《仏舎利塔と青い手毬花》第一章 過去 第一話 葬儀
 
黒い服に、黒いネクタイをした男が2人で話をしている。
葬式に參列して、顔なじみに會って近況を話し合っているようにも見える。
「なぁ」
「なんだよ」
しかし、二人はここ4ヶ月で、3回の葬式に參列して顔を會わせている。
「し葬式が多くないか?」
「あぁ?そうか?こんなじじゃないのか?」
4回をないと考えることはできそうに無い。
しかし、二人は多いと考える事ができなかった。
「おっ西沢!久しぶりだな」
西沢と呼ばれたが立ち止まって二人を見る。
「なに?立花くんも山崎くんも來ていたのね」
「そりゃ來るよ。同級生の葬式だからな」
「二人が來るなんて珍しいわね」
ここ4ヶ月で3回目の參加となるが、同級生だけで6人が死んでいる。同級生の関係者を含めるともっと多くなる。
「そういう。西沢も滅多に來ないよな?」
「え?全部參列したわよ?私が同級生だと思った人たちの葬儀には參列したのだし十分でしょ?」
立花と呼ばれた男と山崎と呼ばれた男がお互いの顔や、自分たちが參列した葬儀を考えた。
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そして、二人はくぐもった笑い聲を発した。
「たしかに、俺たちが參列しなきゃならない葬儀は3回だったな」
「そうでしょ?それよりも、立花くんも山崎くんも同窓會はどうするの?」
3人の所にも、同窓會の案は來ていた。
この同窓會は、しだけ問題がある。主催として名前が書かれていた人が、事故で死んでしまっているのだ。
しかし、代金はすでに支払われているために中止にする必要もない。
それだけではなく、小學校時代はいろいろと問題が有ったのだが、立花としては同窓會に出てし疎遠になっている、自分が考える同級生たちと話をしておきたかった。山崎と西沢も細かい理由は違うが、同級生たちと話をしたいのは同じだ。
「そうだな。俺は、出席しようと思っている」
「え?どうして?こういうのは、嫌いだと思っていたわよ」
「嫌いだけどな。親父が次の選挙の前に引退するからな」
立花議員は、県議會から國政に移して連続7期務めた。與黨の中でも中堅派閥の取りまとめ役をやって、副大臣と大臣を務めた。その立花議員の地盤をけ継ぐのだ、いきなり國政選挙では勝ててもギリギリと推測されている。そのために、まずは県議會に出馬して実績を作ってから、父親が引退する時に、地盤を引き継いで國政に出ると宣言する予定なのだ。
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立花は、數名の同級生を陣営に加えたいと考えていた。山崎には、先程話をして了承の返事を貰っている。
「へぇーそうなの?それじゃ、その前に箔を付ける為に選挙に出るの?」
「あぁ再來月に予定されている県議會選挙に出る。そうだ、西沢。お前の旦那。IT會社の社長だったよな?」
「え?えぇそうよ」
西沢は、急に旦那の事を聞かれて、驚いたのだが、社長夫人という肩書は虛栄心を満たすのには十分な役割を持っている。
「選挙のことで相談したいことがある」
「いいけど・・・」
「なんだよ?」
「IT関係なら、山崎くんの所でもできるわよね?」
急に、話を振られた山崎は立花と西沢の顔を互に見てからため息をついた。
「立花にも言ったけど、俺の所でもできるけど、畑違いだ。俺の所は、親父の會社に関係するソフトウェアを作っているだけだからな。報収集は得意じゃない」
山崎が”俺の所”と表現したのだが、彼の會社ではない。西沢が自分の旦那の會社と表現した為に、虛栄心を満たすために”俺の所”と表現したのだ。
父親が社長を務めている企業の子會社であり、社長は別に居るのだ。山崎は、そのIT會社に専務として働いている。
もっと正確に言えば、籍を置いてあるだけで実質的には何もやっていない。システムのことも一切わからないのだ。
そして、山崎が斷ったのは、できるかできないか判斷できなかったこともあるが、立花という男の格を理解しているからだ。
問題が出てこなければいいのだが、しでも立花の思っているのと違う方向に事がき出したら、間違いなく癇癪を起こす。周りにあたるだけならいいが、契約を無條件に破棄した上で賠償金を払えと平気で言ってくる。部下は奴隷で、取引相手は召使いとでも思っているように振る舞うのだ。
そんな相手と仕事がしたいとは思えないでいたのだ。山崎にとって立花は利用できる知り合い以上ではないのだ。これは、立花も同じだ。だからこそ、自分の本丸には相手を近づかせないのだ。
「へぇそうなの?旦那の所なら、なんでもできるから、大丈夫だと思うわよ?」
西沢は見栄でそう答えた。山崎ができないと言ったことを、自分の旦那が”できる”のは気分がいい。
立花に近づく為にも好都合だ。西沢の夫が社長をしているIT會社は、公共事業に近いを他の企業に回して利ザヤを稼いでいる、中間搾取會社なのだ。自社に技者は居る。しかし、ほとんどが営業職で、肩書だけ”SE”を名乗っていたりする。実際には、システム構築ができるのか怪しい者も多く在籍している。
「それは助かる。山崎。俺は、ITのことがわからん。西沢のことは信頼できると思うが、誰か目端の利く奴を紹介してくれ」
立花も馬鹿ではない。暴で、気分しだいで、暴力をいとわないが、馬鹿ではない。自分が得意としていることと、苦手としていることの區別はできる。できると自分で思っている。そして、騙されるのが一番キライなことなので、責任を転嫁できる相手を最初から用意しておくことにしたのだ。
山崎も、西沢も、立花の言っていることは解るが気持ちがいいことではない。
3人の間に微妙な沈黙の時間が流れる。
「お!お前たち!」
「「「え?杉本(先生)?」」」
誰が、先生の呼稱を付けたのか説明する必要が無いだろう。
3人に聲をかけたのは、間違いなく小學校の擔任だった。杉本先生である。キャンプ中にが行方不明となる事・故・があり、責任を取って一時的に休職扱いになっていたのだが、數年後に他県で復帰して去年から問題が起きた小學校で副校長を務めている。
これだけ聞くと、立派な教育者に見えるのだが、コネをフルに使って問題を矮小化して報告して処分を免れていた。実際に、擔當していた生徒が1人行方不明になっている。それもいじめられていた生徒だ。いじめていた者たちの親が社會的な地位があり、恩を売る形でいじめの事実を隠蔽したのが、杉本教諭だったのだ。
「君たちに聞きたいことがあって探していました」
「俺たち?」「私?」
「そうです。立花くんと山崎くんと西沢さんと、あと1人は・・・。確か・・・日野さんだったと思うのですが・・・。最近、の回りでおかしなことが起こっていませんか?」
杉本教諭の問いかけに、微妙な表をする3人。
「それと、三好くんに山中くんに、金子さんに古谷さんだったと思うのですが、何かきいいていませんか?彼らも來ていると思ったのですが、來ていないので、まずは見つけた君たちに話を聞くことにしたのです」
「え?」
「はぁ?」
「・・・」
三者三様の反応だが、彼らが今日の葬儀に參列したのも、杉本教諭が參列したのも建前の理由は別にして、本的な理由は同じだったのだ。
4人の手元に屆けられた、同窓會の案と同時に屆けられた手紙がある。
容はそれぞれ違うものだったのだが、無視できるような容ではなかったのだ。
差出人が、”須賀谷真帆”となっていたのだ。
いじめを苦に行方不明になったからの手紙が添えられていた。それを確かめる為に、4人は葬儀に參列したのだ。
杉本教諭が上げた8人の名前(立花/山崎/三好/山中/西沢/日野/金子/古谷)は、真帆をいじめていた側の人間なのだ。勿論、3人には杉本教諭が何を聞きたいのか解っている。解っているのだが答えられない。なぜなら彼らもまたそれを確認したいと考えていたのだ。
「杉本。それで、お前はなんて招待をけた?」
立花が発したこの言葉は、立花が目の前に居る3人以外と接して、報を得ている証左である。
しかし、自分以外にあまり関心がない3人は、立花が言った言葉を深く考える事なく、話を流してしまった。
立花は、招待狀を送りつけられてから、”須賀谷真帆”の名前から自分を貶める一派が有るのだと推測した。そして、父親の権力を使って調べさせた。
今、4人が參列している葬儀も、”須賀谷真帆”からの招待狀をけ取っていた1人だった。
4人は、その場では同窓會に顔を出すことだけを確認して、”須賀谷真帆”からの招待狀に関しては、言及しないまま別れた。
過去の事象が現実に牙を向き始めたことを認識した。
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