《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》桃園鈴子

姉さんと一緒に、僕は家を出た。

「あ、五時までには帰るよ」

「うん」

そういえば、結姉さんと二人きりで話したことはなかったかもしれない。

ぎこちない會話を紡いで、僕達は階段を上った。

「あれ、でも今日學校あるのに、鈴子ちゃんいるの?」

「茂さんが病院に行くでしょ。留守番でいるんだよ」

「そうなんだ……」

扉を叩くと、すぐにドタドタと向こうから足音がして、鈴子ちゃんが出てきた。

「こ、香壽くん……! あ、結ちゃんも、こんにちは」

「こんにちは」

明るい笑顔で鈴子ちゃんが笑う。でも、すぐに暗い表になってしまった。

「……菫ちゃん、死んじゃったんだね……。お、お母さんも……大変、なんでしょ? あっ、外にいないで上がって」

言われるままに僕達は靴をいで玄関に上がった。

そして、四時半頃。結姉さんが帰ろうと言い出す。もう時間なので、僕達は帰ることにした。

「……ね、ねぇ香壽くん、本當は菫ちゃんが嫁りするはずだったんでしょ? ……それって、どうなっちゃうの?」

「分かんないよ……。でも僕、もう人を好きになれる自信がないな」

鈴子ちゃんは悲しそうな顔をして、玄関まで見送ってくれた。

「香壽くん、それじゃあ、またね……」

「うん、また」

姿が見えなくなるまで、鈴子ちゃんは手を振ってくれた。

「ねえ香壽、香壽は鈴子ちゃんのこと、どう思ってるの?」

「どうって、友達だよ」

姉さんに聞かれて、そう返す。

「ふーん……」

そう言われたまま、家までずーっと無言で、僕達は歩いた。

「あ」

玄関扉を開けると、瀬戸さんと警察の人達が玄関で靴を履いているところだった。

「ちょっとしたら戻ってくるからね」

「は、はい……」

そう言ってぞろぞろ行ってしまう。僕はただ一言返事をするしかできなかった。

「部屋行ってて」

「え? あ、うん」

靴をいで家に上がると、結姉さんにそう言われる。結姉さんは、千姉さんと自分の部屋にっていった。

ちょっと張しているように見える。

やっぱり犯人を……捕まえにいくのかな。

茂さんだろうか。

自分の部屋に行こうかと思ったけど、やっぱりお母さんの部屋にる。スミレさんが寢ていた。

……もうずっと、起きることはない。

僕のの周りを、明なが覆っている気がする。世界と薄い皮一枚で隔たれて、全てが褪せて見える。それなのに、スミレさんだけはそのの中に、僕と一緒にいる気がして。

茂さんを、見たんですか。

囁いても、返事はない。

お母さんのことを思い出した。

おかしくなって、僕達のことを分からなくなってしまった姿。

いつか僕もおかしくなって、スミレさんが生きていると錯覚するようになるんじゃないか。

幸せ……かなあ。

そっちの方が。

お母さんが散らかしたに目をやる。

お父さんとの寫真があって、二人とも笑っていた。花姉さんが加わり、結姉さんと千姉さんが加わり。

幸せそうだった。

しばらく呆然と寫真を眺めていると、人の聲がしてきた。

瀬戸さんが帰ってきたようだ。

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