《ヤメロ【完】》5
それから數日が経過し、いよいよ明日は遊園地に行く日だというのに未だに穂からの連絡がない。
すぐに機嫌は直るだろとうと見越していたのだが、その予想はまんまと裏切られてしまった。それだけ怒っているのだろう。
そういえば以前にも一度、同じようなことがあった。あれは確か、穂からの連絡にも応えず自宅に篭ってホラー映畫を三日三晩観続けた時。あの時は隨分と心配させてしまった。
兎に角一にも二にもホラー映畫。なんていうのは昔からで、どうやら余程の事がない限りこればかりは変われないのかもしれない。
あの時も、怒った穂は一週間も連絡をくれなかった。
そんな出來事を思い出しながら、明日は謝罪の意味も込めてとことん穂に盡くしてあげよう。そんな風に思う。
【この間は本當にごめん。明日は9時に迎えに行くから】
それだけ送信すると攜帯をポケットへしまう。
側から見たら、彼とホラー映畫とどっちが大事なんだ! なんて言われてしまいそうだが、そもそも彼と趣味を比較するなんて事自がナンセンスだ。
趣味は趣味。穂の事は何よりも大切だし勿論している。
「ーーあれ? 」
歩みを止めた俺は小さな聲をポツリと溢した。
どうやら、穂の事を考えていたら無意識に映畫館の前へと來てしまったらしい。
『スナッフフィルム』はマイナーすぎる映畫のせいか、ネットで上映スケジュールが公開されるなんてこともなければCMなんて灑落た宣伝すら一切行わない。
そんな狀況で新作の公開報を得る方法といえば、この近辺で唯一『スナッフフィルム』を上映しているこの映畫館へと直接足を運ぶ以外になかった。そんな理由もあり、ここ最近では毎日のように映畫館へと通って確認するのが日課となっていた。
それが習慣となってしまったせいなのか。はたまた、ホラー映畫への並々ならぬ執著心からだというのか。
確かに穂の事を考えていたというのに、はこうして映畫館へと向かってしまう。その本能とも呼べる行には我ながら呆れてしまった。
よもやここまでとは……。そんなことを思いながらチラリと視線を橫に流す。
「……ん? 」
驚きにも似た小さな聲をらすと、目前の真新しいポスターに思わず目を凝らした。
ここ數日、連絡のない穂の事を考えていた俺は暫くこの映畫館へは通っていなかった。それがなんというタイミングの良さか、丁度今日は新作の公開日だったらしい。
俺は迷うことなくビルへとって行くと映畫館へと続く扉を開いた。
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