《Fog HOTEL》第五章 渇き ~3~
あれほどに騒然としていた空間は、零士から滴り落ちる音だけが聞こえるほど靜寂に包まれた。そして誰もがその場をけなくなっていた。零士は顔にかかった水を払いのけると歩夢から牙を離し優のぐらを摑んだ。
「っ、何すんねん!!!!!!!」
今度は怒りを優に向けたのだ。
だが優は冷靜な顔を崩すことなく零士を見據えると冷たい聲で伝えた。
「仲間同士の喧嘩はいかなる理由があってもルール違反や」
その言葉に零士は驚いた顔になっていると、優の後ろからいつ來たのだろかも頭を掻きながら
「まぁ、理を失ってたて理由は分かるけど・・・これはな・・・同は出來んかもな・・・」
そう言いながら床に倒れている歩夢を覗き込み、優に顔を左右に振ってその様態を合図したのだ。
「これは、ちっとヤバいな・・・嫌な臭いしかしないな・・・」
の言葉を聞くと、優はすぐさま振り返り
「青空、歩夢を部屋へ連れて行ってくれないか、後で俺も行くから」
そう指示をすると、青空は素直に頷きと一緒に歩夢を抱え上げた。
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そして、青空が背負う形で歩夢を連れ去って行ったのだった。
優は二人が去るのを黙って見送ると、零士の方に向きなおし
「恵吾、ルールに従い零士を獨房に連れていけ」
その無慈悲な言葉に誰もが衝撃をけていた。
「優くん、それは・・・あまりにも零ちゃんが・・・酷すぎるよ・・・」
快は泣きそうになりながらも零士を庇い優の前に歩み出るが、優は表をしも変えず
「今の零士をここには置いてはおけないのは分かっているよな。歩夢のをしは飲んで理は戻ったが、また同じことを繰り返すか分からないからな・・・」
そう言いながら、皆の顔を見る事の出來ずに俯いていうる零士を見つめていた。
「まぁ、この現狀から考えると、それが一番良い案なのかも、皆にも零士にも」
それは、零士に罰を與えるという意味はなく、お前を守るためだと伝えるようには零士の肩を軽く叩いたのだ。すると零士は汲み取ったのだろ、靜かに頷いた。
「零ちゃん・・・・」
快は目の前の零士を見て震える手を差しべたが、恵吾がそれを遮り零士の腕を取ると霧となって快の前から消えていったのだ。
快は震えていた。
守りたいものを守れなかった自分を悔いながら、を噛みしめていた。
そんな、快に優は更に冷たく言い放つ。
「分かってはいると思うが、俺たちは簡単には死ねない・・・
頭では分かっていても、実際に起きないと理解できないみたいだな・・・」
そう言うと大きなため息をついた。
「だから、が無くなると本能的に消えたくないと足掻いてしまうってことか?」
はまだ、何かをじているかのように鼻をりながら尋ねると
「足掻くか・・・・これこそ、神が與えた罰なのかもな・・・
死ねないやつが、足掻いてみすぼらしい姿をさらすという失態・・・」
優は、零士を思っていた。
誰よりも仲間思いの彼が仲間に牙を剝き、今後正常でいられるはずはないだろ・・・・
彼は、何かを想い自分に仲間に悔いているのに・・・
これからもっと重い十字架を背負って過ごして行かなければならない・・・
今回の件は誰のせいでも無いのは知ってはいるが、事を起こした者が誰に許されても自分を許すことが出來ないのだ・・・
零士なら、そんな男だから更に自分を許せずに生きていくのだろう・・・
そう思うと優の心は重くなっていた。
すると、がある事に気が付き
「なぁ、あれだけ零士にを吸われた歩夢が今度は渇きが襲ってくるんじゃないか?」
その言葉に快は驚いた表になる。
「な、なら、青空の持ってきた輸パックを・・・・」
そう言うと走り出そうとしたが、優に腕を摑まれ足を止めた。
「輸パックでは、もう間に合わない・・・渇きよりも消滅がやって來るだろう・・・」
優の冷たい目に、快はどうしてよいか分からず立ち盡くしていた。
「なら、優はどうするつもりなん?お前が、このまま仲間を見捨てるとは俺には思えないけどな」
は何故かこんな狀況が楽しいのか嬉しそうにニヤニヤしながら鼻をりながら言うと、優はの表を見て大きなため息を聞かす
「・・・・ゲストを連れてこよう」
それだけ言うと、靜かに霧と変わり快との目の前から消えてしまったのだった。
殘された快は、これからの事を思うと不安に押しつぶされそうだった。
「なんで彼を・・・・」
そう疑問を呟いた。
すると、水が撒かれた廊下や割れた壁や天井を見ながらが
「歩夢のダメージからして、あそこまでになったら人間のしか助けられんと思うで・・・」
そう考えるように言うと、快はに詰め寄り
「でも、彼のを飲んだら、歩夢は人に戻ってしまうんだよ!
もう、僕たちの仲間じゃなくなるんだよ!」
快の言葉には一瞬だけ考え込んだが直ぐに、快に冷靜になれと言わんばかりに
快のを軽く押すと
「なぁ、アイツが俺らに不利になる事をしたことがあったか?
アイツには考えがあると思うで・・・」
そう言うと快を元気付けようと満面の笑みを浮かべた。
快には、優の考えもの考えている事、言おうとしている事が分からなかった。
ただ、仲間が分裂していくことを傍観している自分に苛立ちをじていたのだった。
そして、この家族がバラバラになる恐怖をじていたのだった。
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