《心霊便利屋》第8章 約束された平和と閉ざされた扉①

俺達は激しい戦いを終え、事務所に戻ることになった。

瀬戸さんは明日來客の予定があるからと岡山に帰っていった。

俺達4人は各々が好きな酒を持ちより祝杯を上げていた。

「お前等、俺のパンチを見たか?悪霊の野郎をぶっ飛ばしたときの、たまんねぇわ!」

篤はがっはっはと大笑いしビールを一気に流し込んでいた。

能天気なやつだ。

「でも、まだ高橋の野郎が殘ってるしな。」

あいつの目的は一なんなんだ?

クレアは高橋と対面してから心なしか元気がない。

「みんなごめん。私が浩一をやっつけてれば全部解決したのに…」

「クレアのせいじゃないよ。それにあいつはただの悪霊じゃない。何か裏があるはずだ。」

コトッ

徹が瓶を置き、

「そうだね。あいつは他の悪霊と違って極めて人間の思考に近い意思で暗躍してると思う。」

そうなのだ。

念、恨みでいているとは到底思えない。

何か他の目的が必ずあるはずだ。

「俺や徹も長くこの世界にいるけど、あんなやつは初めてだよ。」

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「ああ、危険な奴らには違いないけど、霊の行パターンは単純だよ。生きてる人間よりもずっとね。」

「俺にかかればどんな化けでもー!」

篤は放っておけば良いな。

「…確かに浩一は元々ちょっとズルいところはあったし、噓つきだったけどあそこまでの事をする頭なんてないはずだもん。なんか変なじがするの。」

悪霊になって生前より賢くなるなんて話聞いたことないしな。

『…によると、中田莉さん24歳が仕事からの帰宅中、何者かにさらわれた模様です。』

気になるニュースが流れ、俺はテレビを見た。

また拐か。今月にって何人目だ?

確か、被害者は學生、男、、年齢、バラバラだった覚えがあるが…

「あ、これ知ってる。私が卒業した大學でも拐された人がいるみたいだよ。」

マジかよ、世間は狹いなぁ

「これだけ拐されててなんで警察は止められねぇんだよ。」

徹が何本目かのビールを空けながら呟いた。

「お前、飲みすぎだぞ。」

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「晃、もう遅いし、そろそろ帰らない?」

「そうだな。」

徹は缶詰のアンチョビをそのまま口にいれた。

「なんだよ、まだこれからだろー!」

の子は夜更かしが天敵なの!」

クレアはそう言うと、バケットにアンチョビを乗っけて頬張った。

「そうだな、俺とクレアは帰るわ。じゃあまた明日な!」

「お前等こそ揃って寢坊するなよ~」

嫌味な言い方だな。

俺とクレアは一足早く事務所を出た。

その夜クレアは俺の家に行きたいと言い、マンションに著くと、

「晃、しだけ飲み直さない?」

「いいよ、もちろん!」

「やった!おつまみ作る~」

なんか久々にじる平和だな。

キッチンからいい匂いがしてくる。

「ねぇ晃~。」

「どうした?」

「これだけ一緒にいるなら、帰るおうちは1つの方がよくない?」

ん?それってどういう…あ!

「同棲ってこと?」

「うん、晃が嫌じゃないならっ」

「もちろん嫌じゃないし、俺もその方が嬉しいよ。」

「ほんと?!なら、仕事が落ち著いたら一緒にお部屋探そう♡」

「そうだな、楽しみだ!」

「私もー!」

そう言いながら、酒とつまみがテーブルに並べられた。

…ん?なんだこれ。

「これはね、さっき買った冷凍のオクラにガーリックソルトを振って、をつけて揚げ焼きにしたの!パパが大好きなおつまみ!味しいから食べてみて♡」

オ、オクラか、正直苦手なんだ…

だが、クレアの嬉しそうな顔を見たら食べないわけにはいかないじゃないか!

俺は恐る恐るオクラを口に運んだ。

「…うまい。ホクホクしててオクラじゃないみたいだ。」

苦手な粘り気は多あるが、それ程気にならないし、それよりガーリックの香りが癖になる!

「この味付けだと、苦手でも味しく食べられるでしょ?」

「うん、…あ!いや…」

バレてたのか?!

「わかりやすくて可い♡」

「でも、これは食べれるよ。オクラの青臭さが全然しないし!」

「克服できたね!頑張った晃君にはご褒あげなきゃ♡」

俺の目の前でクレアが服をぎ出した。

「お風呂でいいコトしてあげる♡」

俺がこの後どうしたかは言うまでもない。

だいぶ長くなった夜が明けて、俺とクレアは出勤前にカフェに來ていた。

いつも俺より早く起きて朝食を作ってくれているクレアに楽をさせたかったからだ。

クレアも「デートみたいで楽しい♡」

と、喜んでくれたので大満足だ。

プルプルプル…

誰だよ、俺とクレアの幸せな時間を邪魔するのは。

…瀬戸さんだ。

俺は外に出て話を聞くと依頼の話だったのだが、いつもと事が違うようだ。

瀬戸さんのところへは毎日のようにたくさんの依頼が來るそうだ。

それも全國から集まるものだからどうしても斷らなきゃいけないケースも出てくる。

そこで東京の仕事をうちに回したいと言う話だった。

瀬戸さんからの仕事は、俺達が普段けている仕事の報酬の2桁は違う。

その分リスクは高いが、報酬を考えるとありがたい。

後で、徹に相談しよう。

俺はカフェに戻ると、クレアがスマホを見ていた。

「ごめん、待たせちゃったな。瀬戸さんからだったよ。」

「いいの。ねぇ晃、また拐があったって。今回は八王子みたいだよ。」

「またか。どうなってんだよ、ココは。」

いくらなんでも多すぎる。警察が機能していないのは何故だ?

コーヒーをのみ終えた俺とクレアは事務所に向かった。

「おはよー!」

「相良さん、今朝飯?」

「おー!遅刻しなかったかぁ!」

徹はデスクの上に座って菓子パンを食べていた。

「徹、ちょっと話があるから今いいか?クレアも一緒に。」

「はーい!」

俺は瀬戸さんの話を二人に話した。

クレアはすぐ了解したが、徹はし慎重になってた。

「昨日みたいな事件が多くなるだったら、し考えた方がよくないか?」

「あぁ、だけど報酬は桁違いだぞ。」

「それはわかってる。でも命には換えられんだろ。もしけるならうちの人數を増やさないとキツイぞ。」

徹の言う通りだが、簡単に人なんて集まらないだろ。

「あ、クレアちゃん!バイトのままだったけど、いまでも正社員になりたい?」

「はい、もちろん!」

徹はコピー機の近くにある引き出しから履歴書を取り出してクレアのデスクに置いた。

「よかった。じゃあ採用するから、履歴書だけ書いてくれる?寫真はこっちで撮るから。」

クレアは早速履歴書を書き始めた。

俺はクレアのデスクの淵に座って見ていると、名前の欄にクレア・グレース・楠本と書いたのを見て驚いた。

「ミドルネームはグレースなんだ。」

「うん、おばあちゃんの名前だよ。」

「そうなんだ。いい名前だね。」

アメリカ人のミドルネームはキリスト教の洗禮名や、先祖の名前、舊姓をれると聞いたことがあるが本當だったんだな。

俺がそんなことを考えていると…

ピンポーン

珍しい、インターホンだ。

俺は誰かをモニターで確認すると、20代後半だろうか?

神社の神職が著ている裝束姿の男が立っていた。

「どちら様?」

『瀬戸様の使いの者です。』

瀬戸さん絡みか。

「お待ちください。」

俺が事務所の扉を開けて招きれた。

「どのようなご用件で?」

俺が男に聞くと、

「今朝ほど瀬戸様とお話しされたと思うのですが、東京支部の設立に伴いそちらへ出向となった林巧と申します。」

待て待て待て!

「ち、ちょっと待ってもらえます?まだけるかも決まってませんよ?!」

男はし困った顔をすると、

「しかし、瀬戸様から必ずあなた方はけるからと昨日出発した次第なんですが…」

「急にそう言われても…」

「瀬戸さんすごーい!」

クレア、何を心してるんだ。

「人は増えたし、問題は解決したな。」

まぁ、確かにそれはそうだが。

男は自分のスマホを取り出すと

「瀬戸様からです。」

ん?よくわからないが差し出されたスマホを手に取り耳に當てた。

「もしもし」

『黒さん?先程はどうも。』

「こちらこそ。ていうか、瀬戸さん勝手に困りますよ…」

『あら、たった今申し出をおけしようとされまてませんでしたか?』

「あ、いや。それはそうですけど。」

『ではよろしくお願いします。』

「こちらこそ。」

うん?何か違う気が…

不思議な人だ。

何故かこの人の言う通りになって行ってしまう。

『では、うちの林から仕事の容を聞いてください。』

「あ、はい。」

『それと、黒さん。仕事の合間でもいいですからクレアさんを連れてこちらへいらしてください。』

「はあ」

『クレアさんもそうですが、また悪霊との戦いになればどうしてもあなたの力が主軸となるはずです。』

「…そうですね。」

『ですから、しでも早くあなたはご自分の力の使い方を學んで、魂へのリスクを軽減させるべきです。』

「わかりました、よろしくお願いします。」

『ではごきげんよう。クレアさんのこと、しっかり守ってあげなさい。』

「はい、失禮します。」

俺は電話を林さんに返した。

…うーん、前の戦いでも相當力を使ったが今のところ俺のは全く問題はないし本當に危険なんだろうか?

クレアが不安そうにこっちを見ている。

「大丈夫?」

「あぁ、もちろん。」

「何か変なこと言われた?」

「いや、俺に自力の使い方を學びに來いって言われた事と、クレアをしっかり守ってやれってことくらいかな。」

「そっかぁ。あの人、私たちが付き合ってるのやっぱり知ってたんだね。」

そういえばそうだ。

言う機會なんてなかったしな。

そもそもあの人には説明なんていらないのだろう。

「私も早く力の使い方教えてもらわなきゃ!もっと役に立ちたいし!」

クレアは十分役に立ってるよ、特に俺にはクレアが必要だ。」

してる♡」

「お、俺もだよ!」

してるってのは初めて言われた気がする…

クレアが言うと、これ以上ないくらいきれいで優しい言葉に聞こえるのが不思議だ。

「あの、そろそろお話ししても?」

あ、林さんの事忘れてた。

「すみません、どうぞ。」

林さんは持參した風呂敷を広げると中には資料のような紙がたくさんっており一枚ずつデスクに広げていく。

「…神職の方はみんな風呂敷が好きなんですか?」

俺が林さんに気になったことを聞くと、

「いえ、便利なので使っているだけですが。」

なるほど。

「そうですか。」

「では本題にりますね。」

「はい、すいませんっ」

「皆さんは今世間を騒がせてないる連続拐事件はご存じですね?」

おいおい、まさか…

林さんの話を聞き終えると、やはりそのまさかだった。

話を要約すると、瀬戸さんの調査チームが調べた結果拐犯は一部の政府関係者と財界の人間、科學者のグループだと疑いを持った。

目的までは摑めていないらしいが(おいおい)、非人道的な実験をする為、人を集めていると。

犯人が捕まらないのはある種の圧力を警察にかけているからだとも言っていた。

…もちろん、素直に信じるにはあまりにも荒唐無稽な話だし、今の日本でこんな謀めいた話が実在するんだろうか。

徹は途中から席をはずしてコーヒー飲んでるし、クレアはスマホいじっていた。

…まぁ、そうなるよな。

真剣に話してくれた林さんには悪いがこれは…

「気持ちはわかります。私もこの話を聞いたときには同じ気持ちでした。」

でしょうね。

「ですが、調査チームから送られてきた寫真を見て気持ちが変わりました。」

そういって俺達は寫真を見せられた。

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