《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》神は何か
千姉さんは最後にそう言うと、小走りで結姉さんの所へ行ってしまった。
千姉さんが言いたかったのは、誰かが殺人をしているかもしれないと言うことだろう。
可能があるとすれば竹園家か梅園家の誰かだけど、どちらにせよ自分の家の人が亡くなっている。
それに、殺人だなんて……考えたくもない。
もしかしたら皆もどこかで殺人を疑っていながら、それを信じたくなくて縄垂らしだと言い聞かせているのかもしれない。
でも……。
僕が見たあれは、間違いなく縄垂らしだった。
その姿を誰かに見せる為に人がやっていた……?
駄目だ、頭がもやもやする。
取り敢えずこのことを考えるのはやめよう。
「あ、あの、こうじゅさん」
「えっ! あ、はい、何ですか?」
スミレさんの存在をすーっかり忘れてしまっていた。申し訳ない。
「多くの場合……拝殿には神は祀られていないようなんです」
「は、はあ」
「紫首神社は拝殿の裏に桃園家があって……そして紫霊峠があり、花畑があり、その裏にお墓が……ありますよね」
スミレさんが控えめに、けれども珍しくハッキリと喋っている。
「神は何なのでしょうか?」
「あ、拝殿に無いなら墓の後ろに神があるはずですよね。……僕は見たことがないですけど」
するとスミレさんは俯く。
「しこうべって……紫に首と書きますよね」
「はい」
「噂では神社への參拝を怠ると縄垂らしがやって來るとか……」
「ああ、そうでしたね」
「紫の首になど、普通にしていればならないと思うんです。例えば……その……」
首を、締めるとか……?
スミレさんがちらりとこちらを見る。同じ考えなのだろう。最後まで言わずに、口を閉じた。
しすると、スミレさんがおもむろに喋り始めた。
「紫首神社の名前の由來と縄垂らし、それと私の目ののことが何処かで繋がっている気がするんです」
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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