《Fog HOTEL》第三章 ~1~
これで何度目になるだろか?私は、また彼らから必死で逃げ回る事になったのだ。
既に足は限界を超えていた。
全てを飲み込むかのように奧へと続く廊下をひたすら生き延びるために走り続けていると、私はこのホテルの構造に違和を覚えた。このホテルは永遠と続くのかと思われるような廊下の作りとなっているのだ。誰かが二度と帰ることのできない闇の中へと導しているかのようである。そして、私は以前ここに來た事があったような・・・そんな覚に囚われながら走り続けていたのだった。
まだけない歩夢の前には、優と恵吾とが居た。零士と青空と快にを追わせていたのだ。は歩夢を見つめながら考えるように頭を掻き
「やっぱり、俺の嫌な臭いが當たってしまったな・・・」
の嫌味を聞きながら、恵吾は走って行った仲間を心配するように
「なぁ、俺たちも追いかけないのか?あいつらだけやったら朝まで時間がかかるかも知れないで?」
そう優に尋ねるが、優は考え込んでいるせいか誰の言葉も耳にっていないようだった。そんな優に呆れたはため息をつくと
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「なぁ、そろそろお前の考えている事を教えてもらいたいのだけど・・・そのために、俺たちだけを殘したんやろ?」
そう言いながら、歩夢にも目線を送った。歩夢は自分に起こった事をけれられないように、自分の手を見つめながらを噛みしめていた。優はをりながら考え込むように
「俺の考えが正しかったら・・・・確証がないが、試す価値はあると思う・・・」
そう言うと、歩夢を靜かに見つめた。
「また、危ない橋を渡るから、あいつらだけを行かしたって事か・・・」
恵吾は全てを納得したように言うと、優はそれに答えるように靜かに頷いた。そして歩夢を見據えると覚悟を決めたように
「歩夢、覚悟はええな!!!!!」
その言葉に歩夢は素直に頷いたと同時に優は躊躇することなく歩夢の首に牙を喰いこませたのだ。
「うぐっっっ」
歩夢の口から痛みに耐えるような聲がれたが、も恵吾もその様子を黙って見守っているなか、優はゆっくりと牙を首から離すと自分の口に流れたを拭いた。
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「仲間に喰らいついて、これで何が見えてくるんやろ・・・」
恵吾は期待するように言ったが優は歩夢から目を離すことはなかった、その後の結末を知りたい好奇心が芽生えていたのだった。
「俺の考えが正しかったら、これで歩夢は吸鬼に戻るはずだと思う・・・」
そう言うと、歩夢を観察しようと手を取り人間になっている部分を見つめていた。
すると歩夢の手から溫かな流がとまり始め、徐々に元の青白い手と変わっていったのだ。
その様子を自分の考えが正しかったと確信した様子で優は嬉しそうに微笑んだ。
「なるほどな、俺たちが噛めば元通りってことか・・・・」
は考えながら言ったが
「なら、を恐れる事はなくなったと考えていいのかな?」
更なるの問いかけに優は歩夢の手をまだ見つめながら
「まぁ、そう考えても仕方ないけど、神の力は恐ろしいから、まだ何があるか分からないな」
そう仲間を諭したのだ。
「でも、今回の事は神だけの力だけとは思えないのだが・・・」
優の心の中には、まだ形の定まらないドロドロと何かが引っ掛かっていた。それが何なのかはハッキリとはわかなかった。そのことはと恵吾には全く理解が出來なかった。
「お前は、他に何かあると思っているのか?」
恵吾は優に問いただすと、優は靜かに首を振り
「まだ、ハッキリとしてない事は口にださない」
そう冷たく言い放ったのだ。その様子には笑うと
「お前の主義には慣れたよ・・・時が來れば教えてもらえるやろ・・・」
嫌味を言いながら恵吾の肩を軽く叩いて、その場を明るくさせたかったのだ。しかし、優の表はく閉ざされたままで
「神の審判は難しいことになってきたな・・・」
そう、疲れたように呟いたのだった。
一方でを追いかけている三人は、この狀況を不思議にじていた。
そう、何故他の者は追いかけては來ないのか・・・・それほどまでにも歩夢の調が悪いのだろうか?それとも他に何かあるのだろか・・・・
彼らのの中には様々な思いが吹き荒れていた。
「どうして、僕たちだけで追いかけさせているのだろ・・・・」
終始不安そうな快が口を開いた。
快の前を走っていた、零士は自分の不安な気持ちを悟られまいとするかのように強い口調で
「捕まえたら、先に腹ごしらえしてもええてことやろ?」
ふざけたように言う零士に青空は怒りながら
「怒られるのは一人だけにしといてや・・・巻き添えはごめんやからな!」
そう諭すように言うと、零士はイライラしながら
「青空は何もされてないが、あれだけの痛い思いをさせられた俺はこのままで終わらすはずはないやろ!」
零士は苦々しく思い出すように言うと、青空と快はクスッと笑っていたが快は突如、真面目な顔になって
「これ以上神に逆らった者には何が待っているのだろね・・・」
その言葉には悲しみが隠れているようだった・・・・悲しい瞳をしながら快は走り続けていた。そんな、快の心を癒すように青空は笑顔で伝えたのだ。
「俺らは何があっても力を合わせて乗り越えて來たやろ?ここまで生き延びて來たから、今回も絶対に大丈夫やと思うで」
青空の優しさにれ、快は小さく微笑んでみせた。その事に青空の顔も安心したかのようにホッしたのだった。その時だった、零士が低く冷たい口調で
「お喋りはここまで、ターゲットは直ぐそこや、最大の恐怖を味あわせてやろうや・・・」
零士はそう言うなり、側にある蝋燭を自らの凍える息を吹きかけ辺りを暗闇にし、闇に姿を消していったのだった。
私は、ある大きな扉を開けると、その部屋は薄暗く異様な空気が漂っていた。
そして、私は気が付いた。ここは教會なのだと・・・本來なら十字架があるはずで、それが取り外されていたが、教會だった場所なのだと・・・
私が先に足を進めると何かに躓き転んでしまった。倒れた私の目の前にあったのは棺だった。
「!!!!!!!!」
驚いて起き上がると、私の周りには7つの棺があったのだ。そう、昔見た映畫を思い出した。ここは彼らの寢床だと察した時だった、危険が迫って來ると本能が呼びかける。私は、この予に導かれるように十字架が飾られていた祭壇を除くと、そこにはを隠せそうなくぼみがあった。急いでその場に隠れると間一髪のところで彼らがって來たのだった。
彼らはり口で立ち止まったまま部屋をゆっくりと見回していた。
「ちっ、確かにここやと思ったんやけどな・・・・突然、匂いが消えるなんてな・・・」
悔しそうに零士が言った。その言葉に私には疑問が生まれた。前はの匂いで分かると言っていたのに・・・私は、自分で痛めやっとふさがろうとしている傷を見つめていた。
今なら、このの匂いがするはずなのに・・・・いったい何が起きているのだろうか?
私は自分の息も抑えながら彼らの様子を覗っていた。
「ほんまに不思議なものやね、教會を恐れている俺たちが教會で安眠をするのはさ」
青空は、自分たちの寢床を見ながらおどけたように言った。
「笑いごとやないで、あの夜がなかったらこの地に縛られずにおれたのに!」
零士は怒りをわにして怒鳴る。その零士の橫で快は黙って聞きながら棺をゆっくりとでると二人に尋ねたのだ。
「零ちゃんと、青空は3つの選択はどれを選ぶか決めたの?」
初めて聞く、快の冷たく乾いた聲だった。その言葉に零士はし驚きながらも、冷靜さを取り戻そうとするように頭を掻きながら
「わからん、他の者が選んだのを聞いてから決める」
零士もこれから先の判斷に迷いがあるのだろう、その辛さからか俯きながら言ったのだ。
すると、青空が何かを思いついたように、零士と快の間にると
「俺さ、気になる事があるんやけど、ずっと引っ掛かっていたことが・・・」
二人は青空の話を聞こうと、顔だけを向け次の言葉を待った。
「あのが來てから、歩夢の様子が変じゃない?裏切るとかじゃなくて、もっと別の事をじている気がしている・・・それが俺らの運命を左右する気がするのじゃないかと・・・」
青空の言葉に零士は怒りをわにすると
「それは、歩夢が俺らを裏切るってことか!!!!」
青空のぐらを摑んだ時に快がそれを止めるように割ってった。
「零ちゃん、違うよ!なにをじているか分からないけど、まだ隠されている事があるって事だと思うよ」
必死で止める快の後ろで青空は頷きながら
「快の言う通りやと思う・・・誰のの中に隠されたモノがあるやろ?そのが俺らの運命の道を決めるのかも・・・・」
青空は考え込みながら言葉を絞り出した。
そう、これからの運命がどうなるのかを思いながら、どんな道に自分が歩んで行くのかを不安に思わずにいられなかったのだった。
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