《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》跡継ぎ

結局は皆、スミレさんのせいだと思ってるんだろ……。

嫌な気持ちになる。

僕は皆とし距離をあけて座った。なんとなく近づきたくなかったから。

「み、皆は紫首神社に參拝してきなさい……。後のことはお母さんと他の家の人達でやるから……」

お母さんのその言葉に促され、僕達はぞろぞろと家を出た。そんな僕達を嘲笑うかのように日差しが眩しい。

松竹梅の家で人が死んだ。全員首を吊って。これで終わりなのか、それともまだ続くのか……。

「ねえ、香壽、菫ちゃん」

前を歩いていた千姉さんが突然振り返った。

「……松園家の跡継ぎって、長男の壯一郎さんよね。浩一さんが亡くなってしまったし」

「え、う、うん……」

「竹園家の跡継ぎは裕一さんかしら。裕一さんが駄目でも、裕二さんと祐三さんがいるものね、竹園家は跡継ぎの心配は無いと思うわ。

それで……菫ちゃんは、梅園家に嫁りするのよね?」

姉さんが僕達に歩く速さを揃えて聞く。スミレさんは小さく頷いた。

「二人は知ってる? 松竹梅の家の、跡継ぎがいなかった場合のこと」

「えっ……」

二人で聲が揃う。そんなことは聞いたこともない。千姉さんは真剣な顔で口を開いた。

「竹園の子さんと將太さんが話しているところを聞いてしまったの。松園家や竹園家の跡継ぎがいない場合、家の立場がれ替わるって」

……えっ。

「家の立場?」

僕が聞き返すと、千姉さんは頷いた。

「そうよ。例えば松園家の跡継ぎがいなければ、竹園家と松園家がれ替わるの。竹園家が松園家になり、松園家が竹園家になる。

そして……竹園家の跡継ぎがいない場合、竹園家は梅園家とれ替わるのよ」

「えっ、で、でも梅園家は——」

「梅園家の跡継ぎがいなくても、どこともれ替わらないわ。だって、一番下だもの……」

姉さんが顔をしかめる。

「あ、あの……」

スミレさんが千姉さんに話しかけた。

「なあに?」

「松園家はもう壯一郎さんしかいませんよね……。だからもし、壯一郎さんが亡くなられると……」

「……竹園家と、れ替わるかもしれないわね」

急に暑い風が吹いた。

木の葉がガサガサ音を立てる。

「でも松園家の跡継ぎがいなくて竹園家になったら、竹園家と梅園家はれ替わらないの?」

僕がそう聞くと、千姉さんはうーんと唸った。

「分からないわ。詳しいことは私も知らない。ただ私ね、この首吊りって縄垂らしのせいなんかじゃ無いと思うの」

姉さんが僕とスミレさんを互に見る。

「誰かが……何か意図があってやってるのかもしれないわ」

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