《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》紫の目
「あの、ずっと、考えていたんですけど」
か細い綺麗な聲が、スミレさんの小さなから発せられる。
「どうして私は紫の目なんだろう……と。普通は黒い目をしているのに、私だけが紫だなんて、おかしいじゃないですか。
な、なら昔、この筋をもっと辿れば、原因となった何かがあると思うんです。例えば突然変異で紫の目になった人が嫁いで來たとか……。
でもそれだとどうしても、紫の目をした子供が災いをもたらすとされているのか分からない……。なら、何か忌み嫌われるような理由で、私のような子供が産まれるようになったんじゃないかと……。原因が誰にあったのか、どこにあったのかは分かりませんが、私にはその……」
言いにくそうに語尾を濁してしまった。
「その墓石に書いている『松園菫』に原因があるように思える?」
瀬戸さんが続けてくれる。
「は、はい。その人と、もう一人書いてあった……竹園家の人、でしたっけ。その人達が祟り神のように紫首神社で祀られていて、參拝しないと何か不幸があるから村人に參拝させる為に縄垂らしの怪談ができ……。
きっと祀ると言うことは、その人達によって何かが起きたから祀るんですよね。と言うことは、おそらく二人とも故人。祟りがあると言うことは、この村を恨んで死んだんじゃないでしょうか。殺されたか、自殺か——」
「つまり菫ちゃんは、その二人によって祟りのようなことがあったから、紫首神社が出來て、更に祟りの犠牲者を出さない為に縄垂らしの怪談ができて、紫の目をした子が産まれるのは死んだ二人の祟りが原因って言いたいの?」
スミレさんは頷く。
「祟りって言うのは……やっぱり現実にはあり得ないですかね」
「どうかなあ。菫ちゃんが言った通り、紫の目をした子が産まれるなんてあり得ないことだよ。外國人にだっていないんだから」
僕は思わずスミレさんと顔を見合わせた。
「そ、そうなんですか?」
僕が聞くと、さも普通のことかのように瀬戸さんが頷く。
「祟りかどうかは分からないけど、自然に紫の目をした子が産まれるなんて奇跡に等しいんじゃないかなあ。だからさ、村の人とかも、菫ちゃんが災いや不幸をもたらすのかどうかは半信半疑だろうけど、それでも紫の目をした子が産まれるなんてあり得ないから、やっぱりそうなんだって納得するんだと思うよ。災いを呼ぶ子なんて信じられないけど、本當に紫の目をしてるし……ってことで」
しの間、沈黙が流れた。
日が傾き始めて、空は橙から紫に移り変わろうとしている。
おもむろに、瀬戸さんが口を開いた。
「神が死んだ人なのかどうかは分からないけど……さ、普通あんなに分かりにくくするかなあ。神様なのにね。それにね、木を無視すればお墓のすぐ近くでしょう。あれじゃあまるで、お墓と同じ扱いだよ」
するとスミレさんが、ふっと顔を上げる。
「……峠」
「あっ」
瀬戸さんが驚いて聲を上げる。
「そうだ、なんで忘れてたんだろ、峠があるんだった」
二人は話が通じ合っているようだが、僕には全く分からない。
「峠がどうかしたんですか?」
瀬戸さんはいつもの微笑みを作ると、
「紫霊峠って、あるでしょう」
そう言った。
「は、はあ」
「峠はね、そこに祠が設けられていることが多くて、その祠は、悪いものがってくるのを防ぐ結界の役割をしていたりするの。ま、効果は分からないけど、魔除けみたいなもんだよ。
だから紫霊峠の向こうにお墓があるのは、お墓の方から村の方に悪いものがって來ないようにっておまじないかもしれない」
「それは神の話と関係があるんですか?」
瀬戸さんはキラキラした瞳をいつにも増して輝かせた。
「うん。だって、お墓だけなら、今まで同じように村で暮らしてた人達なんだから、わざわざ峠の向こうにする必要も無いからね。
荒神……祟り神かな……、神がかなり大変な代なのかもしれない。だから、神として祀った上で、峠の向こうに追いやってって來れないようにして、きっとあの大量のスミレの花畑も、作ったんだろうね。供える花として……」
それが本當なんだとしたら、よっぽど恐れていたんだ。
「本當に死んだ人が神なのかもしれないよ」
【書籍化】薬で幼くなったおかげで冷酷公爵様に拾われました―捨てられ聖女は錬金術師に戻ります―
【8月10日二巻発売!】 私、リズは聖女の役職についていた。 ある日、精霊に愛される聖女として、隣國に駆け落ちしたはずの異母妹アリアが戻ってきたせいで、私は追放、そして殺されそうになる。 魔王の秘薬で子供になり、別人のフリをして隣國へ逃げ込んだけど……。 拾ってくれたのが、冷酷公爵と呼ばれるディアーシュ様だった。 大人だとバレたら殺される! と怯えていた私に周囲の人は優しくしてくれる。 そんな中、この隣國で恐ろしいことが起っていると知った。 なんとアリアが「精霊がこの國からいなくなればいい」と言ったせいで、魔法まで使いにくくなっていたのだ。 私は恩返しのため、錬金術師に戻って公爵様達を助けようと思います。
8 73ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~
書籍化しました。小學館ガガガブックス様よりロメリア戦記のⅠ~Ⅲ巻が発売中です。 コミカライズしました。ロメリア戦記のコミックがBLADEコミックス様より発売中です。 漫畫アプリ、マンガドア様で見ることができますのでどうぞ。 「ロメ、いや、ロメリア伯爵令嬢。君とはもうやっていけない。君との婚約を破棄する。國に戻り次第別れよう」 アンリ王子にそう切り出されたのは、念願の魔王ゼルギスを打倒し、喜びの聲も収まらぬ時であった。 しかし王子たちは知らない。私には『恩寵』という奇跡の力があることを 過去に掲載したロメリア戦記~魔王を倒したら婚約破棄された~の再掲載版です 私の作品に対する、テキスト、畫像等の無斷転載・無斷使用を固く禁じます。 Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.
8 190【WEB版】身代わりの生贄だったはずの私、兇犬王子の愛に困惑中【書籍化】
11月11日アリアンローズ様より【書き下ろし2巻】発売! 伯爵家の長女ナディアは、家族から冷遇されていた。実母亡き後、父は後妻とその娘である義妹ジゼルを迎え入れ溺愛し、後妻はナディアを使用人以下の扱いをしていた。そんなとき義妹ジゼルに狂犬と呼ばれる恐ろしい王子の侍女になるよう、國から打診がきたが拒否。代わりにナディアが狂犬王子の生贄として行くことになった。そして噂通りの傲慢な態度の狂犬王子クロヴィスは、初対面からナディアを突き放すような命令をしてきた。ナディアはその命令を受け入れたことで、兇犬王子は彼女に興味を示して―― ◇カクヨム様でも掲載 ◇舊題『身代わりの生贄だったはずの私、狂犬王子の愛に困惑中』※狂犬→兇犬に変更
8 74マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
お遊びバンドがあっという間にメジャーデビュー、あれよあれよでトップアーティストの仲間入りを果たしてしまう。 主人公の入月勇志(イリヅキ ユウシ)は、そんな彗星の如く現れたバンド、Godly Place(ガッドリープレイス)のボーカル兼、ギターだが、もっぱら趣味はゲームやアニメで、平穏な生活を失いたくないがために顔出しはNGで突き通していく。 ボーカルの桐島歩美(キリシマアユミ)を始め、たくさんの女の子たちとドキドキワクワクなラブコメディになる予定。
8 140存在定義という神スキルが最強すぎて、異世界がイージー過ぎる。
高校生の主人公 ─── シンはその持つスキルを神に見込まれ、異世界へと転移することに。 シンが気が付いたのは森の中。そこには公爵家に生まれ育ったクリスティーナという少女がいた。 クリスティーナを助ける際に【存在定義】という名の神スキルを自分が持っていることに気付く。 そのスキルを駆使し、最強の力や仲間、財寶を手に入れたシン。 神に頼まれた事を行うのと一緒にした事は……のんびりな日常? ※基本のんびりと書いていきます。 目標は週一投稿!
8 84初心者がVRMMOをやります(仮)
親の頭があまりにも固いため、ゲームはおろか攜帯すらもっていない美玖(みく)。このたびめでたく高校一年生になりましたので、今まで母方祖母に預かっていてもらったお金でVRMMORPGをやることに決めました。 ただ、周囲との兼ね合い上、メジャーなものはやりたくない。親の目を盜んですることになるから、ヘッドギアは小さなもの。そして月額料金は発生せず、必要に応じて課金するもの、と色々條件を絞ったら、「TabTapS!」というゲームにたどり著いた。 ただ、このゲーム初心者がやるにはかなり厳しいもので……
8 198