２ ―月―日　影充

宵崎高校の校門付近の桜の花びらが綺麗に宙を舞っていた。

鮮やかなピンクのなか、真新しい制服でを包む年たちがいた。

張したような笑顔、安堵したような笑顔。

不安と期待、両方を背負って彼らはこれから高校生活を過ごしていくのだ。

楽しいことばかりじゃない。

辛く苦しいことだってあるだろう。

いや、そちらのほうが多いかもしれない。

それでも、彼らは今、笑っているのだ。

無知とは実に稽である。

この先の橋が崩れている道を笑いながら楽しげに進む人間を見るのは、実に愉快だ。

――なんて隨分とお気楽で稽で無様な人間たちなのだろう。

スーツを著たはそう思い馬鹿にするように笑った。

――こんな儀式だってそうだ。學式？　違う、これは審判だ。お前たちはこれからこの刑務所で裁かれるべき人間だ、そう告げられているにしかすぎない。

楽しそうに家族で笑っている連中。

友達と肩を組んで笑っている奴ら。

――誰も彼も、無様だ。

「お母さん！」

聲が聞こえた。

その聲のするほうへと顔を向けた。そこには満面の笑みの年がいた。

――鬱陶しい。眩しい。その笑顔をやめろ。

「一緒に寫真撮ろう」

――なぜ？　なぜ、私と寫真を撮りたがる？　私たちはただの生學的に親と子という関係しかない。

は年に腕を摑まれ、校門のそばにある學式という看板の隣まで歩かされた。

そのまま年はそばにいた大人のもとまで駆け寄り、「カメラお願いできますか？」と尋ねていた。

――ただの伝で繋げられただけのそれぞれが一個の生だ。なんの思いれも必要ない。

年はの隣まで戻ってきて再び笑顔になった。

「僕はもうお母さんの助けは必要ないよ」

――違う。私はお前を助けたことなど今まで一度もない。

「僕はお母さんに支えられなくてもいいくらい強くなるから」

――やめろ。私にこんなを抱かせるな。理屈ではわかっているのに。……お前には私は必要ない。だが……。

「そして、お母さんを超えるくらい立派な教師になる」

前方でフラッシュが輝いた。

だがの目が捉えたそのフラッシュは、どういうわけか滲み、ぼやけて見えた。