《Fog HOTEL》第四章 ~3~
歩夢以外の吸鬼たちは、青空からけ取った輸パックをそれぞれの部屋で楽しんでいた。誰が何かを言ったわけではないが、各々の心の中を整理するかのように一人になっていた。
快は、自分の部屋で明かりも付けず重いカーテンが引かれている窓際に立ちながら、遠い日を思い出していた。
「犠牲なしで生きるか・・・・・」
快は、今まで自分の歩んで來た道を思い出していた。吸鬼はが必要なために生きの犠牲の上に生きて來た。そんな自分がどれほどの罪深いことなのか・・・・
これからの、心の奧底にある重い十字架を背負って生きていくことを思うと快は深いため息をつきながら輸パックを啜る。
「味しい・・・・」
その味しさに驚き一気に飲み干すと、手元のパックを見つめ小さく苦笑いをした。
自分は狩りが怖い・・・・追い詰める行為がどうしても出來ないのだ。
そして人間も怖い、自分たちを忌み嫌い襲い掛かろうとする人間が・・・
そう、自分は誰よりも臆病な吸鬼だ。そして、一人で生きてい行くことが何よりも怖い・・・・
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仲間が居たから、ここまで生き延びられたのだ。
居なかったら・・・・孤獨の闇に呑み込まれ消えていただろう・・・
そんな事を考えながらベッドに腰をかけた。
「足手まといの僕の居場所は・・・・いったい、どこにあるのだろか・・・」
の奧が誰かに捕まれたかのようにぎゅっと痛む。
孤獨をじるといつもそうだった、この痛みに耐えて過ごして來た日々を思う。
今は仲間がいるのに・・・・
どうしても孤獨を消せずに落ち込んでいた時だった、部屋の扉が開き恵吾が立っていたのだ。
恵吾は何もかも理解しているのか、快の了承を得ずに部屋にズカズカとると
「お前の居場所はここや!」
そう言うなり、快の頭を強引にで元気付けようとしたのだ。
「!!!!!!!!!!!!」
快はその恵吾の行に驚き、彼を無言で見つめた。恵吾は快を元気にさせようと満面の笑顔を見せながら
「お前が小部屋から出ていく様子が気になってな・・・・、でも、あんまり考え込むなって暗い部屋で考えれば考えるほど人は深みにはまってしまうで」
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そう言うと、恵吾は快の隣に座った。
快は答えることが出來ずに俯いていた。自分は皆のように考えることが出來ない部分がある。どうしても拭えない思いがあったからだ。そんな快を恵吾は優しく肩を抱くと
「なぁ、勝手に孤獨になるなよ・・・・人はそれぞれの考えや思いがあるやろ?」
快は恵吾の話に耳を傾けた。
「そして答えを出すのも、それぞれの個人差があるから、俺らは互いに尊重し合って來たんやろ?」
恵吾の言葉に快はし微笑んで見せると、自分の思いを口にした。
「僕は、何をしてもいつも最後になるから・・・みんなの足を引っ張っていると分かっているよ・・・・」
快の悲しい言葉に恵吾はし困った顔になったが
「俺たちが快を責めたことがあったか?どんな時も快を置いてきぼりにしたことがあったか?」
恵吾は快をしっかりと見つめながら尋ねたが、快は俯いた。
「・・・・・・・・」
快は何かを考えていたが、答えを待っている恵吾の為に下を向いたまま首を振って答えたのだ。そんな快に恵吾は肩を叩きながら
「そろそろ信頼してくれてもええやろ?俺たちを・・・・」
恵吾のその言葉に快は答える事が出來なかった。溫かい仲間の思いに答える事の出來ない自分の弱さが悲しみとなり快の心を埋め盡くしていたのだった。
その頃、零士は自分の部屋でイライラしながらテーブルの上に置いた輸パックを見ていた。
零士には許せなかったのだ、人の首筋からでなく誰かの手によって取られたを飲むことが・・・・自分たちは誇り高き吸鬼のはずが、こんなに落ちぶれてしまったことに・・・・
「なんで、飲まなあかんねん!」
そう怒鳴ると、テーブルの輸パックを手に取り思いっきり壁に投げつけた。
大きな音と共に転がった輸パックの先にある靴が零士の目にった。
「あぁ~っ、勿ないことをして・・・俺が苦労して盜んできたのに」
青空はそう言うと、床に転がっている輸パックを拾い上げた。そんな青空の様子を見た零士は怒った様子のまま
「なんやねん、文句あるんか!」
そう怒鳴る零士に青空は困ったように笑うと
「零ちゃん、今ものすごく辛いんやろ?」
そう言いながら手にしていた輸パックを差し出した。
しかし、零士は青空を睨み続けていたが、青空は怒るわけでもなく微笑み続けていたのだ。
「・・・・・・・」
そんな青空に対して零士はイライラした様子で無言の顔をそむけると青空は呆れるように
「はぁ、しかたないなぁ・・・・俺らの中では一番プライドが高いから無理かなって思っていたけどね・・・・」
青空はそう笑いながら言うと、零士の隣にドカッと座ったのだ、その事に零士は驚きながら
「なんやねん、俺にケンカを売ってるんか!」
暴な口調の零士に青空は臆することなく、ニコニコしながら
「俺から吸ってええよ、零ちゃんはグルメやからレトルトは無理なんやろ?」
そう言うと自分の顔をかして首を零士に見せたのだ。
その青空の行に零士は驚きと同時に自分が子供のように我儘を言っていたのだと知り、顔を赤らめると、慌てたように零士は青空の手にある輸パックを取り上げた。
「お前からを吸うくらいやったら、これを飲むわ!俺は仲間に借りなんか作らん!」
そう言うと、輸パックに喰らいついたのだ。
必死で飲んでいる零士を青空は嬉しそうに見つめながら
「さすが零ちゃん、誤解されやすいけど、誰よりも仲間思いやもんね」
その青空の言葉に零士は輸パックから口を離すと
「ホンマにお前は何が言いたいねん!」
それだけ言うと、また零士は輸パックを吸い出した。
「俺さぁ・・・あんまり覚えてないんやけど、頭の中に霧がかかってるんや、ずっとさ・・・」
青空の言葉を零士は靜かに聞いていた。
「あの時も、本當はみんなを助けようとして、頑張ったのは零ちゃんだったと・・・・」
零士は驚きながら青空を見た。しかし、青空は気にすることなく話を続けた。
「みんなは、忘れてしまったのかも知れないが、俺はそう思っているよ」
そう言うと、青空は嬉しそうにニッコリと微笑んだ。
そんな青空に癒されるように、零士の表もしだけ笑顔になり
「青空ちゃん、俺は誤解されたままでええよ・・・・」
そう零士は弱々しく言ったのだ。
「でも、それやったらずっと悪者やで・・・・」
青空は零士を思うと悔しくなっていた。だから、零士の言葉に悲しさをじていたのだった。
「俺の頭も霧がかかったようで、ハッキリと思い出せないけど俺が皆を吸鬼にしたと思ってる・・・・」
それだけ伝えると、飲んでいた空の輸パックを壁に投げつけた。
零士は悔しそうに床に転がっている空のパックを見つめていた。そんな零士を見て青空は顔を天井に向けると
「でもな、俺はこうなっても生きられて良かったと思ってる。こうしてみんなで過ごせてる事を嬉しいと思ってるで」
青空は零士の辛さを理解していた。そして誤解されやすい格も、本當は誰よりも辛くて苦しいのに強がっているのだと・・・・だから、彼の心をしでも救えたらと思っていた。しかし零士には噓は通用はしない、素直な気持ちを彼に屆ける事が一番だと青空は知っていた。青空の素直な気持ちが屆き零士は小さく笑うと
「俺がさ、そんな事を気にするわけないやろ?」
零士は更に強がってみせたのだ。
「零ちゃんは、誤解されすぎなんやって・・・」
零士を思うと青空は悲しくなっていた。そんな青空の優しさを知り
「俺は、お前の優しすぎる格が心配やけどな・・・その優しさが、いつか傷つかんかって・・・」
そう言うと零士は青空の肩を嬉しそうに叩いたのだ。誰にも分からない二人にしか分かり合えない時間を過ごしていたのだった。誰の中にもある溫かい部分と凍えそうな部分を理解しながら過ごしていたのだった。
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