

この間、母である神谷波絵の顔さえも見ることができなかった。

怖かったからだ。

もう誰を信用していいかわからなかった。

「僕たちが止めなければならない」

霧島からの電話で最後に言われた言葉だ。

それは太が３年１組で最初にじたことだ。

それが起因となり、『審判』に立ち向かおうと考えたのだ。

宵崎高校の全貌を過去から眺めた。それによって影充というかつてのスクールカースト下位の正が見えてきて、影零という存在を摑めた。

そして、影浪子のことを知った。

さらに、自分のdark sideに気付き始めた。

【自分の中には、自分以外の何かがいる】

それが何なのかはまだわからない。

でも、確かに言えること。

それは、自分が『審判』を止めなければならないということ。

必ず。

「太？」

玄関のドアを開こうとしたとき、背後から聲をかけられ太は思わずを直させてしまった。

ドアノブを摑んだまま、ゆっくりと振り返った。

息子を心配するような顔をして波絵がそこに立っていた。

「太、ご飯は？」

太は渇いたから振り絞るように聲を出した。

「いらない」

波絵は小さく頷くと続けていった。

「顔悪いじゃない。無理して學校に行く必要なんてないのよ」

太は一瞬目を閉じて、ゆっくりと開いた。

先よりも強めの口調でいった。

「いや行くよ。行かなきゃならない」

「……太？」

「母さん……俺は、貴方に聞きたいことがある」

首を傾げる彼を鋭く見つめながら、太は小さく深呼吸して口を開きいった。