《仏舎利塔と青い手毬花》第四話 肝試し
夕飯が終わって、キャンプ場に集められた生徒たちは座って、先生が離す怪談を聞いていた。
”キャァァ!!”
”ヤメロ!”
誰が言ったのは名譽のために伏せておこう。
しかし、タクミたちではない事だけは確かだ。
タクミたちの班は一箇所に集まって話を聞いているのだが・・・。
”フッフーン。怖くなんて無い”
ユウキが口ずさんでいるが、タクミの服の裾を離す気配はない。同じく、鳴海は晴海を後ろに座らせて、自分の背後を守らせている。
怪談は、よくある話だ。
よくある話だけに怖いのだ。そして、積み重ねられた歴史が怖さを増す働きをしている。
アレンジして今日これから行われる肝試しに特化したものにしているのだ。地域的にの頃から聞かされている話が加えられている。毎年バージョンアップして徐々に怖くなっていくのだ。
肝試しも、怪談話に沿った狀態で脅かす準備がされている。
タクミたちの順番は最後だ。
それまで、この場で待機する事になるのだが、別にこの時間で遊んでいるわけではない。
Advertisement
先生たちは、各班に引率する形になるし、脅す側に回っている先生も人數が多いわけではない。安全に肝試しを行う必要が有る。細心の注意を払ってはいるが、子供は急に予想を超えるきをする。
特に今年は、伝説になっている森下桜と篠崎克己の子供が居るのだ。
タクミたちの引率は、擔任が行う事になっている。
順番まで待機しているのだが、なぜか肝試しを行うタクミたちよりも、擔任が張している。
擔任が張しているのも當然なのだ。
まず、最初に擔任はタクミたちの事を誤解している。”問題児”だと認識しているが、それは大人からみた認識でしか無い。タクミたちは問題を起こしたわけではない。ただ目立つのだ。勉強が飛び抜けてできるわけではない。運が飛び抜けてできるわけではない。でも、全ての事で名前が上がるのだ。多才というのがいいのだろうが、天才というわけではない。それなりの努力をしているし、頑張っても居るただ凄まじく効率がよく、頭の回転が早いのだ。
Advertisement
擔任からみたらそれが問題行に見えてしまう事も多い。
そして、擔任が張している一番の理由は、擔任が森下桜と篠崎克己の後輩だという事だ。
サクラたちの4つ下。サクラたちの影響をけた者たちなのだ。特に、狹い町であるために、伝説を話しとして聞いて育ったのだ。
在學中に接するチャンスが有れば違ったのだろうが、4つ下だとサクラたちの卒業と同時に學する事になる。中學での出來事を噂話や先輩からの伝説として聞かされる事になる。
その伝説の先輩たちの子供を引率する事になるのだ。張するなという方が無理なのかもしれない。そして、し前に発生した事件の事も頭の隅に殘っている。ここまで問題なく事が進んでいる。最後の最後で問題が出てしまっては困るのだ。
擔任は班の1人が休んでいる事をすっかり忘れてしまって居たのだ。
タクミたちの順番が來た。手紙は、すでに仏舎利塔で待っている先生に渡してある。
擔任は、スマホでタクミたちが今から出発すると連絡するだけでよいのだ。
昔は無線機を使っていたのだが、スマホのSNSを使えばそれらも簡単に行う事ができる。
そして誰が開発したのかわからないが、度の高いGPSを使って班の位置を認識して、おばけ係の先生に伝える事ができるようになっている。
「タタタタッタクミ」
「ユウキ。唯も落ち著けよ。大丈夫。大丈夫」
「だって・・・。ひっ!」
鳴海は、晴海に後ろを絶対に守れと命令して、晴海の前を歩いている。
ユウキと唯は、タクミの服の裾を握って後ろから続いている。
簡単に説明すると、タクミ→ユウキ・唯→鳴海→晴海の順番で歩いている。し距離を取って擔任が続いている。
脅す方も素人なので、子供だまし以上の脅しは無いのだが、雰囲気はバッチリなのだ。
幸いな?事に月も出ていない。空は曇天と表現していいだろう。そして、海からの生暖かい風は山頂付近まで屆いている。溫められた海風だ。海岸沿いに住んでいる者しかわからない、獨特の生臭さを含んでいる。
暗い夜道に、生暖かい風、遠くの町明かり。そして、終わりに近づいている夏漁の船の明かりが漆黒の海に漂っているのが見える。
風が吹けば、木々が葉や枝をれ合わせて、不自然な音を鳴らす。
木々の鳴く音とは別に首切り螽斯の鳴く聲が恐怖を掻き立てる。
草むらや周りから聞こえてくる、”ジー・ジー”という鳴き聲が、自分たちが近づくと鳴り止むのだ。
視線をじるわけではないが、監視されているのではないかという恐怖心が芽生えるのだ。
直前で聞いた先生の怪談話も、監視されている恐怖を伝えるだ。
「タクミ・・・」
「ユウキ。けない聲をだすなよ。唯。引っ張るな!」
タクミが指摘した事とは別にユウキは唯と手を繋いで、タクミの服の裾を引っ張っている。
タクミは裾を引っ張られながらし歩きにくいと考えていた。
何度か數えていないが、お化けの登場でタクミは慣れてしまっている。
怖くないかと言われれば、怖い事は怖い。しかし、人は自分以上に怖がっている人が居ると怖さが緩和される生きのようだ。タクミは、その傾向が強い。それでも、後ろで怖がって驚かれると反的に行を起こしてしまうのはしょうがないことだろう。驚いた人の聲で驚くのだ。
音がするとそちらの方向を見てビクッとを震わせる。
その都度、裾を引っ張られてタクミは勢を維持するだけで一杯な狀況だ。この位の年齢では、の子の方が、力が強い事が多い。そして、タクミの裾を二人が握っているのだ。勢を維持出來ているだけでもすごい事だと思える。
「あ!」
鳴海が大きな聲を上げる。
「仏舎利塔!」
鳴海の聲をきっかけに、闇夜に塔が見えてきた。
ライトアップなどはされていないが、手に持っている懐中電燈で照らせば、石造りの塔は闇夜でもよく見える。
「さぁ皆」
引率していた擔任が皆の前に出てきて聲をかける。
「解っているよ!先生!」
晴海が軽い口調で言うのだが、しだけ聲が震えているのはやはり怖いからなのだろう。
前に鳴海が居たために、大丈夫と自分に言い聞かせていたのだ。
順番は決められている。
手紙はすでに角?に、置かれている。
順番は、ユウキの意見と言うよりも陣の意見が採用されている。
唯から開始される。
唯は、鳴海に手紙を渡して、鳴海は晴海に、晴海はユウキに、ユウキはタクミに、タクミは本來なら今日來ているはずのマユにわたすのだが、休みのために先生に渡して、當初の予定どおりに、後で先生が唯に手紙を渡す事になっている。
星型になっている仏舎利塔の星の先に1人ずつ立つ。そして、仏舎利塔の周りをぐるっと廻る事になる。
唯がし大きめの聲で
「い、今から行きます」
そう言うと、唯は歩き出した。鳴海の所まで、2分程度だろうか?暗いなかで、懐中電燈一つだけ持って、歩いている。
唯は、怖いけど一歩、一歩、踏みしめるように、確実に歩いている。
ユウキが言っていた、皆が歩いた後だからという言葉を信じて、懐中電燈で道を照らすと、確かに沢山の足跡と思えるが見える。
足跡を數えながら歩いていると、怖さがしだけ抑えられるような気がしている。
そうして、數歩行った所で、ふと何か溫かいをじた。
お母さんのような溫かさをじた。気のせいなのかもしれないが、唯は耳元で”大丈夫。怖くない”と何度も、何度も話してくれるの子が居るようにじていた。
唯は、その聲と溫かなで怖さを忘れる事ができた。
「鳴海ちゃん!」
「唯!」
二人は、お互いの懐中電燈のを認識した。
「はい」
「うん!ありがとう」
手紙を渡して、唯はこれから1人で待っていなければならない
「鳴海ちゃん。早く帰ってきてね」
「うん。私も怖いから急ぐよ」
鳴海は、それだけ話して、唯の手をぎゅっと握ってから、一言二言わしてから、雙子の片割れの所に向った。
「うぅぅぅ怖いな」
さっきまで鳴海と二人で居たからだろう。
怖さがぶり返してきている。唯は、遠くに揺らめく街の燈りを見ている。
「ママとパパ。私の家の燈りはどれかな?」
(あれだよ)
「え?」
唯は、誰かが耳元で囁いた聲を聞いた。
そして確かに、白い腕がある方向を指さしたとじていた。
「だれ?」
誰も答えない。
でも、確かに誰かが居る。
でも、怖くない。
「ママ?」
その問にも答えてくれない。
唯は、不思議と母親である。スズをじていた。
【書籍化/コミカライズ決定】婚約破棄された無表情令嬢が幸せになるまで〜勤務先の天然たらし騎士団長様がとろっとろに甘やかして溺愛してくるのですが!?〜
★書籍化★コミカライズ★決定しました! ありがとうございます! 「セリス、お前との婚約を破棄したい。その冷たい目に耐えられないんだ」 『絶対記憶能力』を持つセリスは昔から表情が乏しいせいで、美しいアイスブルーの瞳は冷たく見られがちだった。 そんな伯爵令嬢セリス・シュトラールは、ある日婚約者のギルバートに婚約の破棄を告げられる。挙句、義妹のアーチェスを新たな婚約者として迎え入れるという。 その結果、體裁が悪いからとセリスは実家の伯爵家を追い出され、第四騎士団──通稱『騎士団の墓場』の寄宿舎で下働きをすることになった。 第四騎士団は他の騎士団で問題を起こしたものの集まりで、その中でも騎士団長ジェド・ジルベスターは『冷酷殘忍』だと有名らしいのだが。 「私は自分の目で見たものしか信じませんわ」 ──セリスは偏見を持たない女性だった。 だというのに、ギルバートの思惑により、セリスは悪い噂を流されてしまう。しかし騎士団長のジェドも『自分の目で見たものしか信じない質』らしく……? そんな二人が惹かれ合うのは必然で、ジェドが天然たらしと世話好きを発動して、セリスを貓可愛がりするのが日常化し──。 「照れてるのか? 可愛い奴」「!?」 「ほら、あーんしてやるから口開けな」「……っ!?」 団員ともすぐに打ち明け、楽しい日々を過ごすセリス。時折記憶力が良過ぎることを指摘されながらも、數少ない特技だとあっけらかんに言うが、それは類稀なる才能だった。 一方で婚約破棄をしたギルバートのアーチェスへの態度は、どんどん冷たくなっていき……? 無表情だが心優しいセリスを、天然たらしの世話好きの騎士団長──ジェドがとろとろと甘やかしていく溺愛の物語である。 ◇◇◇ 短編は日間総合ランキング1位 連載版は日間総合ランキング3位 ありがとうございます! 短編版は六話の途中辺りまでになりますが、それまでも加筆がありますので、良ければ冒頭からお読みください。 ※爵位に関して作品獨自のものがあります。ご都合主義もありますのでゆるい気持ちでご覧ください。 ザマァありますが、基本は甘々だったりほのぼのです。 ★レーベル様や発売日に関しては開示許可がで次第ご報告させていただきます。
8 62TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―
【イエス百合、ノーしりあす!】 好きな人を守って死んだ男子高校生が、前世と同じ世界でカリスマ溢れる美少女として転生! 前世の記憶と神様からの恩恵を使って、彼女は前世では出來なかったことを送っていきます。 妹や親友たちに囲まれて幸せな日々を送る、ほんわかユルユル女の子たちのハートフルコメディです。 全編、女の子たち(主人公含めて)が楽しく日々を描いております。 男はほとんど登場しません(ここ大事)。 頭を空っぽにしても読める、楽しい百合を目指しています! 前書き後書きは最新話のみ表示しています。 ※現在一話から読みやすいよう修正中、修正後の話には『第〇〇話』と付けております。 ※小説家になろう様・カクヨム様・アルファポリス様にも投稿しています。
8 158エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。もう一度もらった命。啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。 前世の知識を持った生き殘りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、アルファポリス、ツギクルにも投稿しています。
8 108転生して帰って來た俺は 異世界で得た力を使って復讐する
*この作品は、8~9割は殘酷な描寫となります。苦手な方はご注意ください。 學生時代は酷い虐めに遭い、それが影響して大學に通えなくなってからは家族と揉めて絶縁を叩きつけられて獨りに。就職先はどれも劣悪な労働環境ばかりで、ブラック上司とそいつに迎合した同僚どもにいびられた挙句クビになった俺...杉山友聖(すぎやまゆうせい)は、何もかも嫌になって全て投げ捨てて無職の引きこもりになって......孤獨死して現実と本當の意味でお別れした...。 ――と思ったら異世界転生してしまい、俺に勇者としての素質があることに気付いた國王たちから魔王を討伐しろと命令されてしぶしぶ魔族たちと戦った末に魔王を討伐して異世界を平和にした。だがその後の王國側は俺は用済みだと冷たく言い放って追放して僅かな褒賞しか與えなかった。 だから俺は―――全てを壊して、殺して、滅ぼすことにした...! これは、転生して勇者となって最終的にチート級の強さを得た元無職の引きこもり兼元勇者による、全てへの復讐物語。 カクヨムにも同作品連載中 https://kakuyomu.jp エピソードタイトルに★マークがついてるのは、その回が過激な復讐描寫であることを表しています。
8 82種族ガチャ
主人公の蘆汝遊矢は最新VRMMOのゲーム〔アーカイブオンライン〕をクジの景品で當てたためはじめてみるかとゆう。ちょっとした興味から始まる、初めてのゲームの世界をまったりレア種族でいろんな人とゆっくり遊んでいくはずの物語。 ※VRmmoからは途中から離れて、いっときしたら戻ります。
8 82ちょっと怒っただけなんですが、、、殺気だけで異世界蹂躙
子供の頃から怒るとなぜか周りにいる人たちが怖がりそして 気絶した。 主人公、宮城ハヤトはその能力を絶対に使わぬよう怒らないようにしていた。異世界に転移するまでは、、、 「なんで俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ!このクソボケがーー!!!どいつもこいつもムカつく奴は俺のスペシャルなドロップキックをプレゼントしてやるぜ!?」 最強系ブチ切れ主人公のストレス発散異世界物語です。 ギャグ要素も入れていくので気軽に読んでください。 処女作なので読者の方々には生暖かい目で見守っていただけたら幸いです。5日に1回更新予定です。
8 124