《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》あれは誰?

どうしよう……。

——ザッ、ザッ。

考えている間にも足音は近づいて來る。

——ザッ、ザッ。

ええい、こうなったらお墓に隠れちゃえ!

すみません、失禮します……っ!

冷たい墓跡に背中を付ける。息の音も聞こえないように、必死で口を押さえながらじっとする。足音は、次第に近くなってきた。

こんな狀況なのに心臓は太鼓のようにうるさい。だからあ・れ・に気づかれるのではと思ってしまい、もっともっとうるさくなる。

靜かにしろ、靜かに、お願いだから気づかれないで——!

——ザッ、ザッ。

足音がちょうど僕の真後ろ辺りを通る。

ここで気づかれなければ大丈夫だ。

ここで……。

空気が張り詰める。次の足音がするまで一瞬なはずなのに、何分にもじられる。

本當はこちらを覗いているのではないか。

次の一歩で急にこちらへ來るのではないか。

お願い——!

——ザッ、ザッ。

安堵して息を吐く。それが聞こえていたのではとぎくりとしたものの、足音は続いていた。そろそろ上に著く頃なので、僕は上から見ても見えない位置に移する。

そして、興味本位で一瞬見てしまった。

白い足首だった。か細くて、健康そうな白い足首だった。そこしか見えていない。靴は何を履いていたのか、服はどんな服を著ていたのかは見ていない。

怖くて仕方がないはずなんだけど、し満足があった。

——ザッ、ザッ。

あ・れ・がき出した。どうやら右手に向かっているようだ。……あれ。

右手は木しかないぞ。……僕の考えを読んで?

それとも縄垂らしもを見に……?

疑問が頭を駆け巡る。

その間も足音は聞こえる。

ええい、ままよ!

思い切ってお墓の影から飛び出し、あれの後をつけることにした。

ぶわっとあれの全貌が目にる。

そして仰天した。

……?

そこには肩くらいまである黒髪を垂らして、首からは縄を垂らして、死裝束を著た縄垂らしがいた。

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