《3分小説》花束

ピンポーン

「お屆けでーす。」

やっぱり今年も屆いた。

その荷が屆き出したのは、

私が二十歳の誕生日を迎えたときだった。

それら、毎年、6月24日

私の誕生日に花束が屆く。

ピンポーン

「鈴木さーん」

「はーい。今出ます。」

そう言って、急いで階段を降りて、

玄関へ向かった。

「すみません。お待たせしました。」

「いえいえ、大丈夫です。」

「こちらにサインお願いします。」

「いつもありがとうございます。」

を屆けてくれたのは、佐藤さん。

この地域の擔當らしく、この花束は毎年佐藤さんが、屆けてくれる。

「今日お誕生日ですね。おめでとうございます。」

毎年、花束を屆けてくれるので、

すっかり私の誕生日を覚えてくれている。

佐藤さんは、イケメンってほどではないけど、とても爽やかな好青年だ。

多分、私と変わらない位の年齢だと思う。

5年前にファミリーレストランでバイトしていた、彼と別れてから、まだ彼が居ないらしい。

「ありがとうございます。

でも、誰なんでしょうね。この花束。」

「もう、5年目ですね。」

「そうですね。」

私は現在、25歳

二十歳の誕生日から、

毎年送られてくるこの花束。

送り元は、不明。

「ありがとうございます。」

「良い、誕生日を。」

「あ、ありがとうございます。」

そう言って、佐藤さんは、配達の車に戻って行った。

軽く會釈をして、

私は、扉を閉めた。

「でも、ほんと、誰なんだろう」

とは、言いつつ、

私はこの花束の送り主は父からだと思っている。

父と母は、私が産まれた時から仲があまり良くなかったらしいく、私が小學校卒業するタイミングで離婚し、私は母について行くことになった。

きっと、そんな父が、名前を伏せて、この花束を屆けてくれているに違いない。

花束はその後も毎年続いた。

そして、私は晴人さんと4月に籍をれ、2人で暮らすことになった。

仕事のことも合ったので、新居は実家から、車で20分位の所に決めた。

それから2ヶ月が経ち、

ようやく、荷もひと段落した6月24日

29歳の誕生日

ピンポーン

私はハッとなった。

ピンポーンピンポーン

覗き窓を見ると、

帽子を目深に被った佐藤さんの姿だった。

私が引っ越したことを知っているのは、

會社の一部の人達と母親しか居ないはずだった。

ましてや、父が私が引っ越した事を知っている筈が無かった。

ガチャ

佐藤さんは、何も言わずに、

伝票を差し出した。

私は、明らかにいつもと違う雰囲気の佐藤さんに、一瞬怖さをじたため、

サインを済ませ、荷け取り直ぐに扉を閉めた。

ふと、花束に目を向けると、

白い花束だった。

ゼラニウム…

ラベルにはそう書いてある。

あまり聞き慣れない花だったので、

その場でスマホを使って調べてみた。

花言葉…

「私はあなたのを信じない」

そっと、覗き窓から外を見ると、

彼はまだそこに立っていた。

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