《Fog HOTEL》第一章 Hotel ~2~

青空と私は長い廊下の奧へ奧へと歩いていった。

いくつも部屋があるのに、扉は重く閉められており

まるで下界を拒むかのように反対側の窓には厚いカーテンがきっちりと閉められている。

そして、ホテルだというのに他の客の姿すら見えないのだ。

「今日は、もしかしてお休みの日だったのですか?」

私は疑問に思った謎を解こうとカマをかけるように青空に尋ねた

青空はし振り返ると

ムードメーカーをじさせるその笑顔でニッコリと微笑みながら

「當館は、お一人のお客様をおもてなしするシステムとなっております。

その変わったサービスで、當館はし有名になっているのですよ」

彼のまださが殘る年のような笑顔に私の方もつられて笑顔になる

「そうなのですね・・・私は無知で

そんな事も知らずに有名なホテルのお世話になってしまって」

申し訳なさげに言う私に

「今日は予約のってないラッキーな時にお越し下さいましたね。

もし、他のお客様がいらっしゃればお斷りしていたかも知れないので

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本當に良かったと思いますよ」

青空はそう言うと、前を向き案の続きを始めた。

私は青空の言葉を聞いて、ふと浮かんだ疑問を反芻していた。

本當にラッキーだったのか?

道の分からない山を彷徨い歩き

闇に呑みこまれる前にホテルに辿り著いた。

この特別のホテルに他のお客がいない・・・

そう考えると彼の言う通りかもしれない・・・・

「神様、本當にありがとうございます・・・」

私は手を組むと靜かに神に祈りを捧げた

その瞬間、前を歩いていた青空のがビクッといた

その様子を怪訝に思った私は

「あのぉ、どうかされましたか?」

私が聲を掛けた事に彼は焦ったように

「いやぁ、廊下で神にお祈りを捧げる方をあまりお見かけしたことがないもので・・・」

人前で祈ったことが急に恥ずかしくなった私は顔が赤くなった。

「あっ、すみません・・・・

私は、実はクリスチャンなので・・・

今時、変ですよね、神に祈るって・・・」

そう青空に謝ると

「いえ、私も失禮なことを言いまして・・・

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そして、お客様こちらがお部屋で座います」

青空は廊下の一番奧の部屋の前に立ち止まり頭を下げると

靜かにその部屋の扉を開けた。

その部屋も、まるで絵本の中に飛び込み、お姫様になったかのような

高級な家や調度品で飾られており、中央には大きなベッドが備え付けられていた。

その部屋で、何よりも目を引いたのは大きく飾られていた聖母マリアの絵だった。

私の足は自然にその絵畫に向かって行った。

「これは、マリア様?」

そう絵を見ながら呟くと

青空は、私の荷をソファーの橫に置いていた

「おっしゃる通りです。當館は聖母マリアの絵を収集しております。

それでは、お客様ごゆっくりとお過ごし下さいませ」

靜かな聲で頭を下げると部屋から足早に去ってしまった。

部屋に一人殘された私はどうして良いか分からず困していた。

高級なソファーに腰をかけるのさえびくついてしまう。

今の自分がこれ程の高級な場所に似つかわしくないこともわかっていたし、

なんだか気が引けてしまう。

非日常に浸かりたい反面、心の奧で居心地の悪さをじていた。

「私は、明日にはちゃんと帰れるよね・・・」

自分に言い聞かせるように呟いた。

どのぐらいの時間が過ぎただろか・・・

し落ち著いた頃、ゆっくりと部屋を見渡してみると

この部屋の窓にも重いカーテンが外の景を閉ざしていた。

そして、この部屋のしつらえもアンティーク調で統一されている。

なんだか一見アンバランスにとれているかのようにじるが、妙に覚を狂う。

このホテルは一何なのだろ?

これで有名なのか・・・

んな事が一度に起きて、私の頭が発しかけた時だった

突然、部屋にノックの音が響き心臓が止まりそうになった。

私が息を呑みながら扉に注目をしていると

ゆっくりと扉が開くと、背の高い落ち著いたじの男が

目を伏せがちにって來た。

「お客様、ご夕食のご準備が整いましたのでお迎えに參りました。」

歩夢の落ち著き払ったトーンの聲を聞いた瞬間

の奧から切ない気持ちと同時に心臓が驚くほど速くき出し

顔が熱くなっているのをじたのだ。

私は、自分の制できない気持ちに戸ったが

歩夢は何も言わず私の次の行を待つように黙って立っていた。

私は自分の気持ちを悟られないように

大きく深呼吸し心を落ち著けると

「ありがとうございます・・・・」

そう歩夢にお禮を言い立ち上がると

彼を待たさないように扉の方に進もうとした時だった

青空が置いてくれた、私の荷に足が躓きのバランスを崩してしまい

彼に向って転げたのだ。

「危ない!」

私の目の前で歩夢はふわぁっと空気のように駆け出すと

間一髪で力強くけ止めた。

彼とれた瞬間、私の心臓はドクンと大きく音をたてた。

「す、すいません・・・・」

焦って謝る私だが、指が彼の腕をしっかりと摑もうとして力が

その瞬間、ある事を知り驚いてしまった。

歩夢のが氷のように冷たいのだ。

服の上からでも分かるぐらいに・・・・

恐怖の面持ちで歩夢を見ると、慌てたように私の指を外し側から離れた。

私には信じられなかった。

彼のの冷たさをじた手を見つめていると

「ご夕食の場まで案を致しますので

足元にはくれぐれもお気をつけください。」

そう、何事もなかったかのように言うと

扉を開けて、私を案し始めた。

私は気まずかった。

このホテルの雰囲気、彼のの冷たさ・・・

何もかも異常だとじながら

前を歩いている男の人の背中をみながら

ときめいている自分を確信していた。

ひとめぼれだろう・・・・

一瞬で心を奪われた事も私の心は複雑になっていた。

ホテルの廊下には私たちの歩く足音だけが聞こえていた。

私の気持ちを知らない歩夢は目的地に向かい歩みを進めている。

彼の背中を見つめ、自分の気持ちを整理しようとしていると

「本當に綺麗な首をしていますね・・・」

彼はし振り向きながら私に言った。

「えっ」

歩夢は焦るように前を向きなおし、口に手をあてると

「いえ、変な事を言いまして失禮しました。」

目の前の歩夢は照れているのだろか?

そんな彼を見て、私の張が自然に溶け笑ってしまった。

私の笑い聲を聞いた歩夢は驚いた顔を見せたが

直ぐに照れたように笑った。

その出來事に私は嬉しくなり

「首を褒められたのなんて初めてです」

私の言葉に、進めていた足を止めると振り返り頭を下げると

「本當にすみません、軽率でした・・・・」

歩夢は何度も頭を下げた。

許されるまで、彼は謝り続けるのだろか?

私はそうじながら

「いえいえ、そんなに謝らないで下さい。

首は褒められた事はないですが

このロザリオは褒められたことはあるんですよ」

そう言うと首に掛けていたロザリオのネックレスを

彼に見せようと出したその瞬間だった

「くっ」

歩夢は目を見開いたかと思うと、苦しそうに目をつぶると

前を向き何事もなかったかのように歩き出した

「本當に綺麗なロザリオですね・・・」

背中を向けながらそれだけを言う

その態度が変だとじたのだが

ときめいている心で私は浮ついていた

「これは、代々け継がれているロザリオで、私の寶なんですよ」

一人喜んでいる目の前の背中は冷たさに占拠されているのだろか

気持ちが高ぶっているのは私だけなのだと悟った瞬間

悲しい気持ちに心が埋め盡くされた。

「すみません、勝手にベラベラと話してしまって・・・」

そう歩夢に謝るとロザリオをに閉まった。

彼は、しだけ頭を下げるだけで振り返ってもくれなかった。

無言で歩く歩夢の背中を見つめながら

自分の思いに何故か悲しくじながら歩いていると

歩夢はある扉の前で立ち止まると

「お客様、著きましたよ。どうぞこちらに・・・」

今までに見せたことのない笑顔で私をエスコートしたのだった。

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