《Fog HOTEL》第四章  ~2~

私と歩夢は、特別室で向かい合って座っていた。

歩夢は私が口を開くのを急かすこともせずに優しい表で見守っていてくれた。そんな彼に私は臓の奧深くに沈む鉛の塊を吐き出す決心をしたのだった。

「実は・・・・私は親の顔すら知らない捨て子なのです・・・」

私の告白に歩夢は虛をつかれた表になった。私のこの話を聞いた人の表はいつもそうだったから、いつもそうだった・・・・彼ものそうなのだと思い、私は小さく微笑んでしまった。そして私は話を続けた。自分が思いを寄せている人の真意をどうしても知りたかったからだ。

「私が見付けられたのは雪の降る朝だったそうです。教會の前に捨てられていたのをシスターが見つけてくれました。凍死していてもおかしくない狀態だったそうです」

歩夢は私の言葉を一言も逃すまいと真剣に聞こうとしていた。そんな彼を見て私の心は辛くなってしまいし目線を逸らして俯いた。

「本來、孤児である私は孤児院に行くべきなのですが、私だけは教會で神父様とシスターに育てられ一緒に暮らすことが出來ました」

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私は心の中の不安や恐怖が混ざり合った複雑な心境を隠しながら話し続けていた。

「それは、貴方も知っている、の痣のおかげです・・・・」

その瞬間、歩夢の顔が変わり何か言おうとして口が開いたが、思いとどまったように口を閉じた。

「私は、言われ続けて來ました・・・・この痣は神の使いの証だから、教會で人々を救うのだと・・・・そのために、教會に置いていると・・・・」

私は苦しかった・・・彼らに痣を知られてから。

神の使いだとこのホテルでも言われ、逃れられない運命だと知った・・・・

苦しかったし、辛かった・・・・。

なんの取柄もない事は自分が一番知っているのに、周りは勝手に意味づけをする・・・

どこに逃げても逃げられないのだと思い知らされていたのだ。

そんな風に闇に落ちかけている心を癒すかのように、優しい聲で歩夢は語りかけてきた。

「そうだったのですね・・・貴も苦しんでいたのですね・・・」

歩夢のその言葉を聞いた瞬間、私の心に一筋のが差した気がした。

彼は、私の気持ちを理解してくれている。ずっと孤獨だった心を分かってもらえた気がした。

「この痣が私を守る。私が神の道を歩み続けているかぎりと言われていました・・・

昨晩も、貴方たちから守ってくれました・・・でも、でも・・・・」

私は言葉に詰まった。そんな私の様子に歩夢は辛そうに俯いた。私に何と聲を掛けるべきなのか悩んでいるのだろう・・・・

そんな歩夢に私は勇気を振り絞って言葉を続けた。

「あの、ロザリオは捨てられた私が唯一持っていたなのです。たぶん母が最初で最後にくれた贈りなのです」

涙の粒が私の瞳を埋め盡くしていく。歩夢の前で流すまいと必死で堪えていると、歩夢は俯いたまま手を微かに震わしを噛みしめていた。自分にもどうする事の出來ない悔しさに震えているのだろうか・・・・

「この痣は神の証なのでしょうか?神の道とは何なのでしょうか?私に貴方たちを救う力があるのでしょうか?救う力は、この私のにしかないのでしょうか?」

一気に滴が溢れだした。今まで我慢をしていた気持ちが、歩夢の優しさにふれたからなのか、それとも歩夢の人柄が私の隠れていた部分を引き出したのだろか・・・

子供の時から、ずっと誰にも言えなかった事を私は言っていた。

「・・・・・・・」

歩夢は何も言わず俯いていた。

そんな彼を見て私は自分が楽になるために彼を苦しめていのだ。私は夢から覚めたように我に返った。

「ごめんなさい・・・・」

素直に謝ると、歩夢はゆっくり手をばし私の手を優しく握った。

彼の氷のような冷たい手だが、私の心を溫かくする。

「謝らないで・・・本當に申し訳ない事をしたのはこちらです。それほどに大切なロザリオすら取り上げてしまって・・・」

今度は彼が靜かに頭を下げて謝罪をした。

「大丈夫です・・・理由は承知していますので・・・・」

必死で微笑んで見せる。私が苦しめた彼の心を癒したかったから・・・

そんな私に歩夢も安心したかのように微笑んで返してくれた。

沈黙が二人を埋め盡くす。どちらも話さず、自分の気持ちを整理していた・・・

すると、私の手を握っていた歩夢が手を離すと

「貴も、孤獨だったのですね・・・・」

歩夢はボソッと言った。その言葉を聞いた途端、更に涙が溢れだした。親もおらず、置かれた場所と痣でんでもいな神の道を歩まされていた。

親代わりの神父さんシスターには謝しているが、學校に行っても親の居ない私は一人で過ごす事が多かった、すこし空気の違う私を友達は遠巻きに見ていた。友達が持っているモノを私は何も持っていなかった。そんなモノが教會にあるはずがないから・・・・年が進んでもそれは変わらなかった、どこか浮いていた私は自分では認めたくはないが孤獨だった。友達と一緒に過ごしていても、いつも孤獨だったのだ・・・・

私は違う闇の孤獨という接點で彼に引かれたのかも知れない。

だから、歩夢をしてしまったのだろ・・・

子供のころから一人で過ごしていた私、する人の目覚めを待っている歩夢。共通の孤獨が私たちの距離をめたのだ。

私は、この優しき吸鬼の前で恥ずかしげもなく泣きじゃくっていた。

真っ黒な思いを吐き出すように、泣き続けていたのだった。

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