《Fog HOTEL》第三章 ~4~
歩夢と共にステンドグラスの部屋を後にした私は、相変わらず特別室に監されていた。
暗闇に吞み込まれそうになりながらホテルに辿り著き、最初にこの特別室に案された時のときめきはとうにあせ、この部屋は客にとっての特別室ではなく彼らにとって、獲を捉えておくための特別な部屋だった事を知った。
この部屋から出ようと様々な方法を試みたが、もちろん扉は鍵を閉められており、部屋の窓の全て外から釘が撃ち込まれているために開くことすら出來ない。そして、壁を叩いてみるが重厚なそれはずっしりとした度がうかがえる。しずつ壁を掘っても何日かかるのだろか・・・・
もう、私の運命は彼らの手の中なのだ。
打ち砕かれそうな気持になるが、私は負けまいと頬を軽く叩くと、外から打ち付けられている窓を何とかして開けようと、ガタガタとかし続けていたが、突如背後から聲がした。
「なぁ、この部屋は獲監室やねんで、逃げるのは絶対に無駄やって」
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私が振り返ると、青空はテーブルに座りながら顔には満面の笑みを浮かべていた。
「えっ、いつって來たの!扉は開いてないのに!」
私が驚いて、扉と青空を互に見ながら言う。すると、青空の瞳はゆっくりと深紅に染まり始めたかと思うと、口角が嫌らしく上がりびた牙が小さくる。
「忘れたんか?俺たちは吸鬼やで・・・・」
青空はわざと豹変して見せた。昨夜の出來事を思い出すと、彼らは霧に変わる事が出來るのだから、扉を抜けてる事なんてわけはないのだろ・・・・
「吸鬼って、なんでもありなんだね・・・」
私が嫌味を聞かせると、青空はふわりと空気のように飛ぶと靜かに私の前に降りて來た。
そして、ゆっくりと私の顔を覗き込むと
「なぁ、あんた本當な何者や?」
青空の質問に私の心臓がドクっと大きく鳴る。その事を悟られまいと、私は口元をキッと結ぶ。
「誰もじてないみたいやけどさぁ、俺は、アンタはただのクリスチャンと違うと思っているんやけどね」
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私の心を探るように青空は深紅の瞳で私を舐めるように見つめながら話し続ける。彼の容赦のない行に私の鼓が速くなっていく
「ほらぁ、アンタの心拍數も上がっていってるよ・・・・」
青空はいたぶるように嬉しそうに笑い始めたが、突如、が覚めたように表を変えると
「まぁ、ええけどな・・・無理に聞いても仕方ないか・・・」
青空は勝手に納得するように話し始めた。彼の変化に私はついていくことが出來なかった。
彼は、優しいのか怖いのか探ることが出來ない不思議な人だと思った。そして、本當に何を考えているのか・・・・そんな事を思案している私を見ながら青空は
「そや、思い出したけどアンタさぁ昨夜聞いて來たやろ?」
私が聞いてきたこと・・・・彼らに尋ねたこと・・・
そう、私は一つだけ彼らに質問したのだ、それを思い出して顔を上ると青空に告げた
「を飲まなかったら・・・・」
私の答えに青空は苦笑いを見せたが、突如冷めた瞳に低い冷たい聲で話し始めたのだ。
「俺らは、一か月もを飲まないと、止められない渇きで理が保てなってしまう・・・」
そう告げると顔を伏せたのだ。
「渇き?」
私には彼の言葉が理解できなかった。出來るはずはなかった、渇きとは?それだけで彼らは渇きと戦っているのだろか?
すると、青空は何かを決意をしたように顔を上げると
「理のない吸鬼ほど恐ろしいものはない・・・・を求めて手あたりしだいに襲い掛かり仲間も関係なくなるのだからな・・・・それは生き延びたいからじゃない、獣になる瞬間だと俺は思っている・・・・」
青空の言葉を聞いて、彼らが戦っているモノが理解できた。大切な仲間を守るために彼らはを求めてこのホテルに來た客をエサにしていたのだろ・・・・
でも、やはり私は人間なのだから彼らの行為には理解できない・・・できるはずがないのだ・・・
「だからって・・・・人の命を奪うのは・・・」
そう否定しようとした言葉を青空は無理やり遮り
「人間もさ、牛や豚などを食べてるやろ?がどんな気持ちかを考えずにさ・・・」
「!!!!!!!」
私は青空の言葉にぐうの音も出なかった。
「俺らは一か月に一人だけを犠牲にしているけど、人間は無駄に命を奪っているよな」
そう彼は意地悪気に聞かせるのだった。
「な、何が言いたいの・・・・」
私は青空が怖かった、穏やかな顔をしながら私の心の奧底まで探ってくる彼に恐怖をじていた。
「俺らは生きるためであって、罪は犯してないってことや・・・」
その言葉で、私は彼らの事がし理解できる気がした・・・
彼らも必死で生きるために罪を犯し、自分たちの罪の重さも自覚し、その罪の重さゆえに苦しみから逃げようともがき苦しんでいるのだろ・・・
その時だった、部屋の扉が靜かに開いた。私と青空が扉の方に顔を向けると歩夢が立っていた。
「青空、怖がらすことはしないと決めたよね・・・・」
そう言いながら青空の側に寄ると肩を叩いた。
「違うで、二人での話をしてたんや」
そう青空は拗ねたように言いながら、私にウインクをして合図したのだ。
その姿に、私は先ほどの話は誰に言わないと決めた。それは、青空のためだし私のためだと思った。
青空の姿を見て歩夢は優しく微笑むと、私の方を向き
「すまない、約束したのに・・・・」
歩夢は謝罪をしながら頭を深々と下げた。
「これぐらい大丈夫ですよ、もしかしたら慣れて來たのかな・・・」
私はそう言いながらおどけて見せた。そんな私にも歩夢は微笑んでくれる。その事が私は嬉しくって仕方なかった。いくら彼の存在を知っていても私のは熱くなっていく。そんな私たちを見て、青空は苦笑いをしながら
「なぁ、お二人さん俺が居るのを忘れているのかなぁ?」
その嫌味を聞き、私は自分の頬が熱くなるのをじながら青空から顔をそむけた。歩夢は小さく咳ばらいをすると
「青空、ごめん・・・・」
青空は歩夢の謝罪を聞きながら人差し指でおでこを掻きながら
「ええけどな・・・まぁ、お邪魔蟲は消えるとするか・・・」
そう言い霧に変わろうとしたが、歩夢が青空の手をグッと摑むと耳元で何かを囁くと青空の顔が微笑みに変わった。
「了解やで・・・・」
青空はその言葉を殘し靜かに霧に変わって行ってしまった。
青空の去って行ってしまった部屋は靜かだった。それが余計に恥ずかしさを増してくる。歩夢と二人きりだという事がこれ程まで心が熱く切なくなるなんて・・・・
そんな私を知らない歩夢は、ゆっくりと私の側に來ると
「貴は順応がある方で良かった・・・・」
歩夢の靜かな低いトーンに私の心は落ち著いて來る。
「俺たちは、いつから忌み嫌われる存在になったのだろうね・・・」
歩夢は寂しそうに瞳を潤ませながら語ってきた。
「それでも生きていると、貴みたいに分かりあえる人に出逢えるから、このでも悪くはないなと思える時もあるんだ」
歩夢は初めて私に心を許してくれたようにじた。それが何よりも嬉しかった。
の鼓が速くなるが、それも私の喜びに変わっていく。
「他の人もそうなら、怖くないのになぁ・・・」
歩夢には最初から恐怖をじていなかった、そうどんな時も恐怖はじる事はなかった。
歩夢には、どこか昔にじたことのある、遠い記憶の中にじた落ち著いた雰囲気が・・・どんな狀況におかれても、私の心を癒してくれるのだ・・・・
「もし、良かったら私の話を聞いていただけますか?」
私は彼に近づきたかった。どんな事をしても、ほんのしでも良いから近づきたかった。
もしも、私の話を聞いて彼は何と言ってくれるのだろか・・・
私の心を救ってくれるのだろか・・・・
誰にも話していないの上話を・・・・
どんな表で頷いてくれるのだろか。好奇心も生まれていた。
そんな私の意を知ってか、歩夢は姿勢を正して真っすぐ私を見つめる姿勢は古風な男を彷彿させる。
この私のの上話に大きな意味があるとは私も彼も知らなかったのだ。
重大な意味があったことを・・・・
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