《首吊り死が呪う村、痣のスミレの狂い咲き》ニオイスミレの花言葉

瀬戸さんキラキラした瞳は、どこか悲しそうだった。

「えっと、続きね。れ替わりのなくなった松竹の家は、段々と立場がハッキリとしてくる。これまでは家を殘す為に必死に協力して、梅園家だけを下に見ていたじだったけど、れ替わりがなくなると共にその協力も薄れ、立場が上の家が下の家を見下すようになったの。

そして後継がいなくなれば家がれ替わるという掟は、徐々に忘れられ、その記録を殘していた桃園家だけがかに語り継いでいた。桃園家は言い出しっぺの責任として神社の管理を任されてたからね。

そしてだんだん村の不幸もなくなり、紫の目をした子が産まれるのも十年に一回あるかないかくらいになった。その子供が産まれても特に不幸が起きる訳でもなく、徐々に祟りは薄れてきているの。……まあでも、それでも梅園家に押しつけてたんだけどさ」

これは花姉さんも言っていたことだ。『不幸も厄も何もかも、立場の低い梅園家に押し付ける』と——。

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「祟りの効果って言うのかな。祀られたことによってか、それとも他の理由か、紫の目をした子供が産まれてくること以外は、もう殆ど祟りは効いていなかったんだよ。

でも……縄垂らしの怪談があったでしょ。容が事実かどうかは知らないけど、あれはやはり事実に基づいた怪談だったみたい」

「祟りを鎮めるために祀って參拝しているから、參拝を怠ると神……いや、心中した二人の怒りを買って殺されちゃうってことですか」

瀬戸さんは頷く。

「そうだよ。祟りの効果が薄れて、何も起きていない時でも、突如若者が首を吊って自殺した例がちらほらあった。きっと最初は神社の由來とかも知られてて、子供に參拝させるために言ってたんだろうね。それが段々神社の由來を知っている人が桃園家しかいなくなり、怪談の由來も分からなくなった——。そんなところなのかなあ。

心中した二人の祟りをまとめて縄垂らしと言うのなら、今の逢園村は縄垂らしを恐れながらも、縄垂らしを神として信仰しているじかな」

「ってことは、やっぱり僕が見た本當のは、お墓……。死人を祀っていたってことですよね」

若干開いた窓から、生暖かい風がってくる。それが僕に舐めるようにまとわりついて、気分が悪い。

「姉さん達には話したんですか?」

瀬戸さんは首を橫に振った。話していないのか。

「これからずっとあそこに住むんだよ。神様だと思って參拝するのは苦じゃないかもしれないけど、參拝を辭めれば絶対に死んでしまうと知れば途端に辛くなる。それにまだ、縄垂らしの怪談は効果を発揮してると思うよ。私はああいう噓か本當か分からない話の方が、絶対的な話よりも恐怖をじると思う。絶対と言ってしまえば、必ず確かめる人が出てくるからね」

「犠牲者はどうしても出てしまうんですか?」

うーん、と瀬戸さんは靜かに唸る。

「何をやったところで、零にすることはできないよ。それは逢園村の人達次第」

僕はそれに同調することしかできなかった。だって実際、言う通りだと思うから……。

「そういえば香壽君、ニオイスミレの花言葉って知ってる?」

今度は僕が首を橫に振った。

「高尚、奧ゆかしい、、控えたしさ……だって。ヨーロッパでは葬儀の際に墓石に撒く習慣があったらしい。聖母マリアの控えめさと誠実さを象徴する花だからなんだって。……素敵な花だよね。

この話を知っててなのか、偶然なのか——。せめてあのニオイスミレの花畑は、怖がる故の防衛策じゃなきゃいいなと思う。そうじゃなきゃ、ずっと祟りが続くのも嫌だけど、亡くなった二人が……浮かばれないよね」

僕は軽く頷いて、下を向いて、また顔を上げる。瀬戸さんの目を見た。

「……やっぱり、呪われていたんですよね。逢園村は。確かにどこか変なじがすると思いましたけど……本當に呪われていただなんて」

「うん……」

瀬戸さんは笑みを浮かべながらも、困ったような顔をしていた。

それからしばらく他のないことを話していると、もうすぐ隣の村に著くと言われた。そこから乗り換えて、峠を越えればいいらしい。瀬戸さん曰く、そこにも祠があると言うのだ。

僕は鞄の取っ手をぎゅっと握りしめる。

……そう言えば、今祐三さんはどこにいるんだろうなあ。

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