《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》お通夜

そして次の日。今日はお通夜だった。朝から參拝して々準備して、茂さんが家にやってきてよく分からないことをずっと言っていた。僕には言っていることがよく分からないのだけど、誰かが今日は會食は無いと話していたのを覚えている。

午後、瀬戸さんが家にやってきた。

「今日はお通夜だったんだって?」

「はい。お母さんが夜伽をするって」

「……大変だね。香壽君も何かあったらお母さんを守れるようにね?」

「僕に守れるんですかね」

「頑張ればできるよ」

瀬戸さんが瞳をキラキラさせて笑う。

「それでさぁ……菫ちゃんを呼んできてくれないかな。また三人で話をしたいの」

「また僕の部屋でいいですか?」

「もちろん。お姉さん達にも挨拶した方がいいかな」

「喜ぶと思いますよ」

瀬戸さんは嬉しそうに「本當?」と笑うと、居間の方に行った。姉さん達の楽しそうな聲が聞こえる。

僕はスミレさんを探しに家を歩いていると、お母さんの部屋でじっとしているスミレさんを見つけた。

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なんとなく悩んでいるようだ。

「あ……香壽さん」

「何をしているんですか?」

「——この村のことを考えていました」

スミレさんが暗い表に微かに笑みを浮かべる。相変わらず、綺麗な紫の瞳をしていた。

「瀬戸さんが來ましたよ。また僕の部屋で三人で話をしたいって」

そうですか、とスミレさんはし驚いたように言った。

「お、ここにいたの、二人とも」

その聲に振り返ると、部屋の外に瀬戸さんが立っている。

「じゃあ僕の部屋に行きましょうか」

三人で僕の部屋へり、襖を閉める。座ってすぐ、瀬戸さんが口を開いた。

「紫首神社のことなんだけど」

頷くと、瀬戸さんは続ける。

「あ、私昨日そこに泊めてもらったんだよね。この村、宿とかも特には無いんだって? それでさ、桃園茂さんに會ってきたんだ。

それとなく神社の名前の由來を聞こうとしたんだけど、全然駄目。はぐらかされるって言うか……教えてくれないじかな。に関しても、『普通の神社と同じです』の一點張り」

「茂さん……、いい人だと、思うんですけどね」

僕がそう言うと、瀬戸さんは俯く。

「——そりゃあそうだよ。二人はそう思うよね」

その後何か言いたそうにして、飲み込んだように黙ると、一呼吸置いてまた口を開いた。

「どうして毎日參拝するのか聞いたらさ……『しなくては駄目なんです』だって。私はてっきり、この村に住む人としてどうとか……みたいな長ったらしい信仰の話をされるもんだと思ってた」

「普通は、しなくてもいいけど、神様への禮儀として、みたいなじなんですか?」

僕が言うと、瀬戸さんが頷く。

「そうそう、そんなじだよ、大の神社はね。でも『しなくては駄目』って言い方だと、まるで參拝しないと悪いことが起きるから參拝しているみたいでしょ」

そこまで言って、スミレさんがあっと聲を上げた。

「それが縄垂らしの怪談の元なんですかね?」

「そうかもね。今回の首吊りは縄垂らしに見せかけた殺人だけど、縄垂らしの怪談の由來は、村の人達が神社に參拝しないと悪いことが起きると思わせる為に、神社の関係者が作ったお話なのかも。

あるいは、元々神社が荒神信仰のように兇暴な何かを神として祀っている場合か。その何かに參拝しないと首を吊るされるから、あくまでも実話として、首を吊らせる妖怪縄垂らしが出來たのかもしれない。そして兇暴な何かを祀っている事実だけが語り継がれずに廃れて、怪談だけが殘った場合もあり得るね」

でも、と瀬戸さんは続ける。

「前者だった場合でも、そもそも參拝を必ずしないとある程度の災いが來ると思われているはず。それが人が死ぬほどのことでは無いにせよ、參拝しないと悪いことが起きるなんて、完全なる良い神様ではないだろうね」

急に僕の方を向かれる。

「それで、香壽君。香壽君は鍵を盜み、を確認したんだね?」

「はい」

「そして、鍵のかかっていた所には、墓石らしきがあったと。そして、そこには名前が掘ってあった」

今度は瀬戸さんの視線がスミレさんに向く。

「菫ちゃんと同姓同名、松園菫と」

それを聞いて、弾かれたようにスミレさんが話し出した。

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