《シェアハウス【完】》13

「えっ?! 何それ……その人レズなんじゃない?」

最近あった靜香さんとの出來事を話してみれば、香澄は一瞬驚いた顔をしてそう言った。

「やっぱりそうなのかな……」

『男の人は好きじゃない』

とハッキリ言葉にしていた靜香さんを思い出す。

「で、どうするの? 家出るの?」

「……別に偏見がある訳ではないし。靜香さん良い人だから……」

「あのねぇ、わかってる? 人の指舐めて何度も名前呼ぶって異常だよ?! 真紀絶対狙われてるから! 家賃三萬が惜しいのはわかるけどさぁ」

私の言葉に怒り出した香澄は、最後には呆れたような顔をすると大きく溜息を吐いた。

確かに香澄の言う通り、あの時の靜香さんは異常だった。

ピチャピチャと音を鳴らして指を舐め、呼吸を荒げて私の名前を呼ぶ靜香さん。

あの異常な景は私の脳裏に焼き付いて離れない。

靜香さんの気にドキリとし……

それ以上に恐ろしさで背筋がゾクリとしたのを覚えている。

それでもやっぱり家賃三萬には惹かれるし、そもそもあそこを出たら住む家がなくなってしまう。

黙ったまま俯いていると、目の前にいる香澄が口を開いた。

「ごめん。出たくてももう出れないんだよね。私も同棲してなかったら泊めてあげれたんだけど……」

「ううん、ありがとう。頑張ってお金貯めて一人暮らしするよ」

「まだまだ先になりそうだね」

「……うん」

「話しならいつでも聞くから。何もできないかもしれないけど、困ったら言ってね」

そう言って心配そうな顔を見せる香澄に、「ありがとう」と告げるとロッカーを閉じた。

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