《Fog HOTEL》第一章 Hotel~3~

歩夢以外の6人は、恵吾が先頭となって夕食作りを進めていた。

料理のいい匂いで満たされている廚房で、一人てきぱきとき回っていた恵吾が

「そこの皿をこっちに持ってきてくれないか?」

恵吾の問いかけに、皿の側に居た青空が、手に取りながら突然何かを思い出したように

「そうや、さっきお客が突然後ろで祈りだした事には本當に驚いたわ」

青空はそう言いながら恵吾に渡す。

皆がそれぞれの仕事をしている中、臺所の隅でひとり考えにふけっているかのように

ただ野菜を握っているだけの優が反応した。

「祈る?何があって祈りだした?」

優の問いかけに、青空は恵吾のきを見ながら棚からお皿を出すと

「たしか・・・・俺がラッキーやなって言って・・・」

青空は、その時に起こった出來事を思い出しながらそらんじると聞いていたは笑い

「相変わらず、唐突な會話をするなお前は」

そのの言葉を聞くと、青空はムッとしたが何かを思い出したかのように

「あっ、あとクリスチャンって言っていたかな・・・」

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青空の言葉に、皆の空気がどよめきに変わった。

「クリスチャンって、やっぱり審判の日だった・・」

一人焦りながら言う快だったが、料理の手を止めずに恵吾が

「快、さっきも言ったがあんまり心配しないほうがいい

今はやるべき事をする方がいいと思う」

快を元気にさせるように言うとは何かをじるかのように

「やはり、今回の客は何かあると思った方がいい・・・」

そう言って何かをじたようにニヤニヤした。

今まで考え込んでいた優は考え込みながら

「クリスチャンが偶然にここに・・・・

たしか、前にもそんな事が・・・・」

優は何かを思い出そうとしていた。

「優くんは、あの客に見覚えがあるんや?

ホンマ、隅に置けないよなぁ」

零士は嬉しそうに、からかい始めたが優はを親指ででながら

「いや、覚えはないが・・・・

以前もこんな事があったような・・・

でも、どうしても記憶がハッキリとしない・・・」

そう言うと優は口を噤んだ。

しかし、その言葉の意味を分かっているは優だけでは無かった

誰のにも思い出せない記憶というのが黒く渦巻いていたのだ。

その時、お客の案を終えた歩夢が皆の前に現れた。

「連れて來たので、いつ料理を運んでも大丈夫だよ」

そう言いながら、仲間の雰囲気がいつものそれと異なっていることに気が付いた。

「どうしたの?何かあった・・・」

そう尋ねると、零士が頭を掻きながら答え始めた。

「あの客、クリスチャンやって・・・

だから、皆で頭を悩ませてるってわけ・・・」

零士の言葉を聞いて、歩夢は悲しいげに瞳を伏せると

「そう彼はロザリオをも持っているから

ターゲットから外した方が良いと思う・・・」

歩夢の言葉には自分の勘が當たり嬉しいのか喜びながら

「ロザリオって、予想以上なモノを持っていたな・・・」

喜んでいるに、快はキッと睨むと

「なぜ笑えるの!クリスチャンがこんな近くに居る。それだけでも恐ろしいのに、僕たちが手を出せないロザリオを持っているのだよ!」

そう怒鳴ると、恐怖に耐えられずガタガタと震え始めた。

そんな、が定まらない快に青空がそっと寄り添うと

「快、大丈夫やって・・・

皆が居るのだから何とかなると思うで・・・俺らは一人じゃないからな」

そう優しくめた。

その言葉に快は震えるを必死で抑えながら小さく頷いた。

すると、やっと料理が出來上がり、ホッとした顔を見せた恵吾が

「本當に、口ばっかりかして誰一人手伝わん奴らだな・・・

まったく、ロザリオがあって手がだせないなら

それを失くせば解決すると思うけどな?」

そう言いながら、出來上がった料理に手をかざして

仲間に見せた。

「はいはい、俺らはサボっていましたよ!

だけどロザリオがある限り、俺らには手出しできん!

ホンマに忌々しいことや!」

そう零士は言い放つとイライラしたように

仲間のから外れて去って行ってしまった。

「そっか・・・ロザリオがあったら手が出せないなら・・・

それを失くせば問題はないか・・・・」

そう言いながら何かを思いついたのか優は妖艶の笑みを見せると

「零士は最後の最後までサボるつもりみたいやな

で、優は何か作戦を思いついたようやな」

そう言って優の顔を見た。

「あぁ・・・もし、審判であってもそうでなくても、俺らはいつものようにすれば良いだけって事や・・・」

そう言いうと、出來上がった料理を持ち快に差し出した。

「だから、客に悟らせないように仕事を・・・・」

差し出された快は震える手で皿をけ取るとこどものように靜かに頷き、部屋を出て行った。

その姿を見ていた優が笑いながら

「こんな俺らにも、神のご加護が我々にもありますように・・・」

嫌味を言うように歩いて行く快の背中に呟いたのだった。

快は、皿を持ちながら震える自分を必死に抑えていた。

今、自分の前に見える客の背にも恐怖をじていた。凍る息を整えながら客に近づく

「お客様、お待たせいたしました。突然の事でたいした料理は出來ませんので

お口にあいますかどうか・・・・」

自分の奧から湧き上がる恐怖を隠すために教科書通りの言葉を並べた。

「本當にありがとうございます・・・

ご迷をお掛けして、すみませんでした・・・」

目の前の客は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔も快の瞳には映っていなかった。

恐怖で気持ちまでもが凍りついているかのように

客は嬉しそうに、料理を口にれると

「お、味しい・・・こんな、味しものは食べた事はないです!」

その言葉を聞いて、快はホッとしていた。

これで仲間の所に帰れるのだから自分を恐怖におとしめているモノの側から離れられるから

「それは、本當に良かったです・・・・」

快は作り笑いでその場を誤魔化し靜かに頭を一禮すると、足早に去って行った。

そして、私は彼らの企みもこの後に起こる恐怖を全く知らず、目の前の幸福に謝しながら過ごしていたのだった。

そう、神のご加護のように・・・・。

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