《Fog HOTEL》第五章 渇き ~1~

青空は零士とたわいもない話で盛り上がった後に元気になった零士の姿に安心して部屋から去って行った。

一人殘った零士は、飲み捨てた床に転がっているレトルトパックを見つめていた。

青空や仲間を心配させたくはないが、自分には未來や過去など考える事はなかった。それは零士にとっては今が大事だったからだ。ずっと仲間と一緒に人を狩って過ごしてけると思っていた。何も変わる事のない時間をこれからも過ごしていけると信じていたから、転がっているパックを苦々しく思えたのだ。

その時だった、突然自分の心臓がドックっと大きな音を立てたと思った瞬間、の奧から抑えきれないする渇きが始まったのだ。

零士は慌てるように駆け出すと、手洗い場に向かった。

急いで蛇口を開けると勢いよく流れ出る水に口を近づけをうるおそうとする。

「う、不味い!!!!!!!!!!!!」

口にれたものに吐き出しながら言う

最初から分かっていた。この渇きは水なのでは癒せないし、このになってから以外は味がないのだ。だが自分に殘された時間はない。流れ続けている水を見つめながら焦っていた。

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どうしょうもない気持ちで顔を上げると鏡にまで水が飛び散っていたが、自分の姿は映ってはいなかった。その當たり前の事にも苛立ち鏡を力いっぱい叩いた。

鏡は嫌な音をたてながら割れ、飛び散っていくが零士は自分のに向き合っていた。

もう、何十年自分の顔を見ていないのだろか・・・・もう、自分の顔すら忘れた・・・・これが、自分に下された罰なのだろか・・・・

そして誰よりも早く來る渇き・・・・もしかしたら、仲間を襲ってしまうかも知れない恐怖が零士に滲みよって來る・・・・

「くっ、くそぉ!!!!!!!」

そうらした時だった、零士の後ろから聲が聞こえた。

「零ちゃん大丈夫?」

明らかに様子が違う零士を心配して快が心配そうに聲をかけてきたのだ。

「何がや!」

零士はのまま怒りをわにしながら快を睨みつける。

そんな零士に怯えながらも快はそれ以上怒らせないように、ゆっくりと距離をめていく

「青空がくれた輸パックを飲んでも辛いの?」

零士の渇きは快の話を聞いている間も進んでいく、どうしょうもない渇きがとめどなく襲い掛かって來る。零士はそれを必死で抑えていた。

「あのを喰らったら、直ぐに良くなるわ!」

そんな嫌味を言うのも零士には既に一杯だった。

「ダメだよ、そんなこと・・・・皆を裏切るのは・・・・」

快は零士の苦しさを知っていたが、しかし自分ではどうする事も出來ずこの狀況に困しながら必死で零士を止めた。

「そんなこと分かってるわ!」

零士は言いながら壁を思いっきり叩いた。鈍い音が廊下に響き快が驚いたようにを震わせる。零士は自分を見失わないように、自分を痛めつけ渇きに耐えていた。今にも消えそうな理の中で立っていたのだ。

その時だった、歩夢が気分転換にとゲストを散歩に連れ出していたのだった。

楽しそうに歩いてくる二人の姿が零士の目に映った瞬間、零士の理の糸が努力も虛しくプツンと切れた。

「獲や・・・・」

低く響く聲で零士は聲を吐き出すと瞳が深紅に変わり口から牙が怪しくると同時に、歩夢たちに向かって駆け出したのだ。

そんな姿を見て快は慌てたように零士に飛び掛かる

「零ちゃん、ダメだよ!!!!!!!歩夢逃げて!!!!!!!」

快の聲を聞いて歩夢は目の前で起こっている事を一瞬で理解し、私を庇おうと覆いかぶさった。

「邪魔すんな!!!!!!!」

真っ赤な瞳と荒い息を聞き、零士は理を失いながら、快の制止を振り払った。

そんな様子を歩夢は察し、私の腕を摑み逃げろと合図をする。

快は暴れる零士を抑えようと振り払われても、何とか腕を摑み抑え込もうとしながら

「ど、どうしよう!零ちゃん、限界を超えてしまったんだ!」

そんな快を零士は暴に叩きつけた。そして、ゆっくりと歩夢とゲストを見定めた。

「・・・・遅かった」

歩夢が悔しそうに呟いたかと思った瞬間、零士はゲストを手にれようと飛び掛かって來たのだ。すると、歩夢は力強く私を突き飛ばしたのだ。

「ちっ!!!!!!!」

零士は、獲を捉えられずに悔しそうに歩夢を睨みつける。それと同時に歩夢は零士を抑えつけたのだ。暴れる零士に歩夢は臆することなく抑えつけながら、一瞬だけ私を見た。

そう、逃げろという合図のように。この場に居たら私は邪魔なのだ。

それを悟った私は走り始めたが、逃げた私を見た零士は余計に興すると、歩夢の腕を強引に引き離すと大きくジャンプをしたかと思うと私の逃げていく回路の前に降り立ったのだ。

「なぁ、お嬢さん・・・・もう、限界なんだよ・・・喰らわせてくれよ・・・」

一切の慈悲もない彼の様子を見て、私は恐怖のどん底に叩き落された。

「あ・・・あっ・・・・・」

聲すら出せずに、私は震える腳をゆっくりと後ろに下がる・・・・

それは人が生きたいという生存本能だろう、しでもこの目の前の怪から離れたいと・・・

しかし、零士はじわりじわりと詰め寄り追い詰める。

怯えている私の前に、零士は手をばすと私の髪をかきあげ首筋をわにさせた

「ホンマに旨そうな首筋やな・・・」

そう言うと、首筋に舌を這わせる。そんな零士を見て、歩夢が立ち上がり零士に飛び掛かった。

「零士、ダメだよ!それは俺が許さない!」

強い口調と、自分の行を止めようとする歩夢に零士は冷たい瞳で牙を剝きながら

「はぁ?」

二人のもみ合いが続く、私は腰が抜けたようにけなくなっていた。

歩夢は一歩も引く気配がなく、押さえつけようと必死だった。

そんな、二人をし離れた場所から見ていた快が

「歩夢、零ちゃんはもう正気を完全に失っている・・・・」

泣きそうな聲で伝えると、歩夢は私と零士の間を遮るように立ちはだかったのだ。

そんな歩夢の様子に零士は怒りながら

「退けや、灰になりたいんか?お前が俺に勝てると思うんか?」

その怒りを含んだ言葉に歩夢は怯むことなく反対に睨み返すと

「俺は、どんな事があってもここから引くことはない!」

そう言うと同時に、私を見つめた。そして、聲を出さず口をかした。

『に・げ・て・』

私はそう読み取れた。その瞬間、私は夢から覚めたかのように足がきだしたのだ。

私は、ある場所に向かって駆け出したのだ。あそこなら、絶対に見つからない!歩夢が迎えに來てくれると思い私は走り続けたのだ。

私を見送った快は、まだ暴れ続ける零士を見て

「歩夢、みんなを呼んでくるから、もうしだけ待っててね!」

快の方も走り出した。零士を助けるために歩夢を助けるために、そして自分の大切な居場所を守るために快は仲間に助けを求めに行ったのだった。

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