《仏舎利塔と青い手毬花》第二章 キャンプ 第一話 お泊まり會
「桜!」
「なんだよ」
そこは、篠崎家のリビングだ。
森下桜は、悪友で隣に住む篠崎克己の家をたずねている。
お互いは馴染だと言っていい関係だ。
二人は、生まれ育った町に家を新築した。隣り合った土地が空いていた事や、とある事で安く購する事ができるなどのいくつかの偶然が重なった結果だ。二人とも、実家は別にある。実際には、篠崎克己には実家と呼べるは無い。両親や親戚は、全て他界してしまっている。篠崎克己には、妻の沙菜と息子の巧が居るだけだ。
森下桜には、母親は存命だが隣町に引っ越してしまっている。
篠崎克己は、IT企業を経営している。開発だけではなく、運用や導支援を行っている。元々、大手ベンダーに努めていたのだが、こちらも事が合って辭めて地元に戻ってきた。名前で仕事が取れる人だったので、ベンダー絡みの案件だけではなく、いろいろな仕事が舞い込んできている。
風変わりな二人だが、気があったのは間違いない。
結婚した時期も同じで子供も同い年になっている。
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今年、子供たちは小學四年生になる10歳だ。
「お泊まり會は行かせるよな?」
「ん?あぁそうだな。タクミは?」
「”行く”と言っている」
「そうか、ユウキと同じ班だよな?」
「そう聞いている」
「そうか、それじゃ問題はないな」
二人の両親は、お互いの子供が同じ班にっている事は知っている。以前・・・。桜と克己が子供の時に參加したお泊まり會では、男6人が班となってテントで寢泊まりしたのだが、いろいろ問題が発生したり、新しく住民になった者たちから反対が有ったり、世間的な事もあり、今ではキャンプ場に建つロッジを使った2泊3日のお泊まり會に変更されている。
あんな事件があった後で中止の聲も多數上がったが、學校や地元衆が自由參加だから、気にらなければ參加しなければいいと言って、反対派の意見を封殺した。二人は、どちらでもいいと考えていた。二人の子供が心配ではないのかといわれると微妙なところだろうが、何があっても大丈夫と言えるくらいには信頼をしている。それに、二人は”須賀谷真帆”や”那由多”が本當に絡んでいたとしたら、自分たちの子供に”なにか”するはずがないと思っている。そのくらいの信頼関係はできていると思っている。問題は、自分たちの子供が特に、好奇心が旺盛だということだが、それはどうにもならない事だと諦めるしか無い。
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「それで、桜。進展は?」
「さぁな。俺は外されていると言っただろう?」
「それでも、俺たちよりは報を持っているだろう?沙菜も和も聞きたいだろう?」
聞き耳を立てているお互いの妻の名前をあえて出す事で、桜の逃げ道を塞ぐのだった。
桜は大きなため息を付いてから
「何も解っていない」
「え?」
一番に反応したのは、桜の妻の和だ。
「なんだよ。多分、マスコミに近い。和の方が報を知っていると思うぞ?」
「そうなの?」
「あぁ結局、解っているのはあの場所で人が死んだことだけだ」
克己が気になっている事を桜に聞いた。
「なぁ桜。それで那由太は?」
「あぁ・・・。捜査本部は、居場所を摑んでいるようだけど、俺には知らされていない。解っているのは、那由太は今回の件には全く無関係だという事だ」
「そうか、會えないのは殘念だけど、関係ない事がわかっただけでも十分だな」
「あぁそうだな。元気らしいぞ」
「そうか・・・」
二人の間に微妙な空気が流れる。
心配しているのは間違いないが、事が解っているだけに、克己も桜に無理を言う事はできない。桜も、克己が何をんでいるのか解っているのだが、自分から言い出す事はできない。
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「ねぇ克己さんも、桜さんも、和さんも・・・。今は、タクミとユウキちゃんの事よね?」
沙菜は、4人の中で1人だけ、年齢が離れている。
そして、1人だけ生まれが違うのだ。地元で生まれ育ったわけではなく、克己が都會に出ていた時に知り合ったのだ。和からある程度の事を聞いているので、疎外をじる事はないのだが、それでもやはり3人の中に流れる空気が羨ましく思う事は多い。
「う・・ん。大丈夫だろう?」
「克己さんがそういうのなら信じるけど・・・」
「沙菜さん。大丈夫だと思いますよ。今年から、校長がシマちゃんだから、いじめのような事は絶対に許さないと思うからね」
「うん。わかった。それじゃ準備をしないとね」
「沙菜さん。タクミの荷の中に、ユウキの著替えを數著れてほしいけどいいかな?」
「いいですよ?あっそうね。その方がいいね。タクミには言っておくよ」
「ありがとう。でも、大丈夫だとは思うけど、ユウキだからね」
「わかった」
ユウキにはし困った癖がある。
困っている人を見ると助けたくなってしまう。その結果自分が困る結果になっても、構わず手を差しべてしまうのだ。
以前、友達の家にお泊まり會をしたときに、”おねしょ”をした友達に自分の著替えを渡して、自分は下著を履かないで帰ってきた事がある。
それから、タクミにユウキの著替えを持たせる事にしているのだ。
二人の妻は、お互いの子供が持っていく荷の準備を始めるのだった。
桜と克己は、今解っている報から何が読み取れるのかを検討するのだが、何もわからないという結論に達するまで時間はかからなかった。
---
「え?シマちゃん?校長先生?」
「桜・・・。その呼び方はやめろと何度言えばいい?」
「あっそうですね。すみません。長・嶋・校・長・先・生・」
「はぁ・・・まぁいい。それよりも、タクミくんとユウキちゃんの準備は?」
「終わっていますよ。おい。和。沙菜さん。シマちゃんが、迎えに來たぞ!」
奧から、し待ってと返事が來た。
「ふぅ・・。お前のところは相変わらずだな」
「シマちゃん・・・。俺たちは、あの時から何もわかりませんよ」
「そうだな」
「あのバカが出てくるまで、ここで待っていますよ」
「そうか・・・」
タクミとユウキの小學校の校長は、桜と克己と和の中學校時代の擔任教諭なのだ。
それが回り回って校長をやっている。いろいろ問題がある學校なので、問題解決に盡力した長嶋教諭に白羽の矢が立ったのだ。
長嶋教諭も、自分が何もできなかった事を悔やんでいて、自分でも何かができるかもしれないと思って、校長を引きけたのだ。
「あ!校長先生!」
準備が整った、ユウキが家から出てきた。
後ろから、タクミも出てきた。タクミの荷が大きいのは、ユウキの著替えやらがっているためだろう。
「パパ!克己パパ!行ってきます!」
「おぉ気をつけろよ」「あぁタクミ。ユウキを頼むな」
「うん。行ってきます」
小學4年とは思えないタクミの返事は別にして、二人は校長に連れられて、他の生徒と合流するのだった。
お泊まり會は任意での參加が建前で、學校の行事ではない。
そのために、ボランティアで先生が參加する事になっている。
校長は、事があってお泊まり會には參加できない。そのかわり、全員を學校に送り屆けるようにしているのだ。
「行ったな」
「あぁ」
桜と克己は、二人の息子と娘が乗ったバスが角を曲がっていくのを見送るのだった。
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「あぁ!唯ゆい」
「おはよう!ユウキ!」
ユウキは、バスの中に同じ班のの子を見つけて聲をかけた。
班は6人ですでに決まっている。
お泊まり會の案に書かれている。タクミとユウキと唯は同じ班になっている。
「あのね。ユウキ。マユちゃんが來られないって聞いた?」
「ううん。初めて聞いた。タクミは知っていた?」
タクミは急にふられて困しながらも知らなかったと答えた。
學校に到著して、バスを降りる3人に駆け寄ってきたのは、一緒の班になっている二人だ。
「おはよう。ユウキ。唯。タクミくん」
雙子のの子である。鳴海が挨拶してきた。
「おはよう。ハルちゃんは?」
「ユウキ。何度言えば間違いを訂正する!ボクは、男だから、”ちゃん”はやめろ」
「おはよう。晴海はるみ。鳴海なるみ。早いな」
「うん。父さんに送ってもらった」
タクミと晴海は、挨拶をする。
二卵雙生児である、晴海と鳴海は雙子だが格はかなり違っている。元々は、違う班だった晴海と鳴海だが、ユウキと鳴海が先生に掛け合う事で、同じ班にしてもらったのだ。1人っていた子は、それほど中がいい子ではなく、その子も別の班が良かったと言っていた。學校行事ではないので、この辺りはゆるくなっている。
お泊まり會の部屋割りや作業の都合上、6人で班を作る事になっている。
學校から、キャンプ場までは歩いての移となる。
10歳の男と先生での移となる。キャンプ場は、山の頂上付近にあるが、700mちょっとの山なので、登るのにもそれほど苦労しない。
登山道も整備されていて、キャンプ場ま・で・は比較的安全に移する事ができる。
朝方に學校を出発して、山道を歩く事3時間。
目的地に到著した一行は、予定通り持ってきた弁當を食べてから、班ごとに活を開始する事になる。
タクミとユウキは、晴海と鳴海と唯と一緒に明日の晩に行われる肝試しの準備をする事になっている。
準備と言っても、大抵の準備は先生が行っているので、タクミたちの作業は肝試しのときに歩く道の掃除をするくらいだ。
肝試しは、キャンプ場で先生の話を聞いてから、班ごとに近くにある仏舎利塔とまで歩いていって、そこで先生をえた手紙の換をして、帰ってくるという至ってシンプルなだ。これは、親の世代から変わらない。
この地方にだけ見られる現象なのかわからないが仏舎利塔が星型になっている。その頂點になっている場所に手紙が置けるようになっている。先生が一度手紙を預かって、仏舎利塔の所定の位置に手紙を置く。
皆が所定の位置についた事を確認した先生が、聲をかけて、手紙を持って次の人に手渡す事になる。一周ぐるっと回って、皆が手紙をけ取ったら、功となる。手紙は、誰宛でもいいのだが、順番は班で先に決めて先生にお願いしておく事になっている。
どこが肝試しになるのかと言うと微妙だが、先生の怖い話を聞いた後で懐中電燈一つだけ持って街燈が無い場所を歩く事は十分な恐怖心を掻き立てられる。それだけではなく、聞いた事が無い蟲やの聲が聞こえてきて案外怖い。
それだけではなく、仏舎利塔では1人になって皆が一周するのを待たなければならない。懐中電燈があるとは言え心細いのは間違いない。
歩き慣れた道ではない場所で、聲は聞こえるかもしれないけど、普段と違ったじで聞こえる友達の聲。
早い子たちでも、一周するのに、10分くらいはかかってしまう。
タクミたちは、仏舎利塔までの道に落ちているゴミを拾っている。
「先生!草は切らなくていいの?」
ユウキが、先生に質問をしている。
道幅は、それほど広くはないが、通れないほどではない。邪魔になりそうな草はすでに先生たちが刈ってある。
「大丈夫。大きな石やゴミを拾って」
「はぁーい」
他のゴミ拾いをしている子たちも一斉に答えるのだった。
一日目の夜は、キャンプ場でみんなで作ったカレーを食べて終わるのだった。
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