《シェアハウス【完】》

「本當にの人なんだね」

「え?」

「三萬なんてどう考えても安すぎるでしょ? 目當てのキモいオヤジかなんかだと思ってたからさぁ……。三萬なんて安すぎだし、何か裏があるんじゃないかって思ってた」

そう言って安心したかのように小さく溜息をらす香澄。

「確かに……そんな事考えてもいなかったよ」

「もうっ! 真紀はもっとちゃんと慎重に考えるべきだよ。周りの意見もちゃんと聞きなよね」

口を尖らせて怒りながらも、「でも、家見つかって良かったね」と言ってくれる香澄。

「ごめんね。……ありがとう香澄」

顔を覗き込んで微笑みかけると、しだけ照れた様な素振りを見せた香澄は、「ホント、真紀は世話が焼けるよね」と言いながら攜帯をロッカーにしまった。

「今日は週末だからきっと混むね。怠いなぁ……。そろそろ時間だね、行こっか」

ぶつくさと文句を言いながら壁に掛かった時計を見た香澄は、そう言うとロッカーに鍵を掛けて扉の方へと歩いて行く。

それを見た私は、自分のロッカーに鍵を掛けると香澄を追うようにして扉から出た。

そのまま廊下を抜けて店を覗いてみると、既に夕飯時という事もあってかとても混雑している。

それを確認した私は一度小さく深呼吸をすると、「……よし、頑張ろう」と呟いてからホールへと続く道を一歩踏み出したーー。

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