《スターティング・ブルー〜蒼を宿す青年〜》序章 ─ 始まりのゼロ ─

20✕✕年、12月30日。第十三階層都市カグツチでは新年が近いという事もあり、そこかしこが賑わいを見せていた。そんな中、青い制服にを包んだ軍の関係者らしき人達が誰かの顔と賞金が書かれた紙切れをそこら中にっていく。その景をじっと見ていた人々が首を傾げているとリーダー格らしき人が高らかに宣言した。

「今日、此処カグツチにSS級統制機構反逆者、ラグナ=ザ=ブラッドエッジが侵した。我々統制機構はこの男を全力で探している。何か報があればすぐ我々統制機構に伝えるように。無論、捕らえて我々に引き渡すもよし。尚、この男を庇う、もしくは隠すような真似をする場合、その者も反逆者とみなす。常々、覚えておくように」

それだけ言い殘すと、青い制服…統制機構の人々は隊列を崩さぬように去っていった。それと同時刻に白髪に赤いコートを著た青年が、おそらく階層都市の最下層に足を踏みれていた。彼こそがラグナ=ザ=ブラッドエッジ。又の名を…死神。だが、彼はまだ気づいていない。自分と全く同じ力を宿す青年が、此処カグツチに居るという事を──

場所は変わり、統制機構カグツチ支部の近く。そこに來るのは大抵が咎追いと呼ばれる人達。要するに賞金稼ぎだ。新年間近だという今日も數名程訪れていた。勿論、"死神"の報がしい為だ。統制機構は各地に支部を置く最大規模の組織の為、各地の支部から死神に関する報がってくる。勿論、希者が居れば提供もしている。だから、我先にと咎追い達が來る。そんな中、近くのベンチで呑気に晝寢をしていた青年が居た。長い布切れを厳重に巻いた大剣を傍らに置き、変に逆だった金髪をなびかせ、統制機構の関係者著ているような制服では無く若者が著そうなラフな格好に腰辺りまで屆く長めの黒いコートを著た青年。その右手には大剣に巻かれている布切れと同じものが巻かれていた。

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「……どいつもこいつも死神死神って、毎回のように聞かされる俺のにもなれって…」

そうボヤきながらを起こし、大剣を擔いでその場を後にする。こういう時は飯でも食って気を紛らわせばいい。そう思った彼は同い年の知り合いが運営する飲食店にお邪魔する事にした。

カグツチには著いた。後は統制機構を目指すだけだ。そこにある●●をぶっ潰す。だが、●●●が居るかもしれねぇ。どっちにしろ、"壊す"だけだ。

「そういや…師匠が言ってたな。何かが居る、今迄とは違う何かが、って。まぁ、俺には関係ねぇ」

だが、この時の俺は気づいていなかった。まさか、●●の前に居たのが"奴"だったと。そして、そこから俺の運命は百八十度変わってしまうと。

腹ごしらえが済んだ時には既に日が落ちていた。どれだけの時間食べていたのかはわからない。だが、おかげさまで満腹だった。

「…さてと。俺の目的を果たしに行きますか」

人気の無い表通りで呟いた後、統制機構を目指して走る。とある目的がある為、俺は咎追いとして街中にり込んでいる。本當は統制機構と敵対している第七機関と呼ばれる組織の一員だ。だが、研究員として彼処に缶詰め狀態になるのは好ましく無かった俺は咎追いとして生きる事を決めた。當時の上司には凄い恨めしい目付きで見られていたのを覚えている。それもその筈、研究員には思えない程の頭脳を持っていたからだ。あのココノエ博士と同レベルとまで言われたくらいだった。まぁ、當の本人は気にしていなかったようだが。

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「全く、皮なもんだね。自分から抜けた組織に利用されるってのはさ。ま、自業自得って奴かね」

そうボヤきながら軽々と統制機構の部に侵する。部構造は既に頭に叩き込んである。素早く且つバレないように…と思った所で気づいた。人が居ない。普通であれば衛士の一人や二人居る筈なのだが、俺が見た限りだと閑古鳥が鳴いている。

「…どーなってんだ?」

凄く気になる所ではあるが、今はそれどころでは無い。この狀況は偶然かもしれないからだ。衛士にバレたら咎追いどころか賞金首になりかねない。素早く地下へと続くエレベーターへ乗り込み、最下層まで行く。俺の目的は、そこにある。

────────────────────────

俺が統制機構カグツチ支部の前に辿り著いた時、ここら辺じゃ見かけねぇ奴の姿を見た。図書館の犬かと思ったがそうじゃねぇ。図書館の奴ならあの青い制服を著ている筈だからだ。

「咎追い、か…?なんだってこんな時間帯に。しかも図書館に用があるのか…?」

謎は深まるばかりだが、俺は俺の目的を果たす為に先にっていった奴の後を追うように図書館に侵した。そして、おそらく先に行った奴も同じ事を言ったただろう臺詞を吐く。

「……誰も居ねぇ。どーなってんだ?」

朝はよく見かけた衛士の奴等が一人も居ない。訳は分からねぇが俺にとっては好都合だ。地下へと向かおうとして、気づく。エレベーターはとっくに降りていた。先に行った奴のせいだろう。仕方なく、そのまま飛び降りる。數百メートルあろう高さから。だが、エレベーターは完全に降りきっていなかったから大丈夫だろう。

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暫くして完全に停止したエレベーターから降りた俺は、その先へ向かう。何も無いと思われる空間には低い場所、丁度足元辺りに霧を満たしていた。微量だが魔素が含まれているのを確認した後、通信機の電源をれた。繋ぐ先はあの人。

「ココノエ博士。目的地に著きました。次の指示を」

『嗚呼、ご苦労。次はそのまま奧へ向かえ。おそらくある筈だ、"窯"がな』

「了解っと…」

通信機の電源を一旦落とした俺は、ココノエの指示通りに奧へ向かう。窯とは、この世と境界と呼ばれる場所を繋ぐ門みたいなものだ。魔素という質はここから世界各地へと流れている。しかも、窯は各地の階層都市に存在するらしい。あの死神も窯が目的らしいが、真相は実際に會わないと分からない。

「さてと。窯があったら記録に殘すか破壊しろって言われてたな…破壊って、普通に壊すだけでいいんだよな?多分」

右手の布切れを一旦解く。そうして現れた右手は常人のものでは無かった。闇よりも深い黒で染められた右手…いや、右半がそうだ。傍から見た限りでは異形だろう。まるで怪のような手だからだ。服で隠せる部分は布切れを巻いていないが、右手だけは隠さないと々不味い。

「よし、やりますか」

右手で大剣を持ち、奧へ進む。その時、彼のズボンのポケットから一枚のカードが落ちた。どうやら分証らしい。名前の記欄にはこう書かれていた。

─────桐生   悠人(ハルト=キリュウ)と。

さて、目的地に著いた俺だが、先に行った奴が気になる。とりあえず奧へ向かう。地下の造りは何処の図書館も一緒だ。暫く歩いているとカードらしきものを見つけた。拾って確認してみる。どうやら奴の分証らしい。名前を見た時、何かが頭の中で引っかかった。

「ハルト=キリュウ?どっかで聞いた事あんな…」

記憶の片隅に引っかかった名前だったが、気にしないでおく。こんなのに一々注意を逸らされていては肝心な時に命を落としかねない。ひとまずその分証をポケットに突っ込み、先を急いだ俺だが、急に寒くなり始めた事に気づく。地下までは式と呼ばれるものが働いていない為、寒かったが、それとはまた違う寒さだ。その時、氷で出來た矢が飛んでくる。至極冷靜に真っ白い大剣で叩き割り、數メートル先に目をやると一人、そこに立っていた。金髪に図書館の制服、水の鞘に収まる刀。それを確認した後、俺は聲を荒げて飛び上がった。

「ジン!!!!!!」

著地の前に大剣を振り下ろす。ジンと呼ばれた青年は軽々と避け、一瞬で刀を抜刀する。そのままラグナの大剣と數回打ち合い、鍔迫り合いに。ラグナの方は力を込めているのか腕が震えているが、ジンの方は見下すような顔つきのまま鍔迫り合いをしていた。

「なんでてめぇが此処に居る!いやその前に聞きてぇ事が沢山ある!だがその前に、一回ぶった斬らせろ!!!!」

次々と罵聲に近い言葉を浴びせるラグナ。だが、ジンが放ったのは一言だけだった。

「さぁ……殺ろうよ、兄さん」

奧に辿り著いた時、誰かの聲と金屬音が響く。特に気になる訳でも無かった為、目の前にあるものに集中した。あるのは何の質で出來ているのか分からない門らしきもの。だが、初めて見る筈なのに妙な既視を覚えていた。

「……俺は、コレを知っている?いや、見るのは初めての筈だ。なのに、何だこの既視…」

その時、異形の右手が勝手に反応した。それと同時に頭の中に大量の報が流れてくる。多すぎてはちきれそうだ。吐き気もとめどなく來る。だが、必死で耐えていた時、唐突に治まった。何事も無かったように。

勝手に反応した右手。頭の中に流れてきた大量の報。謎は多いが今は目的を果たさないと駄目だ。ひとまず記録に殘し、大剣を構える。その時だった。辺りの様子が一変した。目の前にあった門らしきものがどんどん開いていく。中から出てきたのは銀髪の。最低限のインナーに三つ編みにして束ねた長い髪。その先には小さな剣がついていた。何より気を引いたのはの後ろに漂う巨大な剣。中心に神を彷彿とさせる絵柄が刻まれており、ある種の神々しさを漂わせていた。

「な、なんだよ……コレ」

初めてみる。それだけなのにの震えが止まる気配が無い。ここまで震えているのは初めてだった。が言うことを聞かない。持っている大剣を落としそうになる。そんな中、目の前のが口を開く。

「起。起。起。起。起。認識。」

紡がれたのは機械を連想させる言葉。生きている筈なのに何処かしら機械的だ。

「対象、認識。同一と認識。貴方、誰。」

同一。目の前のは俺を自分と同じと認識したらしい。それはそれで謎だったが、俺は俺だ。何者でも無い。だから名乗ってやった。

「俺は、桐生悠人。只のしがない咎追いだ」

「対象、再認識。蒼、蒼、蒼。対象、蒼を保有。」

蒼?俺にか?そんな訳無い。蒼と言えばあの死神が持っている。俺には無い筈だ。なのに、目の前のは俺に"蒼"があると認識したらしい。ますます謎が深まる。だが、戦う他無いと悟った。このままだと俺の目的が果たされない。だから、恐怖を払拭して剣を構えた。

「対象、敵対行。ムラクモユニット展開」

そう言うなり、の後ろにあった巨大な剣が細かなパーツに分割した。それは次々とに裝著されていく。しして全てのパーツを裝著したの面影を殘していなかった。もはや、兵と言っても過言ではない。

完全に戦闘モードにったを見た俺も意識を戦闘モードに切り替える。の芯が冷えていく。右腕が呼応し、持っていた大剣と同化、右腕自が大剣と化した。髪のは金から白髪に変わる。コレで準備完了だ。

そうして、俺とは真っ向からぶつかった。

「……錬が終わっちまったか。急がねぇと」

重癥を負わせたジンをその場に殘し、奧へ向かう。何か、嫌な予が過ぎったからだ。俺と似た力をじたから、と言えばいいだろう。向かう最中、式を起するコードを力しておく。奴との戦いでは間違いなく必要になる。奧に辿り著いたや否や、目を疑った。俺と同じ髪をした青年が目的のと戦っていたからだ。戦っている青年の右腕はどういうわけか大剣と化している。おそらく青年の力によるものだろう。だが、その力に俺は既視を覚えた。

「アレは……間違いねぇ。蒼の魔道書ブレイブルーだ。俺と同じ力を、桐生悠人、てめぇもだと…?」

奴の謎は深まるばかりだが、悩んでても仕方ねぇ。俺も蒼の魔道書ブレイブルーを起させ、戦いにした。

突然の者に驚いた俺だったが、その者を確認した後に更に驚かされた。

「ら、ラグナ=ザ=ブラッドエッジ…?!」

俺の言葉を聞いたのか、自分で確認したのかは分からないが、目の前のが今迄と違う反応を示した。

「あ〜っ、ラグナぁ…來てくれたんだねぇ…?」

先程迄の機械的な言葉とは全く違う臺詞を吐く。まるでする人を待ち続けたのように。その聲を聞いた俺は戸いを隠せず、ラグナは心底うんざりした表を見せつつ、そのに毒を吐く。

「…嗚呼。てめぇを"壊し"にだ。會いに來た訳じゃねぇ。勘違いすんな」

「つれないなぁ。"又"一緒になれると思って楽しみにしてたんだよ?」

「馬鹿か。んなの死んでもお斷りだっつーの」

そう言いつつラグナは大剣を構えた。真っ白い大剣。俺の大剣とは真逆だ。

「おいそこの…えーと、ハルト。力貸してやる。奴…νニューはてめぇだけじゃ倒せねぇ。協力して倒す。いいな」

「なんで俺の名前知ってんのかはさておき、その提案乗った。いっちょやるか!」

「なんで分かってくれないの…?いいよ、二人まとめて殺してあげる」

殺気が倍近くに膨れ上がる。俺とラグナは大剣を構え、迎え撃つ。この時から、俺とラグナの運命が変わってしまった事に気づかなった。気づいたのはこの歪んだ世界を傍観している"傍観者"だけだろう。

方や死神と云われ、最強と謳われる魔道書を所有する青年。

方や元第七機関の天才研究員にして咎追いとして生きる事を決めた青年。

何の因果なのか、これも神の悪戯がし得る事なのか。全く同じ力を所有する二人が相見えた時、この世界に何の異変をもたらすのか。この時はまだ誰も知らない。

初めまして、Knightと申します。

小説を書くのは今回が初、という訳でして。拙い文章ですが、読んでいただけたら嬉しいかなと思っております。

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