《Fog HOTEL》第二章 正 ~1~

私は夢の様な時間を過ごし、心の底から満足していた。この様に充足した時間を過ごしたのはいつ以來だったのだろう・・・

私の人生にこれほどまでの幸福はなかったのかも知れない、そんな事に思いをはせながらようやく部屋に戻ったのも深夜になっていただろか・・・部屋には時計がなく、時間の覚を狂わせていた。不思議な気分の中に私は溺れていたのだった。

「有名なホテルってこう言う事なのかもしれないな・・・」

私はボソッと呟くと、突然の眠気にあくびがでた。

「このまま寢たいけど、ダンスで汗をかいちゃったから

シャワーを浴びないと寢れないなぁ・・・」

眠たさに重くなっていくまぶたとを引きずりながらシャワーを浴びに行く

「こんな素敵なホテルに來られて本當に良かった神様に謝しております」

そう言いながらし冷えたを溫めるようにシャワーを浴び続けていた。

そんな私は知らなかったのだ。ある影が闇に紛れてうごめいていたことを

ホテルの特別部屋の前に男たち集まっていた。

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は、食事とダンスで俺たちに気を許したから、今回も楽勝」

優は冷靜な聲で仲間に伝えた。

「本當に頭はいいよなぁ、シャワーを浴びている時にはロザリオを外すって」

青空は心していると

「二人の話を聞いて、そんな大切なモノを水にはつけないと思ってな

それに、神と真正面から勝負する必要はない」

その優の言葉を聞いて、も笑いながら

の警戒心を取るための茶番のダンスだったのか・・・」

誰もの頭の中で時を忘れ、儚く舞う蝶を思い出した。

優にさせられていることがやっと理解できたのだった。

「警戒心のある獲ほど、狩りをすると失敗率は上がるからな・・・・」

張した面持ちで優は言うと

「さて、そろそろ行こうか?シャワーが終わられたら作戦も失敗になるやろ?」

恵吾が皆を急き立てるように言うと男たちは靜かに頷きき始めた。

優とと青空は、にバレないように所に歩みを進めた。まだの溫もりが殘る服の前に立つと

「これか・・・・・」

服の上に置かれていたロザリオを見た。ロザリオにらないようにネックレスの部分をつまんだ優の指に熱が伝わったのか歯を食いしばり痛みに耐えながら青空が用意していた手のひらに収まる鉄製の箱を開けると、優は何も言わずその箱にロザリオを放り込む。青空は急いで蓋を閉める。

「傷は大丈夫なのか?」

が言うと。優は焼きただれた指先を自分の目の前で確認する。

「これぐらいの傷、俺達には痛くもくもない・・・」

そう告げると、青空から鉄の箱をけ取り自分のに閉まった。

「作戦は功やな、これで安心やな!」

そう青空は嬉しそうに言うと、男三人は所から足早に去って行った。

彼らの行を知らない私は、シャワー室から出るとまだ水分をたっぷり含んだにバスローブを巻き付けベッドに座って、大きなため息をついた。

「明日には、帰れるかなぁ・・・・みんな心配してるかなぁ・・・」

深夜のせいだろか、突然迫りくる寂しさに襲われて不安を口にだした時だった何かの気配をじ、驚いて振り返るが誰もいるはずもなく、その先にあった鏡に不安な顔をしている私が映っていた。

「やだなぁ、もお、神経質になっているなぁ・・・」

そう言って自分の頭を叱るように軽く叩き、前に向きなおすと

私の目の前に男が立っていたのだ。

「!!!!!!!!」

いつって來たか分からないその男は、私を冷たく見下ろしていたのだった。

すると彼はゆっくりと口を開いた。

「こんばんは、お嬢さん。今夜はもっともっと楽しみませんか?」

零士の目は、先ほどまでとは全く違っていることにも私は驚いた。そのクリクリとした大きい目は、今や溫度をじさせない冷徹なそれとなり、怪しくっている。彼から逃げようとするが、その獲を見定める冷たい零士の目から何か魔法をかけられているのだろうか、驚いた私は腰が抜けたようにけない。やっとの思いで後ろへ後ろへと下がり鏡が背中にあたる。その鏡の冷たさに背中がゾクリとした。

零士は、畏怖する私を追い詰めながら楽しむように大きな目を細めて

「ええ顔してるなぁ・・・」

そう言いながら、鋭い爪のびた指で私の顎をなでた。

その氷の様な冷たい指にも私は恐怖をじながら、彼から逃げようと必死で抵抗を試み顔を左右にかした私の目に映った景に更に衝撃をけた。

鏡に映っているのは私だけで、零士の姿はなかったのだ。

「えっ、どうして鏡に映ってない・・・これは夢・・・」

パニックに陥っている私に零士は、興するように瞳を深紅にさせると不気味に微笑んだ

「夢なら、よかったかもな・・・・」

目の前の零士の姿に私は必死に抵抗し、必死に逃げようとするが零士は躊躇なく覆いかぶさり鋭い牙を剝き出すと、に狙いを定め喰らおうとした。

「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

本來なら私があげているはずのび聲を零士が突如発したのだ。そして私から飛び退き顔を手で押さえながら床を転げ回った。何が起こっているか分からず、零士を見つめていると

「零士、大丈夫か!何があった?」

恵吾が心配して零士に駆け寄ると、その後ろを他の男たちもって來た。零士が恵吾に支えられるが、顔を抑えたまま苦しみ続けていた。

私はベッドの隅に逃げ、今目の前に起こっている恐怖に震えながら見つめていた。

「ロザリオは確かに・・・」

青空は零士の姿に驚きながら優のにしまわれている鉄の箱に目線を送った。

「ほら、やっぱりくべきでなかったんだよ・・・」

快は一人震えながら、私から隠れるように仲間の後ろに立った。

一番前に立っている優は、何が起きているのか理解しようと零士を見定めていた。

「これは、どういう事や!ロザリオを持ってないんやろ!」

零士の苦しむ姿にが突如、私に摑みかかって來た。その時だった、著ていたバスローブがし弛み、のあたりがしはだけ瞬間

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

も顔を抑えると、転げ回り苦しみだした。

「なに、なんで、何が起こってるん?」

青空は焦りながらを支えようと側に寄って行った。誰もが困と恐怖に支配されていたが優は冷靜に目を細めながら私の元を見つめ

「まさか、にロザリオの形の痣があったのか・・・・」

その言葉と同時に私は急いでを隠した。しかし、優は構わず言葉を続けた。

「まさか、神自が我々れの所に來てしまったか・・・・」

私に悔しそうな顔を見せたのだった。

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