《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》れ替わり

僕達が鳥居を潛ったとき、の人達が喧嘩をしているような聲が聞こえた。

まさか……松園家と竹園家の?

「あ……。香壽さん、あそこです、見てください」

スミレさんが遠くを指差す。

さんと子さんだ。あの二人が喧嘩なんて、まさか家のれ替わりのことじゃ……」

不安になって、スミレさんと二人で木の影に隠れて近くまで行き、様子を伺う事にした。雨音も酷いというのに、ここまでハッキリと聞こえてしまう。

「そんなこと……! わたくししも存じませんわ」

さんがぶ。

「知らないことは言い訳にはなりませんのよ。決まりは決まりです」

子さんが小馬鹿にしたような態度で言い、さんをますます怒らせている。

「茂さんも、なぜ子さんだけ贔屓にしてらっしゃるの? これじゃあいくら嫁がいないからと言って、ちょっと悪趣味すぎやしませんこと?」

二人をなだめようとする茂さんを、さんは馬鹿にした。どうやら、茂さんと子さんが不倫関係にあったから、茂さんが子さんを贔屓したと言いたいらしい。

もちろん、そんなことは無いんだけど……。

怒った素振りも見せず、茂さんは言う。

「そらあね、さん。急にれ替われだなんて無理でしょうから。別に、今日れ替われなんて言いませんよ。ただ子さんが言った通り、これはこの村の決・ま・り・なんです。いやぁ、事前に伝えておけば良かったんですが、これは完全に私の失態です。……申し訳ありません」

茂さんが頭を下げたので、さんは怒ったような絶したような表で行ってしまった。ずかずかと大きな歩幅で歩き、村人がそれを避けている。

流石に泣いてはいなかったが、浩一さんが亡くなったときより、はるかに落ち込んでいた。それほど壯一郎さんはを込めて育てられたんだろう。

……もっとも本人は深く育ったとは思えないし、さんの〝〟は、もっと歪んだものだったかもしれない。

でもなんだか、痛々しい。

人が死んでも自分達の地位が上がる事で満足気に微笑んでいる竹園家の人達が、僕はなんだか恐ろしかった。

「スミレさん……、參拝、しましょうか」

「はい」

嫌なを見てしまった。変に重苦しい空気の中、僕とスミレさんは、いつもと同じように、神・に・向・か・っ・て・手を合わせた。

ザーザー降る雨に、尚更憂鬱だった。

明るい時間帯のはずなのに暗い空が不気味で、僕達は足早に神社を離れた。

    人が読んでいる<首吊り死體が呪う村、痣のスミレの狂い咲き>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください