車から降りる前、篤を病院に連れていった捜査から電話があった。

手が無事終わったという連絡だった。

…良かった。

篤とも電話越しで話が出來た。

とっとと事件を解決させて、うまいもの食わせろと言っていた。

俺達が事務所に戻ると、そこには総理補佐がいた。

「おかえりなさい。話は聞きました。皆さんお疲れさまでした。」

そういえばこの人、いつの間にかいなくなってたな。

「…あんた、どこ行ってたんですか？」

「あなた方が発った後、邸に戻りました。総理に報告があったもので。」

…もう誰を信じたら良いのかわからない。

あの聲の主、こんな大それた事が出來るなら、どう考えたって政府の、しかもかなり上の立場の人間だろう。

「そうですか。それで黒幕はわかったんですか？」

「いえ、全く。」

だろうな。

わかってたら今ごろ捕まえに行ってる。

「ただ、わかったこともあります。」

「なんですか？」

「あの地下壕は都の興和清真工業という會社の所有でした。」

「え？その會社の人が犯人ってことですか？」

クレアが総理補佐に聞く。

「いえ、犯人に協力はしていたかも知れませんが。」

政治家が関わってるということだろうか。

「あの會社は和田外務副大臣へ獻金をしていますから。」

政治獻金か…だがそれだけで証拠にはならないだろう。

「外務副大臣が犯人って言いたいんですか？」

補佐は首を橫に振った。

「ですからわかりません。私はあくまで可能の話を申し上げています。」

チッ、公務員ってのはコレだから…

「それに副大臣の名前が出たからといって、大臣が関わってないとは言い切れません。この國の公職組織は縦割りですからね。」

「大臣の命令で副大臣がいている可能もあると？」

「その通りです。」

「信じらんない！なんで國の偉い人が悪いことするの？！」

「クレア、やめときな。」

「うー…」

クレアが言うように政治家がみんな善なら誰も苦労はしないんだがな。

「大臣や副大臣を任意かなんかで引っ張っれないんですか？」

「それで素直に喋るとでも？」

軽蔑するような視線を向けてきた。

確かにその通りだ。しかし、

「この事件はある種のテロだろ？金のきを追ったり出來ないのかってことですよ。」

「それには禮狀がいります。」

「なら、ぐずぐずしてないで取ってくださいよ！」

「裁判所に、大臣や副大臣が犯人かもしれないから、禮狀を発行してください。と言えばもらえるとでも？」

「くっ…！」

なら、どうしたら良いんだ！！

「気持ちはわかります。私も思いは一緒です。だからこそ今は冷靜に対処せねばなりません。

無論、犯人を特定でれきば手加減などするつもりはありませんよ。」

今は何も出來ないってことは良くわかった。

「わかりました。でも主犯がわかってもまた非公開の捜査になるんでしょ？」

「そうなります。あなた方には、高橋なる人を追ってもらいたいのです。」

高橋が人かどうか怪しいものだけどな。まぁ、細かいことは良いか。

「彼を野放しにするのは危険すぎます。」

「わかりました。でもどうやって探すんです？」

俺が質問をすると、pcで打ち込み作業をしているオペレーターの所へ案された。

「彼は分析の間中といいます。」

間中と呼ばれた人は俺の方に首をやり、

「どうも。」

と、一言だけ。

「彼は民間から引き抜いたホワイトハッカーです。高橋の居所は追跡出來ています。」

「相手は人間じゃないのにどうやって？」

「彼は姿は消せますが、どういうわけだかには僅かに熱源のようなものがあるようです。」

ん？

「ヤツに熱源があるんですか？」

「そのようです。先程の戦闘の際にも彼のから熱源の反応が出ていました。」

死んだやつから熱源？そんな馬鹿な…

「それを、衛星から熱知して追ってるんだよ。」

コイツ、ガム噛みながら仕事してんのか。

「溫度が気溫よりも低いところで推移してるから逆に探しやすいの。…わかる？」

「あぁ、もちろん。きっと君の説明が上手いからだな。」

俺は嫌味を言ってやった。こういうヤツは苦手だ。

「そりゃどうもー。」

クソ…腹立つ。

「あ、そいつ、中目黒の廃業した飲食店の中にったよ。一人みたいだ。」

「おい、晃。なんだあいつ。」

「優秀な分析だそうだ。」

「あのさー、嫌味言う暇あったら、捜査連れて捕まえに行ったら？」

こ、この野郎…！

『はっ！』

ん？クレアの聲か？

「いて！！」

間中は頭を押さえてキーボードに突っ伏している。

クレア、"聲"で、攻撃したな？

「なんだ、今の！！」

分析の間中はキョロキョロしている。まぁ良い気味か。

「クレア、バレたら大変だぞ。」

「晃にムカつく態度とり続けてたからつい…」

「でも、ありがとな！」

思わずクレアの腰を抱いてしまった。

「あっ♡続きは無事に戻ったら…ね♡」

「あぁ、絶対生きて帰らないとな！」

俺達がいちゃいちゃしてるのを見てた間中と目が合ったが慌ててすぐ目を反らされた。

おっと、お坊ちゃんには刺激的だったかな。

俺の元へ捜査が走ってきた。

「黒君、高橋の居場所がわかったから一緒に來てくれ！楠本さんも！」

「あ、はい。相良さんと林さんは？」

「彼等は他で問題が起きた時の為に待機してもらう事になった。」

確かに相手がどうくかわからない以上、悪霊に対抗できる俺達が全員外に出るのはリスクがでかいな。

「了解だ、行こう！」

俺が答えると、捜査が振り向いた。

「頼むぞ、スーパーヒーロー！」

調子が良いな。

「…私がスーパー…？…ええ！任せて！！」

…クレア、アメリカ人のが騒いでないか？

捜査がクスッと笑ったのを俺は見逃さなかった。

(なんか恥ずかしい…。)

現地には俺とクレア、捜査の武田と飛下の４人で向かう事になった。

俺達は捜査が運転する裝甲車で現地に急行した。

『彼の反応はまだ、例の飲食店の中だよ。』

間中の追跡が正しいならこの建の中に高橋がいることになるな。

「了解、今から中にる。」

早朝なだけあって自ドアは閉まったままだ。

武田さんはり口に待機して、飛下さんが何かの細いを自ドアの繋ぎ目に差した。

なるほど、ハンドル付きのバールだったのか。

グリッグリッグリッ…

ドアに大人一人通れるくらいの隙間が出來た。

武田さんが手で合図を出す。

飛下さん、俺、クレア、武田さんの順で中にる。

今回は捜査はもちろん、俺とクレアもガスブローのアサルトライフルにフラッシュライトを裝備している。

気分は俺も捜査だ。

ガタッ

『？！』

不意に音がなり俺達は音の出所を探した。

…なにもないな。

「…みんな。」

ん？武田さんの聲だ。

彼の元に行くと、口からって突き當たりのところでしゃがんでいた。

「どうしたんスか？」

「これを見てくれ。」

俺もしゃがんでみる。

被害者か？何かが橫たわっていた。

…どういうことだ。

相當腐しているが間違いない、高橋本人だ。

「これ、罠じゃないよね？」

クレアか。

確かにその可能はある。

「武田さん、し下がりましょう。」

「そうだな。」

俺達は高橋からし離れた。

飛下さんが高橋の寫真を撮っている。

「武田だ。ターゲット発見。寫真を送るから照合してくれ。」

『了解。』

だが、おかしい。分析の間中は、高橋は移していると言っていた。

死んでいたら、熱源反応なんてないはずだ。

『屆いたよ、し待ってて。』

死を何のためにここへ置いたんだ？

「…？！」

くそ、やっぱり罠だった！

「みんな！離れろ！！」

俺達は急いで店の外に出た。

バゴォォォォン！！！

店で発が起きた。

「…っ。クレア！」

「だ、大丈夫。」

クレアが立ち上がった。

「く、くそっ。また発か！

…飛下？！」

飛下さんがいない？

俺は周囲を見渡したが、確かに見當たらない。

「あ、晃！」

ん？

「どうした？！」

クレアが青ざめながら指を差している。

？！

「これ…腕だよな。」

千切れた腕には捜査全員が著ていた部隊の腕章が付いていた。

「…とび、した？

飛下！噓だろ！！どこにいる？！」

『今の音は何？！』

「高橋の罠だった。あいつ自したよ。

飛下捜査は間に合わなかった。腕だけでも連れて帰るよ。」

『了解…』

…あれはどういう意味だったんだ？

「晃、どうしたの？」

俺は武田さんに聞こえないよう小聲で

「高橋のやつ、発する直前に目を開けて俺を見て笑ったんだ…くそ！！」

「え…笑った？どういうこと？」

「あいつは既に死んでるはずだ。なおかつ姿を自由に変えられるからな。腐死のふりなんてお手のものだろ。」

「ていうことは、浩一はまだピンピンしてるってこと？！」

「あぁ、死んでるんだけどな。」

「あいつ、何人殺したら気が済むの！」

武田さんがこちらに歩いてきた。

「…人が集まって來ている、警察が來る前に戻るぞ。」

車は誰一人喋ることはなかった。