《Fog HOTEL》第一章 Hotel 〜1〜
私は重くなった足を引きずりながら、
目の前の建を見つめていた。
その年代をじさせる堂々とした佇まいに震いしてしまう
「これは・・・ホテル・・・?」
私は冷えたをさすりながら、その建のり口を探した。
私は友達と計畫を立てたこのキャンプを楽しみにしていた。
日が傾きキャンプ場がヒグラシの心地よい音と幻想的なオレンジに包まれた頃
私は焚火に使う木材を調達するため、一人山にった。
當初は、日が沈む前に戻る予定が突然の雷雨で方向覚を失い
一人山の中を彷徨う事になってしまったのだ。
どれぐらいの時間を歩き続けただろうか
何かに導かれるように歩き続け
最後のオレンジが暗闇に覆われる頃日
木々の間から私を救うかの如く暖かなが覗いた。
そうこのホテルのが・・・・。
私はホテルのり口に辿り著いた瞬間
肩に重く得のしれない何かがのしかかるような不安をじた。
その不安から逃れようと
自然にホテルを去ろうと振り返ると
今まで歩いて來たはずの森がついに暗闇にのみこまれ森に引き返すのを阻止するかのように木々がき不気味なうなり聲をあげた。
私は唾を飲み込み、覚悟を決めると
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もう一度だけホテルを見つめ力強く足を進めた。
今の狀況から助かるために
この異様な雰囲気が漂うホテルを選んだのだった。
大きく重い扉は嫌な音をたてながらゆっくりと開いた。やっとの思いで中にいると
私は目に飛び込んできたその景に息を呑んだ。
真っ赤にどこまでも引き詰められた絨毯
高価であろうと思える甲冑の飾りや
裝飾が飾られているキャンドルスタンド
壁も大きな絵畫で飾られていた。
場違いな場所に迷い込んだとじながら
「すみませ~ん」
聲も自然に小さくなってしまう
誰の返事も聞こえず薄暗い部屋の中を歩き奧へと進む
するとある事に気が付いた。
このホテルの明かりが、今の時代では考えられないが蠟燭で燈されているのだった。
見渡す裝飾品もそうだが過去にタイムスリップしたような、不思議な空気を漂わしていた。
ロビー前に辿り著くと呼び鈴を鳴らしてみる。の奧から湧き出る不安を必死で抑えながら待つ。
しかし、どれだけの時間が経ったのだろか?
誰も現れず、人の気配がじられない
明かりは燈っているのに、生きたモノの気配がじずシーンと靜まり返っている恐怖に震いすると
「ようこそいらっしゃいませ。
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お客様、當ホテルをご利用ですか?」
突如、私の前に白の紳士が優しく微笑みながらロビーの前に立っていたのだ。
彼がいつ現れたのか分からず
揺している私の顔を見ながら
「お客様、失禮でございますが……
ご予約の方では座いませんね」
手元にある帳簿を見てし困った顔をした。
「あっ、私は山で迷ってしまって・・・・」
私の言葉に優しく頷きながら彼は続けて話を進めた
「それは、大変で座いましたね・・・」
彼の雰囲気も言葉も優しいのだが何故か漠然とした不安とともに私は彼に恐怖をじていた。
その時だった、私の背後から
「あれ、優、飛びりのお客様か?」
快活さをじさせる男の人が聲をかけてきた。
「恵吾、山で迷われたそうだ・・・・」
彼の言葉に、恵吾と呼ばれた男は納得した顔をしながら
「だから、そんな酷いカッコをしているのですね」
そう言いながらロビーにって行く
彼の言葉に私は自分の服を見ると
先ほどの雷雨のせいで嫌にに張り付いた服に泥や葉がへばりついていたのだ。
突然、恥ずかしくなった私は急いで汚れを払いながら
「あっ、あのぉ・・電話を貸して頂けないでしょうか?」
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彼らに頼みごとをしながら手が微かに震えているのを抑えられなかった
そんな私を見かしているのか、彼らはクスッと笑うと
「晝間の雷雨のせいで、當ホテルの電話線が切れてしまい今は復舊を待っている狀態なのです」
そう告げると靜かに頭を下げた。
「なら、貴方の攜帯を貸して頂けないでしょうか?私、ここに來るまでに落としてしまったようで」
必死に頼む私に、優と呼ばれた彼は冷たい瞳を見せ
「ここは山奧のために、電波は來ておりません。ゆえに、我々は攜帯を所持しておりません」
その冷たい言葉に私は崩れ落ちるように力が抜けてしまい床に座り込んでしまった。
「・・・そ、そんな・・・」
乾いてない服が冷えたを余計に冷やして行くのをじ
助けを求めた先でけた絶に戸っていた。
その時だった。
「なぁ、俺さ、腹がそろそろ限界やねんけど・・・」
怠そうに言うとしイライラしているのか暴に頭を掻き一人の男が現れた。
しかし、床に座り込んでいる私を見るなり
「あ、足りそうやわ・・・」
意味深にニヤリと笑ったのだ。
「零士 お客様の前で失禮だぞ!」
優は一喝するように言うと
ロビーからゆっくり出て來き私の前に立ち止まった。
「お客様、こちらからのご提案なのですが・・・」
落ち著いた聲で話しかけてきた。
彼の言葉で私の顔が上がるのを確認すると
「今夜は當館でお休みになり
明日の復舊を待って
ご連絡をされてはいかかでしょうか?」
彼の提案に私の心に希が生まれる。
「えっ、良いのですか?でも私、あまり持ち合わせがなくって・・・・」
そう言いながら、慌てて鞄を開けお財布の中を確認しようとすると
優と呼ばれていた彼が、私の鞄に手を添えた。
驚き彼の顔を見ると
「大丈夫ですよ、助け合いってことでね!」
恵吾と呼ばれた彼が優しく微笑みながら言うと優もあわせて微笑んだ。
彼らの気持ちと好意に私の心が揺していた。
「あと・・・・その様子では、も冷えているでしょう?調を崩しても大変ですし・・・」
零士と呼ばれた彼も、私に微笑みながら言う。
「本當に良いのですか?」
私は藁にも縋るすがる思いだった。
先ほど歩いて來て、家など一軒も見てないのだからここを出れば確実に、野宿だろう・・・・
しかし・・・・・
何故か、私の心がざわついているのだ
「どうか今夜は、當館でお過ごしください」
そう言いながら零士は微笑んでみせる。
その時、その後ろに下がって行った優が
口角を下品に上げて笑ったのを私は見逃さなかった。
外の闇に出ていく勇気のない私は
力なくゆっくりと立ち上がると
「お金は帰ってから、必ずお支払いしますので今夜はどうぞよろしくお願いいたします」
その言葉を聞いた瞬間、三人は同時に頭を下げ
「Fog Hotelにようこそ。お客様へ最高のおもてなしをさせて頂きます。」
聲をあわせて言った。
驚いている私の前で優は綺麗な右腕を上げると指をパッチと鳴らした。
その音と同時に私の背後から
「お部屋にご案させて頂きます。お荷をどうぞ。」
いつ現れたのかも分からない、背の低い男の人が私の荷を預かろうと手をだして待っていた。
またしても、気配がじられない従業員に驚きながらその男の人に荷を渡す。
「青空、特別室で・・・・」
優は背の低い彼に言うと、靜かに頷いた。
「ちょっと待ってください。そんな高級なお部屋では、お支払いできないので普通のお部屋に変えてください!」
慌てて言う私に、優は靜かな聲で
「これも、何かの縁です。お代は通常のお部屋でかまいませんので我々の歓迎の気持ちと思って頂きごゆっくりお過ごしくださいませ」
本來なら、嬉しいはずの彼の言葉
何故か、私は納得できずにいたが
「お客様、こちらでございます・・・」
青空は言うなり部屋へ案するために歩き出した。私は慌てて彼の後を追う。
そう、私は知らなかったのだ。
これから起こる恐ろしい夜を・・・。
運命に苦しめられることを・・・・。
私の未來がこのホテルで決まることを・・・・・。
優は、青空が客を連れて行く後ろ姿を思案顔で見送っていた。
頭脳明晰なリーダー的存在であり、今後の計畫を綿に組み立てていたのである。
二人の姿が消えたのを確認するとカウンター奧に隠された部屋へと進んだ。
その部屋は薄暗く、本棚や従業員の休憩に使われるソファーが
無造作に並べられていただけで、窓はないが不思議と圧迫をじさせない。
優が靜かにその部屋の扉を開くと5人の男がいた。
奧のほうに隠されたように置かれた長ソファーに、寢ている男が
靜かに目を開き
「あの客をけれたんや・・・・」
とポツリ言葉をこぼした。
その言葉を聞き優は小さく笑った
「、寢てなかったのか?
客が居ないと寢ているお前が起きているのは珍しいな」
と呼ばれた男も笑いながら
「不吉な臭いがしていたら、目も覚めてしまう・・・・のんきに寢てはられないだろ?」
の鋭いはそう言いながら鼻をこすった。
優はゆっくりと部屋の中を歩き
空いている場所のソファーに腰を掛けると
「そろそろ、みんなも限界のタイムリミットだよな」
優の言葉に、零士が口元でる歯を見せながら
「たまらん、あの香り・・・・
今すぐにでも喰らいたい・・・・」
客を思い出すかのように呟くと
寢ていたがを起こし
「あのから、嫌なじがするのは
俺だけなのか?誰も何もじないのか?」
そう仲間に問いかけた
「、お前もじているのだな・・・
何かが起こりそうな予を・・・・」
と優は顔を見合わすと、どちらともでなく頷いた
互いに理解が出來たという合図のように
しかし、壁を叩く大きな音と共に
「どういう事か、ちゃんと説明しろや!」
理解の出來ない零士は怒りをあらわに怒鳴り散らした
こうした零士の衝的な行をなだめるのが恵吾であり、
仲間から相談役として認められている所以である。
二人を睨みつけるが、零士をなだめようと恵吾は零士の肩を軽く叩きながら
「まぁ、まぁ、落ち著けって・・・・
今夜の事は今までなかったことやから
誰もが驚いて戸っているのと違うのかな?
俺はそう思うけどな」
その言葉に零士は大きなため息をついた。
その音を聞き男たちは小さく笑った。
しばらくの間、誰の口を開かなかった。
無言の空気が流れ、誰もが今夜の事を考えていた時だった。
「俺は、審判の日が來た気がする・・・・」
の発言にざわめきが起こった。
「審判か・・・・・」
優は考えるように言った。
すると部屋の隅の暗がりに立っていて今まで何も発言しなかった男が
ゆっくりと歩み寄って來た。
「このの俺たちの存在と行為の審判だね・・・」
そう寂しそうに自分の右手をに當てながら仲間に言った
「歩夢もここに居たのか・・・・
相変わらず、存在を消すのが上手いな・・・」
優は聲をかけて來た歩夢に尋ねると
誰よりも信心深い歩夢は無言で微笑んで見せた。
「その審判って事は・・・
僕たちの存在が消えてしまうってことだよね・・・」
歩夢が出てきた暗闇から後を追うようにもう一人の男が現れた。
しかし彼は不安げでみんなにすがるような表だった。
そして、仲間の言葉に恐怖しを震えさせていた。
「快、笑わせるなって!俺らがなんで消えなアカンねん」
零士は吐き捨てるように言う
心の優しい快は瞳を伏せながら立っている、どう答えて良いか分からないのだろう
「それは、俺らが罪人だから・・・・
この日が來るのを誰もが知っていたはず?」
は何故かこの狀況が楽しいのかのように笑いながら仲間に言う。
そんなの前に恵吾は立つと
「俺は過敏にならなくても良いと思う!
ただの気のせいってかも知れないし、あの客は偶然に來ただけかも知れないだろ?
今の段階では答えはみつからないだろ?」
この場の空気を換えようと恵吾が仲間の前で明るく振る舞いながら説得をすると
「答えは分からないが・・・・
まぁ、いずれは來ると思っているし
それが今なのか、まだ未來なのか・・・・」
優は考え込むように呟いた
「もし、それが今だったら・・・・僕たちは、もうここでは暮らせないね
今すぐにでも逃げ出した方がいいのかも」
不安が発しそうな快に恵吾は寄り添うように並び、背中をさすると
「もう、話はここまでで終わり・・・
このままでは埒が明かないだろ?」
恵吾の言葉を、Yesの言葉の代わりに口をつぐんだ。
しかし、零士は頭を掻きながら
「なら、いつもの様にすればええだけやん
それで、何もかも問題は解決やん」
零士の言葉に男たちの中にざわめきが起こる
その中で優だけは嬉しそうに笑うと
「零士の言う通りかもな・・・・
もし審判の日ならそれに挑むとするか・・・・」
その言葉と同時に、彼の瞳が赤くを放ったのだ。
そう獲を見つけた獣の瞳のように・・・・・。
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