《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》袋小路

靴を履いて、そーっと木の影から家を伺う。特に人影も見えない。

紫霊峠に行かなくちゃ。

木の影に隠れながら、この前の苔むした石畳へ向かう。相変わらず木に隠れて分かりにくいけど、確かに辿り著いた。

急な階段が上にびていて、思わず込みする。……でも早く行かないと。

階段に足をかけずんずん登る。暫くすると息が上がってきて、汗もだらだら出てきた。

茂さんと鈴子ちゃんと來た時も疲れたな……。

鍵を反対の手に握り変えて、汗を拭く。手が錆臭い。

手汗で鍵も濡れてきて、錆の臭いが僕の周りに充満する。でもその気持ち悪さは、徐々強まっていく甘い香りで打ち消された。

もうしなんだ。

殘り數段を一気に上がると、青々と生茂る木がぱっと開けて青空が広がった。

同時にあの甘い香りがを包む。下を見れば一面薄紫で、まるで別世界のようだ。

し息を整えて、階段を降りる。

登りほど辛くは無いけど、花畑を越えればお墓が待っていることを考えると憂鬱だ。

ついに地面に足が著く。

そこからは平面な一本道で、左右には溢れるようにニオイスミレが咲いている。

その先に見える暗がりに、僕は一心に進んだ。まばらに木が生えており、その中に沢山の墓がある。階段狀になっていて、一番後ろが一番高い。

冷たそうな墓石が近づいてくると同時に、ある疑問が頭をよぎった。

はもしや、墓の向こう……?

だとしたら、僕はどうやって降りればいい?

いや、でも茂さんも行ける場所なんだから、どこかに降りる場所があるんだ。

……取り敢えず墓の一番上まで行ってみよう。

花畑を過ぎ、階段を登る。左右は深い緑の木に囲まれていて、全然見えない。

もたつきながらも一番上に登った。が、落ちないように石で囲みが作ってあり、そこから下を見下ろしても木しか見えない。

困ったなあ。

今日しかないのに……。

あっ! 待てよ!

そうだ、紫霊峠の階段のり口は神社からし離れていたじゃないか。は神社から真っ直ぐ線を後ろにばした所にある。

……てことは、右の木の方に行けばあるのかな……。

ちらっと橫を見ても、深い緑で進む気にならない。でも、鍵を盜ってちゃったんだ。今更引けない。

行かなきゃ——。

そう思った瞬間。

——ザッ。ザッ。

あ・れ・の足音がした。

背筋が凍る。どうしろって言うんだ。結構近いよ、音。

追い詰められた……。前にも後ろにも行けない。袋小路だ。

    人が読んでいる<首吊り死體が呪う村、痣のスミレの狂い咲き>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください