私が歩夢にのを明かそうとしている時を同じくして、他の吸鬼たちはロビー奧の部屋で過ごしていた。

退屈というものはこんなにも時の流れをかんじないものなのだろか。

何もする事がなく、寢ることもせずに零士は終始不機嫌な様子で

「俺は、どうしても、あのを生かしている理由が分からんのやけど・・・・」

零士はそう言うと、空腹に耐えかねたかお腹を押さえた。

そんな、零士を見て恵吾は小さく笑うと

「優が言っていたのを忘れたのか？選択を決めるまでやと・・・」

恵吾は言いながら、靜かにソファーに座って本を読んでいる優に目線を送った。

しかし、優は無視をするかのように、今は誰に何を言っても無駄だと言わんばかりの表で本を読み続けていた。そんな、二人を見ながら快は寂しそうな瞳のまま

「でも、あのゲストは本當に不思議だよね・・・」

誰に聞かせるわけでもなくボソッと呟くと、部屋のソファーで寢そべっていたが返事をしたのだ。

「不思議なのは、あのの痣やろ？神の証の・・・・・」

は、言いながら自分が襲い掛かろうとした時の痛みと恐怖を思い出していた。そして・・・・まだ鼻にこびりついている嫌な臭いを払うように鼻をった。

「アイツは神かも知れんが・・・・怖いのは俺たちを人間に戻すだけやろ！それだけやったら、怖がる必要はないやんけ！」

悔しそうに零士が吐き出すと、今まで何も言わずに本を読んでいた優が、膝の上の本を閉じた。

「敵に勝つには、先ずは敵を知ることや・・・・」

そう仲間を諭したが、零士はイライラするように頭を掻きむしりながら

「あぁ、イラつく！腹も減った！」

そう言いながら、空腹を紛らわすかのように部屋の中を歩きだした。他の者はその様子を見ながら小さく笑っていた。この景はよくある姿だったのだ。零士は誰よりもお腹の減りが早いようで、そんな零士の怒りを仲間は笑って許していたのだ。

そんな中、考え込みながら優は仲間に言った。

「でも・・・・誰もが恐怖した痣のを、歩夢が耐えられたのは何故だろ？

本來なら、灰になっていてもおかしくはないはずだが・・・・」

そう、言うと考え込み始めた。

「そうやなぁ、吸鬼としての能力は歩夢の方が下やしな・・・・」

も當時の事を思い出していた。快は恐怖を押えようと自分のを抱きしめながら

「あの・・・思い出しただけでも震えが止まらないよ・・・・」

震えながら怯えている快の側に恵吾は寄り添うと、大丈夫だと言うように優しく背中をでた。すると、零士が何かを思い出したように顔を皆の方に向け

「そう言えばさぁ、快は歩夢を助けようとによく飛び込めたな！それに、全く傷すらおってないよな？」

その言葉に快の顔が変わる。大きく揺したのは誰の目にも見えたが、快は平靜を必死で裝っていた。

「あ、あの時は必死だったから、よく覚えてないんだ・・・」

そう誤魔化す快の表を優は冷たい表で見つめていた。

仲間の中に不穏な空気が漂い始めた時だった、突然、大きな音を響かせて扉が開いたのだ。

「ただいまぁ～っ」

仲間の様子など知らない青空は満面の笑顔で部屋にって來た。青空の表を見て、仲間は呆れるように笑った。

「お前、ずっと居らんかったけど、何してたんや？」

恵吾の質問に青空は嬉しそうに両手に持っている袋を皆に見せると

「すごく良い所や・・・・」

その、おどけた青空の行に零士はイライラすると

「なんやねん、それは・・・・」

怒っている零士の前を青空は嬉しそうに通り、テーブルに置かれている優の本ものけろと顎をかしジェスチャーで伝えると優は察し本を膝の上に乗せた。それを合図かのように青空は袋の中をぶちまけた。

「これを盜んで來たんや！歩夢の提案でさぁ」

そう言うなり両手を広げて皆に見せた。

その、モノを見て仲間は各々驚いた表をしていた。

「輸パック？」

優はテーブルの上のモノを手にしながら言う。すると、青空は輸パックを手に取ると一人一人に渡しながら

「ほらぁ、これ飲んだらしぐらいはお腹も大丈夫やろ？まぁ、好みはあると思うけどさ、そこは我慢してもらって・・・」

そう言いながら青空は得意げだった。しかし、仲間は無言で自分の手にしている輸パックを見つめていた。

青空の奇怪な行に、どう反応していいのか分からずにいた。

「まぁ、腹が減ってはイライラして考える事もまとまらんやろ？青空も頑張ってくれたからさ、有難くいただこうや」

恵吾は青空の気持ちを察して重い空気を打ち破るように言う

「吸が輸で食事って、これこそレトルトやん」

はこの狀況がおかしくって仕方ないのだろ、そう言いながら聲を殺しながら笑っていた。

「でも、これって・・・・僕たちも時代を考えるべきなのかもね・・・・」

快は青空から手渡された輸パックを見つめながら言うと、そんな快の様子を心配した恵吾が

「快、何を考えるべきなんや？」

恵吾は快が何を言いたいのか理解できず心配そうに尋ねた。そして仲間もそうだったのだろう、誰もが心配そうに快を見ていた。快は皆の視線をけながら自分の気持ちをゆっくりと言葉にした

「もう、人を犠牲にせずに生きていく方法を・・・・吸鬼もこのようにしても生きていくってことを・・・・」

快はそう言うと、手にしていた輸パックを強く握りしめた。

快の言葉に、皆は考え始めた。これからの自分たちの生きていく道を、新たな道に進むべきなのか・・・・そう思い始めた時だった。

「まだ、答えを出すには早いと思うけどな・・・・」

優は、仲間を諭すように言うと、靜かに立ち上った。

「昨日も言ったように、とは一カ月過ごす、それから選択してもらう事には変更はないからな」

優の冷たい命令に誰もの口からため息がもれる

「１カ月間で考えろってことか？俺たちの進む道を・・・？」

そう言いながら、どこか納得できないのか腑に落ちない顔をしている零士だった。

「まぁ、一緒に居てじることで分かる事があるから、それで答えが出せるかもな？」

青空の考えもつかない発想に仲間は注目した。

「青空って、いつもはボーっとしているのに、時々まともな事を言うな」

そう言って零士は心すると、青空はしムッとし

「なんやねん、失禮やな！」

青空の怒った顔を見て零士も快も笑っていたが、だけが真剣な顔をしていたのを優は見逃さず

「お前はさっきから、えらく考え込んでいるな・・・・」

優の言葉には鼻をりながら

「どうしても、あのの痣が気になってて・・・・頭からどうしても離れない・・・」

そう苦々しそうに言った。すると、優は今まで読んでいた本を手にしながら淀みなく言った。

「俺の調べでは、どの文獻にも神の使いに痣があるとは載ってなかった」

今までの結果を報告したのだ。するとはゆっくりと首を振りながら

「いや、そう言うことじゃなくて・・・昔、どこかで見たことがあったような、あの痣を・・・・」

そう言いながら鼻をまたるのだが、優はそんなを黙って見つめていた。

「でも、頭に深い霧がかかっているようで、大事な部分が思い出せないんだよな・・・

今まで、そんな事があったのも忘れていたし・・・・」

は悔しそうに苦笑いをしながら言うと

「半世紀も生きている俺たちだから、記憶は消えていくだろな・・・

そんな膨大な記憶を覚えているのは無理な事だからな・・・・」

優はをめるように伝えると

「ホンマに、あの痣をどこで見たんやろ？あと、俺はめちゃくちゃ大事な事を忘れている気がするんや・・・・それを、あのが來て気が付いたんや・・・」

は悔しかったのだ、見えそうで見えない記憶に・・・・

優が言うのは理解できたが、誰かに何かをられているように、記憶の見えない気配をじていたのかも知れない・・・・

とても大切なを手にできない事に苛立ちをじ、見えないをじ取っていたのだった。