《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》足音
夕食を食べて風呂にって、僕は自分の部屋の布団で寢そべっていた。
この部屋には僕一人。スミレさんはお母さんと同じ部屋で寢ると言っていた。
もう皆布団にってからしばらく経つ。
どこからかヒグラシの鳴き聲が聞こえて、それが一層家の中の靜けさを強調させているようにじた。
きっと皆眠っているのだろう。
今日は特に暑苦しくもなんともないのに、眠気がしない。思い返してみれば、今日一日で二人も人が死んだのだ。まだ興して寢れないのかも。
そう思っていると、ぺた、と音がした。
——ぺた、ぺた、ぺた、ぺた。
誰かが廊下を足で歩いている。
耳を澄ます。すると廊下の右側から歩いているようだった。
誰かが厠にでも行くのか。興味本位で布団から這い出る。
僕は音が左手に消えるのを待って、襖をそーっと開け、隙間から足音の主を覗いた。
ひゅっ、と僕のが変な音を鳴らす。
するとそれが振り返る気配を見せたので、大慌てで襖を閉めた。
どっと汗が噴き出す。
縄だ。縄垂らしだ。死裝束を著て、首に腐敗した縄を巻き付け垂らし、足で歩く〝縄垂らし〟が。いた。
そうだ、僕は勘違いをしていたんだ。
僕の部屋が一番端で、さらに右は玄関だ。
そこから厠に行けるような人は玄関からってこない限りいない。
梅園家にも、來てしまった……。
また誰かが、殺される。
もしかしたら僕も殺されるかもしれない。
きっと〝あれ〟は僕に気がついた。
……眠ろう。
僕は汗でべとべとなのに、頭から布団を被って震えながら夜を過ごした。
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