《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》

「香壽君、スミレちゃん、ちょっといい?」

家を出て傘をさしていると、瀬戸さんに呼び止められた。

「……この前香壽君、お墓のところで縄垂らしを見たって言ってたでしょ」

「は、はい」

「それ、千ちゃんだと思うの」

えっ……。

「野辺送りのとき、私実はこっそり後をつけてて。……千ちゃんの足、ちょっとりむけてたんだよ。それと、著の裾のとこがちょっと汚れててね」

僕は昨日のことを思い出した。

確かに、砂埃のような汚れがついていた。

もしそうなら、昨日それを指摘した時のあの驚き方は、新品に汚れが付いてると勘違いしたからではなく、そこから僕に、隠している何かを暴かれることを恐れたからだったんじゃないか。

「香壽君が見た縄垂らしはの人だったんでしょ。それ、千ちゃんじゃないかなあ。考え方は二人と同じで、今日しか無いと思って鍵を盜みに行った。ただ香壽君と違ったのは、見・ら・れ・て・も・分・か・ら・な・い・よ・う・に・縄垂らしの格好をしたこと。

これが例えば竹園家の人達なら、が大きくてあの木には登れないだろうからね。り傷と著の汚れはおまけの証拠みたいなじ。

あとは、千ちゃんがその日學校を休む、または遅れていたのが分かれば、決定的だろうね」

いつの間にか階段のふもとまで來ていた。

「壯一郎さんの件だけど……。これで竹園家の線が濃くなった」

なぜなら壯一郎さんが亡くなった今、松園家と竹園家はれ替わるから。今の竹園家が松園家となり、一番の権力者となる。

「梅園徳郎さんが亡くなってから、二日。その間は殺人が起きていない。この間が計畫的なだった場合、考えられる理由はおそらく二つ。お通夜や葬儀で忙しくなるからか、人が死んですぐなので、犯人を嗅ぎ回っている警察に見つからないためか」

雨が降っていると言うのに、瀬戸さんの聲はハッキリと耳に屆いた。

「そしてこの間が計畫的なでは無く、突然起きた異常事態によるものだった場合。そしたら、まず思いつくのが、私が來たことかな」

「瀬戸さんがですか?」

そう聞くと、瀬戸さんはにっこり微笑む。

「だって、私は警察以外で、この事件を嗅ぎ回っている邪魔な人間でしょ? かと言って、他の場所から來た人間を殺す程深い機は、この村の人達には無い。だから、もし私を殺せば、邪・魔・だ・か・ら・殺・し・た・と周囲に言っているようなものだと思うの。

殺すほど私が邪魔だった理由を考えると、

一、次の標的は桃園茂だった。

二、次の標的は桃園鈴子だった。

三、犯人がその二人のうちどちらかだった。

と考えられる。今言った三つの理由があって、私を殺す訳にもいかない場合は、やむを得ず計畫を延期にしたのかもしれない。……ま、これは妄想でしかないんだけどね」

そう言って苦笑すると、黙ってしまった。

赤い鳥居が見える。紫首神社だ。

「……ねえ二人とも、二人はこの神社に、毎日……參拝してるんだよね?」

僕達は頷いた。毎日毎日、參拝している。

「そう。……それならいいんだけど」

お辭儀して鳥居を潛る前に、瀬戸さんは帰ってしまった。

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