《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》會食
僕は恐る恐る新品の服を著た。
著替え終わって居間に戻ると、姉さん達も皆綺麗な服に著替え終わっていた。
「あたしらはこれから化粧をするから、香壽はそこで待ってて。菫ちゃんも、しているのが分からない程度にはするよ」
花姉さんがそう言うので、僕はやることもなくうろうろしていた。
「あれ、千姉さん、その服汚れが……」
驚いたように振り返る千姉さんに、白い著を指差す。それに目を落とすと、ああ、これねと落ち著いた様子で言った。
「砂埃が付いてしまったんじゃないかしら。……もう、今著ている服のことかと思ったわ」
そう言うとそそくさと結姉さんの所へ行ってしまった。
しばらく座ってぼーっとしながら待っていると、皆支度が終わったのか一人、また一人とき始めた。
ちらりとスミレさんの橫顔が目にる。
か、可い……。
いつもの綺麗な顔が、なぜだかより一層綺麗に見えた。陶のようななめらかな白いに、膨らんだ頬を微かに桃にして、張したようにきゅっと閉じたがつやつやしている。
Advertisement
その中に、紫の瞳がとんでもなく映えていた。
「香壽、やっぱり菫ちゃんが好きなんでしょ」
後ろから急に聲をかけられて飛び上がる。
「ゆ、結姉さん……。びっくりさせないでよ」
僕がそう言うと、結姉さんはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「菫ちゃんも、きっと香壽のこと好きだよ。両思いなのは見え見えなのに、どうして好きって言わないの?」
返答に困って沈黙する。
「もー、黙んないでよぉ」
ぷくっと頬を膨らませて、拗ねられた。そこに千姉さんがやってきてなだめる。
「それぞれ事はあるわよねえ? それより、花姉さんと良樹さんよ。あの二人もお互い好き合っているのに一向に進展しないんだから。花姉さん、こういう時だけ気になっちゃって」
「そーそー、ほんとにね。いつもはあたし達のこと引っ張ってくれるのにさ。せっかく、松竹みたいに厳しいお見合いがないんだから、良樹さんと結婚しちゃえばいいんだよ」
二人が楽しそうに笑って話し始めてしまった。こうなると止まらない。
「こらこら二人とも、喋ってないで。もう松園家に行くよ。しっかり気を引き締めて、無禮を働かないように。向こうに嫌味を言われても言い返さないでね」
花姉さんが厳しい口調で言う。今日はお母さんは夜伽で眠れていないので、會食には行かないらしい。
なんとなく、いざ行くとなると皆に憂鬱な雰囲気が漂い始めた。それを誤魔化すように花姉さんが明るく振る舞っているように見える。
家を出て、生ぬるい風に當たったあたりから、皆無言だった。
緩やかな坂を歩き、明かりの消えた竹園家を通り過ぎると、魔除けに植えてある南天の赤い実が視界にる。魔除けのはずなのに、なんだか毒々しい合いに見えた。
そしてそれの奧、松園家は、竹園家と梅園家のどれよりも立派で大きかった。
「よーし、るよ」
花姉さんが扉を叩く。中で小さく鈴の音が鳴った。
張してを固まらせていると、すぐに家の中から足音がして、扉が開く。中から使用人と思われるが顔を出した。
「梅園家の皆様ですね。ご案致します」
玄関に招きれられ、靴をぐ。花姉さんを先頭にして結姉さん、千姉さん、僕、スミレさんと続いて案された部屋の中にった。
った途端、あまりの広さと嫌な視線に驚愕する。
上座には松園家のさん菜さん壯一郎さん、その次に竹園家の子さん、裕一さん裕二さん祐三さんだ。
「あらまあ……私達を待たせたのに謝罪も無しですか?」
さんが右の口角を異常に引き攣らせて笑う。
……これから、嫌な事が起きる気しかしない。
【書籍化】雑草聖女の逃亡~出自を馬鹿にされ殺されかけたので隣國に亡命します~【コミカライズ】
★2022.7.19 書籍化・コミカライズが決まりました★ 【短めのあらすじ】平民の孤児出身という事で能力は高いが馬鹿にされてきた聖女が、討伐遠征の最中により強い能力を持つ貴族出身の聖女に疎まれて殺されかけ、討伐に參加していた傭兵の青年(実は隣國の魔術師)に助けられて夫婦を偽裝して亡命するお話。 【長めのあらすじ】高い治癒能力から第二王子の有力な妃候補と目されているマイアは平民の孤児という出自から陰口を叩かれてきた。また、貴族のマナーや言葉遣いがなかなか身につかないマイアに対する第二王子の視線は冷たい。そんな彼女の狀況は、毎年恒例の魔蟲の遠征討伐に參加中に、より強い治癒能力を持つ大貴族出身の聖女ティアラが現れたことで一変する。第二王子に戀するティアラに疎まれ、彼女の信奉者によって殺されかけたマイアは討伐に參加していた傭兵の青年(実は隣國出身の魔術師で諜報員)に助けられ、彼の祖國である隣國への亡命を決意する。平民出身雑草聖女と身體強化魔術の使い手で物理で戦う魔術師の青年が夫婦と偽り旅をする中でゆっくりと距離を詰めていくお話。舞臺は魔力の源たる月から放たれる魔素により、巨大な蟲が跋扈する中世的な異世界です。
8 195クリフエッジシリーズ第三部:「砲艦戦隊出撃せよ」
第1回HJネット小説大賞1次通過、第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作品の続編‼️ 銀河系ペルセウス腕にあるアルビオン王國は宿敵ゾンファ共和國により謀略を仕掛けられた。 新任の中尉であったクリフォードは敵の謀略により孤立した戦闘指揮所で見事に指揮を執り、二倍近い戦力の敵艦隊を撃破する。 この功績により殊勲十字勲章を受勲し、僅か六ヶ月で大尉に昇進した。 公私ともに充実した毎日を過ごしていたが、彼の知らぬところで様々な陰謀、謀略が行われようとしていた…… 平穏な時を過ごし、彼は少佐に昇進後、初めての指揮艦を手に入れた。それは“浮き砲臺”と揶揄される砲艦レディバード125號だった…… ゾンファは自由星系國家連合のヤシマに侵攻を開始した。 アルビオン王國はゾンファの野望を打ち砕くべく、艦隊を進発させる。その中にレディバードの姿もあった。 アルビオンとゾンファは覇権を競うべく、激しい艦隊戦を繰り広げる…… 登場人物(年齢はSE4517年7月1日時點) ・クリフォード・C・コリングウッド少佐:砲艦レディバード125號の艦長、23歳 ・バートラム・オーウェル大尉:同副長、31歳 ・マリカ・ヒュアード中尉:同戦術士兼情報士、25歳 ・ラッセル・ダルトン機関少尉:同機関長、48歳 ・ハワード・リンドグレーン大將:第3艦隊司令官、50歳 ・エルマー・マイヤーズ中佐:第4砲艦戦隊司令、33歳 ・グレン・サクストン大將:キャメロット防衛艦隊司令長官、53歳 ・アデル・ハース中將:同総參謀長、46歳 ・ジークフリード・エルフィンストーン大將:第9艦隊司令官、51歳 ・ウーサー・ノースブルック伯爵:財務卿、50歳 ・ヴィヴィアン:クリフォードの妻、21歳 ・リチャード・ジョン・コリングウッド男爵:クリフォードの父、46歳 (ゾンファ共和國) ・マオ・チーガイ上將:ジュンツェン方面軍司令長官、52歳 ・ティン・ユアン上將:ヤシマ方面軍司令長官、53歳 ・ティエン・シャオクアン:國家統一黨書記長、49歳 ・フー・シャオガン上將:元ジュンツェン方面軍司令長官、58歳 ・ホアン・ゴングゥル上將:ヤシマ解放艦隊司令官、53歳 ・フェイ・ツーロン準將:ジュンツェン防衛艦隊分艦隊司令 45歳 (ヤシマ) ・カズタダ・キムラ:キョクジツグループ會長、58歳 ・タロウ・サイトウ少將:ヤシマ防衛艦隊第二艦隊副司令官、45歳
8 118T.T.S.
2166年。世界初のタイムマシン《TLJ-4300SH》の開発された。 だが、テロ組織“薔薇乃棘(エスピナス・デ・ロサス)”がこれを悪用し、対抗するICPOは“Time Trouble Shooters(通稱T.T.S.)”の立ち上げを宣言した。 T.T.S.內のチーム“ストレートフラッシュ”のNo.2い(かなはじめ)源とNo.3正岡絵美は、薔薇乃棘(エスピナス・デ・ロサス)の手引きで時間跳躍した違法時間跳躍者(クロックスミス)確保の為に時空を超えて奔走する。
8 168シグナル・オブ・デッド
エアガンとゾンビが大好きな高校生男子、湊音。今日はゾンビ好き仲間の斗哉・魁人と共にあのゾンビ洋畫の最新版を見に映畫館に來ていた。映畫の上映が終わり、次は何をしようかと模索する湊音。その時、湊音達の攜帯に悪夢が降り注ぐ………
8 54捻くれ者の俺は異世界を生き抜く
捻くれ者の雨宮優は、異世界転移に巻き込まれてしまう。異世界転移に巻き込まれた者達は皆強力なステータスやスキルを得ていたが、優の持つスキルは〈超回復〉だけだった。 何とかこの世界を生き抜くため、つくり笑顔で言葉巧みに人を欺き味方を増やしていく優。しかしその先で彼を待ち受けていたのは、まさに地獄であった。 主人公最強の異世界モノです。 暴力的な表現が含まれます。 評価、コメント頂けると勵みになります。 誤字脫字、矛盾點などの意見もお願いします。
8 184彼の名はドラキュラ~ルーマニア戦記~改訂版
大學の卒業旅行でルーマニアの史跡を訪れた俺はドラキュラの復活を目論むカルト宗教の男に殺されたはずだった……。しかし目覚めて見ればそこはなんと中世動亂の東歐。「ヴラド兄様……」えっ?もしかして俺ドラキュラですか??
8 85